グレアムの帰宅
フェシリア達はお茶を飲みながら昔話に花を咲かせていた。
「ティアはね、小さい時泣き虫だったんだ」
「もう、やめてよ!ハワード」
「ふふふ。本当に仲良しだったのね」
ティアとハワードの思い出話を聞きながら、フェシリアは刺繍を楽しんでいた。
ルークは同じ部屋で本を読みながら何とか会話に入るチャンスを狙っていた……
その時だった
「グ……グレアム様!どうされました!?」
ヘンリーの叫んだような声が聞こえた。
フェシリア達は立ち上がり玄関ホールへと向かった。
ルークとハワードが一番に着き、次にティアが、まだ杖をついているフェシリアは最後に玄関ホールに到着した。
玄関ホールについたフェシリアが見たものは、左腕に血の滲んだ包帯を巻いたグレアムの姿だった。
いつもピシッときまっている軍服も所々血の跡が見てとられ、普段綺麗にたなびく髪も汚れ、血や土が付いているようだった。
普段のグレアムからは想像もつかない姿だ。
ルークが駆け寄ってグレアムに問いかけている。
「兄さん、どうしたんだ?戦いでもあったのか?」
その間にもグレアムの腕に巻かれた包帯からは血が滲み続けていた。
「止血もちゃんとしてないじゃないか!?ヘンリー、ドクターピートにすぐ連絡してくれ!」
ヘンリーは背すじを正し、
「はい!今すぐ迎えに行って、来てもらいます!」
というと館の外に駆けて行った。
グレアムがやっと口を開いた。
「傷はそんなに深くない。大丈夫だ。ルーク、ちょっと俺の部屋に来てくれ」
ルークは
「わかった。」
と答え、グレアムの後に付いていった。
「グレアム兄様…」
それまで両手で口を押さえていたティアがゆっくりと倒れた。
◆◆◆◆◆
フェシリアとライラは倒れたティアの世話をしていた。ひとまずハワードが近くの応接室に運んでくれので、水で絞ったタオルをおでこに載せた。
「フェシリア……グレアム兄様は?」
「今、ドクターピートが診ていらっしゃるわ。大丈夫よ、ティア。」
「うん…。」
ハワードも心配そうに覗き込んでいる。
先程、ヘンリーが迎えにいったドクターピートが舘に着き、グレアムの部屋に行った。
(あれから何分たったかしら…。あの傷といい、姿といい、グレアム様は大丈夫のかしら…)
「私、もう大丈夫よ」
ティアが起き上がると、ハワードが言った。
「ティア、大丈夫?無理しないで。考えたんだが、僕は一旦帰った方がいいと思うんだ。今は客人をむかえている場合じゃないだろう?」
真っ当な提案だった。
「そ、そうね…。ごめんなさい、ハワード。せっかく来てくれたのに」
ティアが申し訳なさそうに言うとハワードはにっこり笑って、
「いや、気にしないで。また誘ってよ。何か困った事があったらいつでも相談にのるしさ!フェシリアにも会えて楽しかったよ」
と言った。
その返事に答えたかの様に声がした。
「その必要は無いよ」
ドアの方を見るとルークとドクターピートが立っていた。
「兄さんもハワードが帰る必要は無いと言ってる。自分は相手が出来ないが、ゆっくりしていって欲しいとの伝言だ。」
「後、兄さんは1週間仕事は休みだから館にいる。けど、ほとんど自分の部屋で過ごすからその間は館の事は僕に任せるそうだ」
ルークは続けて、明るく言った。
「本当に気にしないでくれ、ハワード。気を使わせてすまないな。こんな変な感じで帰すのも嫌だし、ノーフォーク邸にはまだまだ楽しめる事があるんだ!一緒に馬に乗ったり…なっ?残ってくれないか?」
ハワードは頷いた。
「じゃあ、まだお邪魔していようかな。僕も中々図々しい方だしね!」
ルークはホッとして笑顔を見せた。
「じゃあ、せっかくだからフェシリアの足も診てもらおう?」
「よしよし、ワシの出番ですな」
ずっと黙って聞いていたドクターピートが腕まくりしてフェシリアの方に歩き出した。




