ひろがる碧
リックは王宮内の仕事を終え、下に降りてきていた。久しぶりにグレアムにでも会うか?と考えていると、城にある救護テントに人だかりが出来ている事に気づいた。
「いってぇ。」
「こっちも包帯くれ。アイタタタ」
大きな怪我をしている者はいないようだが、皆打ち身や擦り傷があったり、どこかを痛めているようで、救護班がせわしなく働いている。
(今日は特に争いもなく出動もしていないはずだが…?)
その時リックは気付いた。男達は皆、白地に青のラインの軍服を着ている。第一騎士団つまり、グレアムの部下達だ。グレアムは騎士団長になった今も第一騎士団の士長を兼任している。
リックは駆け寄り、一人の騎士に聞いた。
「何かあったのか?」
皇太子に突然話しかけられて、騎士はビックリした様子だったが話しだした。
「リック皇太子殿下!今日は士長が実践練習をするって言い出しまして、いや、それは珍しくは無いんですが…」
他の騎士も話し出す。
「ちょっといつもと違うんですよ」
「そうそう、自分は丸腰で俺らに剣で向かってこいって…」
「いや、無理ですって言ったんですよ!でも、早くやれって」
「まぁ、丸腰でもすげえ強くてやられちゃいましたけど」
「なんからしくないんだよなぁ…」
「わかった。有難う。」
リックは訓練場に急いだ。
(何が起きている?)
東側の階段を駆け上がり訓練場に辿り着くと、訓練場の真ん中にグレアムと少しの騎士の姿が見えた。
「グレアム!!」
リックが呼ぶとグレアムは振り向いた。
(どうなってる…?)
リックは困惑した。グレアムの瞳は碧く変わっていた。しかし、あるはずの赤の色味は見えない。只々深い碧が広がっているだけだ。こんな瞳は見た事が無い。
(落ち着け、落ち着け…俺)
ふと少人数残っている騎士達を見るとみな怯えた顔をしている。リックは息を吸うと
「お前達、今日は終わりでいいぞ!お疲れ!」
と大きな声で言った。
騎士達は一様にホッとした顔をして
「有難うございました!お疲れ様でした!」
といい、走って階段を降りて行った。
リックはグレアムを改めて見た。
「お前、怪我してるじゃないか!!」
グレアムの左腕は刀で切られた跡があり血が滴り落ちていた。
「怪我……あぁ。何てことは無い」
グレアムは自分の怪我に興味が無いようだった。
リックは言った。
「グレアム、お前は明日から一週間自宅謹慎だ。いいな?理由は自分で分かるだろう?これは、皇太子としての命令だ!いいな。」
「………わかった」
グレアムが静かに答えた。
「後、その謹慎中に何とか時間を作ってお前に会いにいく。だから、それまでは…何があってもこらえてくれ。これは、お前の親友としての頼みだ」
「……………………わかった。約束だぞ。」
グレアムは今度ははっきりと答えた。




