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こちらとしては婚約破棄をご希望です!?  作者: 鈴本奈緒
第4章 動きだした人々
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 男  VS  女

 案の状、エリザベスを帰らせる作業は難航した。


 まず、トリスタン男爵は朝早めにノーフォーク公邸に来た。自分だけでは無理!と判断したのか屈強な男の使用人を2人携えてきた。 

 グレアムに

「大変ご迷惑をお掛けして申し訳無かった。今日連れて帰ります」

 と謝り

「帰るぞ!エリザベス!」

 と言った。

「お父様、私帰りませんわ!まだまだ、グレアム様とお話したい事がたくさんありますの!」

 エリザベスは返した。


 ここからは【絶対に連れて帰る】と決めた男と【絶対に帰らない】と決めた女の戦いだった。


「いいから、帰るぞ!」

「嫌です!」

「母さんだって、お前が帰るのを待ってるんだ!」

「知らないわよ!そんなの!」

「知らないってなんだ!お前が押したから腰を痛めてるんだぞ!」

「知らない!父様だけ帰ればいいじゃない!」

「何馬鹿な事言ってるんだ!早く帰るぞ!」


 戦いは永遠に続きそうだったが、この後のエリザベスの言葉にトリスタン男爵は真青になった。


「私は!フェシリアが家を出された後!グレアム様と結婚するの!未来のノーフォーク公爵夫人なのよ!だから、帰らない!!」


 玄関ホールには余りの騒ぎに家人も使用人も皆集まってきていた。一瞬で静寂が走った。


「お前は…!?何を馬鹿な事をいっとるか!帰るぞ!」


 トリスタン男爵の顔は怒りでみるみる赤くなり、エリザベスの片腕を掴んだ。玄関を出ながら

「ノーフォーク公爵、娘が失礼を。重ね重ね申し訳無い。今日はこれで」

と謝った。


 しかし、玄関からは出られなかった。

 エリザベスがもう片方の手で玄関ドアの扉に掴まっていたのだ。

「のぉーー!お前という娘は!」

 トリスタン男爵は、何とか扉からエリザベスを離そうと引っ張ったがそこは女も根性、全然離さない。

「お前達!エリザベスの手を何とかしろ!!」

 命じられた2人の屈強な使用人は走ってきて、1本、また1本、扉からエリザベスの指を離しにかかった。


「やめて!あんたたち!覚えてなさいよ!このっうすのろ馬鹿!やめろー!」


 エリザベスは悪態をついていたが、指を全て離され3人に担がれ、馬車に乗せられ帰って行った。馬車は大分揺れていたので中でも暴れているのだろう……


 玄関ホールに集まった人々は茫然として言葉も出ず、去りゆく馬車をただ見守る事しか出来なかった。


 その時、門からノーフォーク公邸の間に一輛の馬車が止まっている事に皆が気づいた。


「そうだ、今日はリックがくる日だった」

 グレアムが思い出したように言った。


 馬車から降りたリック皇太子殿下は玄関に入り

「すごいものを見させて貰ったよ。見ちゃ悪いと思ったんだけど……馬車から降りるタイミングが中々無くてさ」

と困ったように言った。



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