朝焼けの中で
「あの、腕はもう大丈夫ですか?」
フェシリアはグレアムに尋ねた。
「あぁ、怪我は慣れているし何てことはない」
グレアムは包帯の巻かれた左腕をチラリと見て答えた。
ーーーいつものグレアムだ。
フェシリアは気持ちを打ち明けるなら今しか無いと思った。
「あの、この前の事、本当に申し訳ありませんでした。許してもらえなくても仕方がありません。」
「あ、あぁ…。いや、あれは私も悪かった。ちゃんと話も聞かなかったし。」
二人はティティスの上でお互いを見た。
「いえ、理由があったからといって婚約パーティーから逃げるなんて許される事ではありません……。大体、元々私がバカだったんです。」
「えっ?」
(何のことだ?)
グレアムは首を傾げた。
「婚約を申し込まれたからといって…ちょっとは気に入られてるのかもなんて舞い上がったりして」
(え……?舞い上がったのか?…嬉しかったと?)
「だから、本当は自分じゃない人を好きなんだって…ティアの事を勘違いした時苦しくなって…」
(まさか…。リックの言った通りなのか?)
(待て待て待て、待ってくれ、フェシリア。今、頭を整理しているから。言うなら俺から…)
「最後に伝えさせて下さい。私……グレアム様の」
フェシリアは最後まで話す事が出来なかった。
最後に思いだけでも伝えようとしたフェシリアの口はグレアムの口づけによって塞がれていた。
(………………………!!)
フェシリアは長いキスからやっと解放された。
真っ赤っ赤な顔のフェシリアに向かってグレアムが言った。
「フェシリア、好きだよ。最初からちゃんと伝えれば良かった。君だから、婚約を申し込んだんだ」
フェシリアの瞳には涙が溢れ始めた。
「本当に?」
グレアムがフェシリアに優しく言った。
「本当に。ヨークで見かけて一目惚れだったんだ」
フェシリアの瞳からは止めどなく涙がこぼれ落ちる。
「ホントの本当に……?」
「ホントの本当!大好きだよ!」
グレアムがフェシリアを抱き締めると、フェシリアは堰を切ったように泣き出した。そして、言った。
「私も…グレアム様が好きです…ヒック」
グレアムは自分の心が暖かいもので満たされていくのを感じた。そして前より一層フェシリアを愛おしいと思った。
ティティスが(やれやれ、やっとうまくいったか)と思いながら朝焼けを見ていた。




