3人娘は馬車に乗る
フェシリアとライラが2人で部屋でしんみりしていると、
コンコン
と、扉をノックする音が聞こえた。
「誰かしら…?」
フェシリアは首を傾げた。ライラが扉を開けに行くと、扉からちょこんと顔を出したのはティアだった。
「フェシリア、今、いいかしら…?」
ティアは不安そうに言った。
どうぞどうぞとティアを中に招きいれて、椅子に座らせた。ライラは紅茶の用意を始めた。
「どうしたの?」
フェシリアがティアに尋ねた。
「うーん。そのね、フェシリアのお姉様なんだけど、先程私の部屋にいらっしゃったの」
「えっ?」
フェシリアは驚いた。
(エリザベスは一体何をしにティアの部屋に行ったのだろう。何より、ティアは控えめで大人しい性格。お姉様の事、相当怖かっただろう…)
「ごめんなさい。怖かったのではなくて?姉がグレアム様ならともかく、まさかティアのところに行くなんて思わなくて」
フェシリアは謝罪した。ティアは大きく首を振って
「ううん、そんな事ないのよ。フェシリアのお姉様だもの!ただね、お兄様がお城にお仕事で行ったじゃない?だから、これから馬車で城下町にお兄様に会いに行こうっておっしゃるの。ほら、今日はお兄様午前でお仕事終わりだから…」
「えっ!これから城下町へ?」
(エリザベス、すごいパワーだわ)
「えぇ、それで仕事終わりのお兄様を捕まえてご飯でも食べようっておっしゃるの。それで…私、怖くてフェシリアも一緒なら…って言ってしまったの。ごめんなさい。」
(ティア……やっぱり、怖かったんだ)
その時フェシリアの部屋の扉がバーーン!!と開いた。
「フェシリア!城下町へ行くわよ!」
エリザベスが仁王立ちで立っていた。
◆◆◆◆◆
フェシリアは城下町へ向かう馬車の中にいた。
今日はライラがついて来れなかったが、杖もあるし大丈夫、お土産でも買ってあげようと考えていた。
エリザベスはフェシリアの姿なんて見えません!とばかりに、終始グレアムの話をティアに向かってしていた。
ティアは「まぁ」とか「本当に」とか「あらあら」などと相づちを打っていた。
フェシリアはぼんやりと考えていた。
ティアは辛くないのだろうか?と。婚約パーティーで2人の会話が聞こえた時、ティアはグレアムに哀願していた。
ティアは我儘な娘ではない。大人しくて控えめで純真な心の持ち主だ。
そのティアが婚約パーティーの当日にグレアムに哀願していたのだ。隠れ蓑の婚約者と理解していても、やはり愛する人の婚約パーティーを見るのは辛かったのだろう。
(私は逃げ出した後、ティアにどう接すればいいか正直分からなかった。だけど、ティアは優しく普通に接してくれた。演技ではなく心の底から。だから、私は利用されたと分かっていてもティアを嫌いになる事が出来なかった。
ティアとはもっと別の形で会いたかったわ……)
馬車の窓から流れる景色がどんどん城下町に近づいて行くのがわかった。
◆◆◆◆◆
城下町に降り立つと、丁度訓練を終えた軍人達が城から降り始めて来ていた。
黄色い軍服を着た軍人達が次々おりてくる。エリザベス達を見ると
「ヒュー!いい女」
「別嬪さん揃いだねぇ!一緒に遊びに行こうよ!」
などといい、絡んでくる。ティアは怯えてフェシリアの後ろに隠れた。
「あんた達うるさいわね!グレアム様はどこ!?」
エリザベスが一括すると
「こっえーっ!グレアム様!?騎士団長の事か?なんだ団長のファンかよぉ。ちぇっ、俺たちが第2騎士団だから黄色。その後、白地に青の第1騎士団が降りてきてから、最後が団長。まだまだ時間かかるぜ!」
「だから、俺達と茶飲んで待ってようぜ!」
「ハァ??」
エリザベスがそろそろ切れそうになった時、
「フェシリア!!」
と声が聞こえた。
見ると第一騎士団の人並みを押し避けてグレアムが降りてくる。
「やべぇ!団長だ!行くぞ!」
先程までまとわり付いていた軍人達があっという間に散っていった。
「急に来たりして、どうしたんだ?」
フェシリア達の前に降り立ったグレアムは少し額に汗をかいていて、でも奇麗な金髪とアイスブルーの瞳と軍服の蒼が映えていて、とても魅力的だった。
その姿を見て、フェシリアは気付いてしまった。
(私、この人が誰を愛してるとしても、悲しいけれど、やっぱりこの人の事を好きなんだわ。)




