主人公は疑いを抱く
トボトボと歩くティアを見守りながらフェシリアは何とか馬車に辿り着いた。
「早かったですね!お嬢様、ティア様!」
と明るく向かえたライラも、帰ってきた2人の様子を見て何かを察したようで、
「さぁさぁ、乗ってください。もう疲れたし、帰りましょう。」
とルークの事は聞かなかった。
ティアは馬車の中でも元気がなく、
「フェリシア、ごめんね」
と何度も言っていた。
色々と慰めたけれど、その声もあまりティアの耳には届いていないように思えた。
ただ一度、馬車の中に買ったドレスや靴が山積みになっていて、ライラが
「座るとこ狭くなっちゃってすみません。1人いなくて丁度良かったですぅ」
と言った時だけ小さく笑った。
◆◆◆◆◆
ノーフォーク公邸に着くと、笑顔でヘンリーが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。お嬢様、フェリシア様」
「ごめんね、ヘンリー。私、部屋でしばらく休むわ」
ティアはそのまま2階の部屋へいってしまった。ヘンリーは心配そうに、
「ティア様に何かありましたか?ドクターでも呼びましょうか?」
とフェシリアに聞いてきた。
フェシリアは今はドクターは必要ない事、少しそっとしておいてあげよう。とヘンリーに伝えた。
「かしこまりました。」
ヘンリーはやはり心配そうだった。
じきにグレアムが城より戻りディナーの時間となったが、ティアは部屋から降りてこなかった為、2人でのディナーとなった。
「今日はどうだった?いい買い物が出来たかな?」
「はい。あっ!でも、あんなに沢山買ってもらう訳にはいきませんわ。」
グレアムはフッと笑った。
「色々必要だろう。女性は特に」
「ですが……あんなに……どうしたらいいか、わかりません」
「グレアム、有難うと言えばいいんじゃない?」
グレアムは今度は意地悪そうに笑った。
「なっ……!?そ、そんな。まぁ、そうですわね。お礼は言わなくてはいけません。有難うございます、グレアム様」
「ふーん。中々手強いな。」
「な、何の事です?」
フェシリアははぐらかした。
すると突然、空気が変わった。グレアムを包む空気が冷たくなった気がする。
「ところで、今日ティアに何かあったかな?」
「それは……」
心配したヘンリーからも聞いているのだろう、だが、あまり使用人や他の人には聞かれたく無い。
「個人的な事なので、後でお話しても宜しいでしょうか?」
「では、後で書斎で聞こう」
2人はディナーの続きを始めた。
ルークはまだ帰って来なかった。
◆◆◆◆◆
フェシリアはグレアムの書斎にいた。
今日クルルの街で起きた事をかいつまんでグレアムに説明した。
グレアムは
「あぁ、なるほど。」
と言った。
それだけだった。
自分の部屋に帰ってフェシリアの怒りは頂点に達していた。
なんなの?あの兄弟は?弟は妹をほったらかして早く帰ると言ってまだ帰ってこないし!
いや、それよりも兄のグレアムよ!ティアはあなたの愛する人でしょう!?あんなに傷ついているのに「あぁ、なるほど」って………そうよ、あんなに…ん?
フェシリアは今日一日の出来事と今迄の事を回想していた。
婚約パーティーでフェシリアはティアの心の叫びを確かに聞いた
「戸籍上では兄だけど、血はいとこより遠いわ。本当に愛しているの!」
あの時はグレアムに言っていたから、グレアムの事だと思った。
だが、思い返すとティアは始めからフェシリアにとても優しかった。まるで姉を慕うように。そして、今までの事。今日の事。
ティアには兄が2人いるということ
まさか……ね。
だってそれで私、婚約パーティーから逃げ出したのよ?もし、そうだったら…ね?
フェシリアは頭がパンクしそうになって考える事を止めた。




