公爵は突然部屋にやってくる
「本当に気持ち良かった、さっぱりしたわ。有難う」
フェシリアはライラに髪を洗ってもらい、とかしてもらっていた。春の暖かな日差しの中で髪を乾かしながらとかしてもらうと、とても気持ち良くてなんだかウトウト眠くなってきてしまう。
「お嬢様の髪は本当にお綺麗ですねぇ」
「ふふっ そんな事言うのライラだけよ」
フェシリアは自分でもわかっている。フェシリアの母と姉は金髪碧眼の美形である。16才のフェシリアより2つ年上の姉は社交界でも人気があり、婚約の申し込みが後をたたない。しかし、両親も姉ももっといい縁談があるのではないかと選び渋っている。
比べてフェシリアは父のブルネットを受け継いだ。目も黒に近い茶色。今年の春社交界デビューを果たし、1〜2度出てみたが、全く声はかからなかった。
(もっとも声をかけられてもノーフォーク公と婚約してしまっているからお受けする事は出来ないけれど。していなかったとしても関係ないわね。)
「なーにいってらっしゃいます!こんなに綺麗なブルネット!」
「ふふっ有難う。」
ライラはいつもフェシリアを前向きな気分にさせてくれる。
トリスタン男爵家で家族から虐げられた時もライラだけがフェシリアに寄り添ってくれた。
ノーフォーク公から婚約の申し込みが来た時はフェシリアはまだ15歳だった。家族一同それはそれは驚いた。エリザベスはヒステリーを起こしたし、両親は何度も姉のエリザベスの間違いではないかとノーフォーク公に使者を出した。
しかし、来た返事は間違いなくフェシリアだったのだ。フェシリアも何故美しい姉エリザベスではなく、まだ社交界にも出ていない自分なのだろう?と不思議だった。
エリザベスは激高して言った、
「私よりも醜いあなたを選ぶなんて!有り得ないわ。何か理由があるのよ、ノーフォーク公爵は女遊びが激しいとの噂だし。あんたみたいな地味代表みたいな女を妻にして、公爵家の仕事をさせ、自分は外で楽しみたいのよ!いい気にならない事ね!」
(あながち、エリザベスの言葉も間違いでは無かったのかもしれない。女遊びの件はまだ真実はわからないけれど、あの方には本当に愛している人がいる…決して表ざたには出来ない方。その方の為に私のような不器量と婚約して隠れ蓑としたのでしょう…)
フェシリアが悲しい気持ちでいっぱいになった時、
コンコン
と扉をノックする音が聞こえ、ライラが
「はーい」
とかけていった。
「ひっ えぇっ はいっ かしこまりました!」
と言う声がするとライラは扉から出ていってしまった。
(どうしたのかしら…?)
フェシリアがベッドの上で首をかしげると、扉が少しずつ開いた。そこに立っていたのは金髪碧眼の美しきノーフォーク公、その人だった。




