炎の消えた碧い瞳
フェシリアとティアは、ティアの部屋から見える景色を2人で並んでボーッと見ていた。
ただ、見ていた。目的なんて何もない。
フェシリアはあの日グレアムに問われ、罪悪感もあり謝罪した。最近のグレアムの態度から、許してくれるだろうという甘えもあったと思う。
しかし、グレアムはフェシリアを椅子から下ろし「それは許せない」とはっきり言った。
その後に、「部屋から出ていって欲しい」とも。
ティアはあの日からずっと部屋に籠もっていた。
シイラはルークの恋人なのだろうか?そんな事ばかり考えていた。一度、ヘンリーが贈り物が届いたと言って花束を持ってきた。見た事もないかわいい花だった。嬉しかったが付いていたカードに【早く体調がよくなりますように ルーク・シイラ】と書いてあった。花はヘンリーにあげた。カードは破って捨てた。
最近の2人は朝になるとティアの部屋に集まり、ご飯は全てティアの部屋で済ませ、2人で1日ボーッと過ごし、夜は別々の部屋で眠り、各々の部屋で泣いた。
生産性は無いけれど、お互い一人で日中を過ごすのは耐えられなかった。
「空が綺麗ねぇ、ティア」
「本当に。鳥が3羽飛んでるわ、フェシリア」
現実逃避しているようだった。
二人共お互いの様子には薄々気づいていた。しかし、相談にのってあげる程の余裕は今は無かった。
ーーヴィンセント勇者祭まで残り15日となったーー
あくる日いつも通りフェシリアとティアがボーッとしていると、ヘンリーとライラが来た。
「お嬢様、フェシリア様。今日は天気もいいですし、湖でも見にいかれてはどうでしょう?」
「わぁ!いいですね!私も行ってみたいです。3人で行きましょうよ!お弁当でも持って!」
全くの棒読みで【打ち合わせしたんだな】と丸わかりだった。けれど、2人に心配をかけているんだなと思った。フェシリアとティアは顔を見合わせた。
「行きましょうか。たまには」
「そうね。そうしましょう」
ヘンリーとライラは大喜びだった。
「特別にいい弁当を用意しますから!」
「お嬢様、ティア様、早く用意しましょう!」
2人は踊るように部屋から出ていった。
◆◆◆◆◆
湖に行くために階下に降りた時、フェシリアはグレアムとすれ違った。フェシリアは体が固まったようになり、息も上手く出来なかった。だが、グレアムはフェシリアに一瞥くれると声もかけず通り過ぎた。その瞳は深い碧のままだった、だがもう炎の赤は見えなかった。
(もう、終わったのね。何もかも。)
フェシリアは馬車に乗ってティアを待った。
自然と一筋の涙が頬を伝たっていた。




