友人との和解
ゼノーの宿屋のドアを開けるとワッと一気に人々の熱気が伝わってきた。
今日は泊り客で賑わっているようで、入口に置いてある4人がけの5つあるテーブルも全て埋まっている。
男達は大きな木のジョッキで酒を飲みかわし、カップルはお互いを熱い視線で見つめあい、子供達は宿屋内を縦横無尽に走り回っている。
皆一様に楽しそうで各々祭を楽しんでいるようだ。
カウンターを見るとルドルフが次々とくる客の受け付けをこなしてアタフタしていた。
このゼノーの街で3代に渡って宿屋を営んでいるルドルフでも勇者ヴィンセント祭の日は特別忙しいようだ。
「ルドルフ、とっても忙しそう。アリーの姿も見当たらないし」
「そうだね。もう少ししたら落ち着くかな?後で出直そうか?」
二人が様子を伺っていると、受付の客が一旦ひいたルドルフが宿泊簿から顔を上げてこちらを見た。
「おい!フェシリアじゃないか!?どうした?」
ルドルフは片手を挙げてフェシリアを呼んだ。フェシリア達はテーブルの間をくぐり抜けて、客達の合間をぬい、ルドルフのいるカウンターへ向かった。
二人が近づくに連れ、ルドルフがフェシリアだけじゃなくグレアムもいる事に気付き、顔がどんどん強張っていくのが見て取れた。
「ルドルフ!久しぶり。」
「おぉ、元気だったか?ノーフォーク公爵様もご一緒とは気付かんで…」
「やぁ、忙しい時にすまない。この前は君の大切な店で恥ずかしい振る舞いをしてしまい申し訳無かった。ご迷惑をお掛けした」
グレアムは頭を下げた。ルドルフは貴族に頭を下げられた事なんて始めてだったので大層慌てた。
「やっ…いや、旦那何をおっしゃる。頭を上げて下さい。本当に。でも…そうか、仲直りされたんで。そうかそうか、良かった。」
ルドルフはフェシリアを見て微笑んだ。何年も前から知っている武骨だけど優しい笑顔だった。
「アリーなら、裏にいますよ。まだ昼前だからちょっと抜けるのは構わねぇ。フェシリア、あれからアリーも心配してたんだ。安心させてやってくれ」
ルドルフに導かれてカウンターの中に入り、裏口に向かうと後ろ姿のアリーがいた。
「夕飯はこのじゃがいもと干し肉を炒めるか……ブツブツ……後、何出そうかな?スープは…」
宿泊客に出す夕飯に悩むアリーにそっと後ろから近づいて、声をかけた。
「アリー!」
アリーはゆっくり振り返ると、そのまま飛びついてきた。フェシリアはアリーを抱きとめ二人で久しぶりにあった喜びを感じた。
「フェシリア!久しぶり!元気だった?」
「うん!アリーは?」
「私はいつだって元気!この前はごめん。後でライラに聞いて、何て事しちまっちゃったんだって…えっ!?……えっ!?」
フェシリアに会えた喜びで周りが見えていなかったアリーは今、グレアムの存在に気付いて2度見した。熱い抱擁をとき、アリーはグレアムの方に向き直した。
「ノーフォーク公爵様、この前は申し訳無かったです。私、先走ってしまって。フェシリアは悪くなかったんです。ライラに後で聞いてビックリして…」
グレアムは少し驚いたように目を開き、すぐいつもの微笑を浮かべた。
「いや、あれは私も悪かった。非常に良く無い態度だったと思う。許して欲しい。もし、良ければ私も君の友人の1人に加えてくれないだろうか」
「もちろん!有難うございます!ノーフォーク公爵様」
「アリー、友達だからグレアムで構わないよ。フフッ フェシリアと積もる話もあるだろうから、私は少し祭を見てくるよ。また、後で向かえにくるから」
(はぁー!これが薔薇の貴公子の実力ね!モテるはずだわ!)
アリーは一瞬ポーッとしてしまい頬を両手でバシバシたたいた。
「………?アリーほっぺ、どうしたの?」
「虫よ!虫が止まったから!」
「そうなの、あんまり強くたたくと痛くない?」
「痛かったけど、一挙に追い出す必要があったのよ!でも、何とか大丈夫だったわ、ふー」
「じゃあ、私は一旦これで。フェシリアまた後で迎えにくるよ」
グレアムはフェシリアの右手の甲に口づけをすると、裏口から出ていった。
(おーーーー!!)
アリーが感心してフェシリアを見ると、フェシリアは真っ赤になって立ちつくしていた。明らかにポーとしている。
「フェシリア大丈夫!?顔、叩いてあげようか!?」
「1回だけ、お願いします」
アリーはフェシリアの頬を軽くペチっと叩いた。




