頭の中は大混乱祭
「ふぅ…」
フェシリアは足の痛みと喉のかわきを感じて眠れなかった。
昼間にドクターピートが言ったとおり、ノーフォーク公に掴まれた足は熱く痛みを帯びていた。寝る前にライラが用意してくれた水差しも、飲みすぎてしまって喉がカラカラだ。
かといってこんな夜中にベルを鳴らして使用人を呼び出すのも申し訳ない。
(よりかかりながらなら、少しは歩けるんじゃないかしら。私、根性だけはあるほうだし!)
フェシリアは思いつくと上半身をベッドに起こし、右足をベッドから下ろした。
(少し痛い…でも思ったよりは行けそう。)
包帯でグルグル巻にされた左足をそっと下ろした瞬間激痛が走った。
「痛いっ…うっ」
フェシリアはベッドに倒れ込んだ。フェシリアが傷みに悶絶していると、いつの間にか開けられた扉にノーフォーク公の姿があった。
「また、逃げるおつもりで?」
逆光で顔は見えないが、とても冷たい声だった。
「違います!決して逃げようなどとしていません…私はただ、ひどく喉が乾いてしまって水を貰おうと、本当です。」
「ならば、ベルを鳴らして使用人を呼べは良い。」
(…今、何時だと思っているのよ。こんな時間に迄迷惑かけられないわ。)
フェシリアは心の声を飲み込んだ。
「ですが、使用人は皆良く働いてくれて疲れています。こんな夜中に呼び出して、やっと疲れた体を休ませている邪魔は出来ませんわ。…あの、大丈夫です。後5時間もすれば朝が来ますもの。どのみち眠れそうにありませんし、本でも読んで朝を待ちます。申し訳ありませんでした。」
フェシリアの話を聞き終わるとノーフォーク公は無言で扉を締めた。
(また、怒らせてしまったのね。にしても、何故ノーフォーク公は気づいたのかしら?部屋近いのかな?)
フェシリアがベッドサイドにある読みかけの本を開き小さな読書用ランプをつけると、再び扉が開いた。
不遠慮にノーフォーク公がグングン部屋に入ってくる。
「えっ」
(何何何…?どうしたの…?えっ勝手に入っちゃうの…?)
フェシリアの頭は大混乱だった。
「本を片付けなさい。」
言われるままに本を片付けると、ノーフォーク公が水差しからグラスに水を注いで渡してきた。
(これを取りに?)
「有難うございます。」
フェシリアは乾ききった喉に水を流し混んだ。生き返るようだった。優しいところもあるのかもしれない。フェシリアはそもそもこんなに足が腫れたのもノーフォーク公のせいだという事も忘れ感謝した。
「もう、横になりなさい」
言われるままにフェシリアは横になった。
「ノーフォーク公、有難うございます。もう一人で大丈夫です。」
というと、ノーフォーク公は突然フェシリアの上掛けをもぎ取った。
(どういう事…?どういう事…?私、襲われるの?わかんない、この人本当にわかんない!)
フェシリアの頭が2度めの大混乱に巻き込まれていると、左足首がヒンヤリした。見ると、ノーフォーク公が冷やしたタオルをフェシリアの足にあてていた。
「ノーフォーク公、私、大丈夫です!」
「グレアムだ。」
「えっ?」
「だから、グレアム・ノーフォーク。グレアムでいい。」
(いや、お名前は知ってますけど)
「グレアム様」
「それでいい」
(???)
フェシリアの頭は3回目の大混乱に巻き込まれたが、足首を冷やされたのが気持ちよくてそのまま寝てしまった。




