城下町を散策中
「フェシリア?」
グレアムは返事をしないフェシリアを怪訝な顔で見た。
「あっ申し訳ありません。ちょっと考え事をしてました。」
フェシリアはハッとして答えた。
今までフェシリアの後ろに隠れていたティアがやっと前に出てきた。
「皆でお兄様に会いにきたのですわ。ついでに城下町で食事でもと思って」
「そうですのよ!フェシリアとティアに誘われてきましたの!」
いつの間にかフェシリアとティアが誘った事になっていた。
「そうか、驚いたな。でも軍服だから、あまりちゃんとした店には入れないな…じゃあ、少し歩くが真っ直ぐ行った所に軽い軽食を出す店がある。そこにするかい。」
「まぁ!そうしましょう!」
「フェシリアとティアもそれでいいかな?」
グレアムが聞いてきた。二人は頷いた。
店までの道を歩き出すと、グレアムが
「今日はライラがいないんだな。城下町は人が多いし、危ないから私がフェシリアの左側を歩こう。まだ杖だしね」
と微笑みながら言った。
「まぁ…仕方がないですわね」
不満気なエリザベスが答えた。
4人で連れ立ってしばらく歩くと、道端に手作りアクセサリーを売っている露店が現れた。比較的大きな露店のようだ。なかなか人気のようで混み合っている。
「お兄様、見てきていいですか!?」
ティアが言った。
「いいよ。ここで待っているよ」
グレアムが言うと、エリザベスがそわそわして
「私もちょっと見てきますわ!」
と言って人混みの中に入って行った。
「フェシリアは?見に行かなくていいのか?」
と聞かれたが、杖ではあの人混みに入っていける勇気も無く
「私は大丈夫です」
と答えた。ティアとエリザベスがグングン人混みの中に入って行って姿が見えなくなった…と思った瞬間、グレアムが後ろからフェシリアを抱きしめた。
抱きしめながらフェシリアの方に頭をかがめて
「城下町には今度行こうって言ってたのに、突然来るなんて悪い子だね。フェシリア」
と甘く囁やいた。
「なっ……なっ……あなたは一体…こ、こんなとこで何…してるんですか!?」
フェシリアが真っ赤な顔で怒ると、グレアムは「フッ」と笑ってフェシリアを離した。
「ちょっとだけ、待っていて。あの2人の分払ってくるから」
「それと、もう遠慮するのはやめたんだ」
グレアムはにっこり笑うと露店の人混みの中に向かって歩いて行った。
◆◆◆◆◆
「グレアム様、私、城下町なんて始めて来ましたわ!」
エリザベスはグレアムに買って貰った光る石のブレスレットを腕に嵌めてご機嫌だった。露店で買ったのでそんなに高いものでは無いのだろうが、グレアムに買って貰ったという点が重要なのだろう。
店に着いたフェシリア達は丸テーブルの席に座り食事を終え、飲み物を飲んで談笑していた。
「お兄様、有難う!」
ティアは小鳥の着いた小さなブローチを買って貰ったようだ。ティアらしくて可愛らしいデザインだ。
「フェシリアにも何か選べばよかったわ…」
申し訳無さそうにティアが言った。
「ううん。いいのよ。私そんなにアクセサリーに興味がある訳では無いし」
(それにどうせエリザベスに盗られてしまうしね)
昔からエリザベスはフェシリアが可愛いものを持っていると目をつけて巻き上げた。小さな頃は泣いたりしたが、成長と共に段々諦めるという事を覚えて自分の周りにはなるべく置かないようにした。
「それより、私最後にライラにお土産を買いたくて、向かいにある飴屋で買って帰ってもいいかしら?」
「ええ、もちろん!私もヘンリーとか皆に買って行こうかしら」
ティアが言った。
「えー?今、勝手に買ってきなさいよ。向かいの店なら大丈夫でしょ。ここから見てるから、ね、グレアム様」
エリザベスが言った。グレアムと2人になりたいのだろう。
「私も行ってこようかな…いえ、明日友人が家に来るというので。まぁ、飴を食べるかどうかは分かりませんが。
すぐ戻りますのでエリザベス嬢はこちらでお待ち下さい。」
グレアムはエリザベスに微笑んだ。
夕方になり、フェシリア達は帰りの馬車に乗っていた。
「私は馬で帰るので、一旦ここで失礼します。気をつけて帰ってきてください」
グレアムが一礼すると、馬車の扉を閉めてくれた。
そのまま、ティティスに跨がり「ヤッ」と言ったかと思うとあっという間に走り去って行った。
夕日の中を走っていくその姿があまりに美しく、3人だけで無く、馬車の御者も見とれていた。




