瞬間移動はおてのもの
(あー!どうしよう!どうしたらいいの?)
ライラに髪をとかされながら、フェシリアは顔を真っ赤にして悶絶していた。
ーーー昨日、真夜中に7日ぶりにグレアムを見かけたフェシリアはもう一度だけグレアムを見たくて階下に降りて行った。食堂の灯りを見つけ、こっそり覗くつもりがグレアムに見つかってしまった。
絶望的な気持ちだったけど、グレアムに謝罪する事が出来たし、グレアムも優しく許してくれた。
本当に良かった…ここまでは。
(ふぁー!!どうゆうことー??)
フェシリアの顔は更に赤くなった。
謝りながらも泣いていると、グレアムが優しく抱きしめてくれた。暖かい…と思った次の瞬間キスされていた。
しかも2回!2回目は何かものすごくて、もう前も後ろも上も下もわからなくて、頭の中はぐるぐるしていた。
最後は酸欠状態になったフェシリアにグレアムが気付いて終わりになった。
その後、寝室までグレアムはフェシリアを送ってくれたが、帰り際に少し照れたような赤みを帯びた顔で、
「ごめん。暴走した。」
と言って謝ってきた。
あんなグレアムは初めて見た。フェシリアは恥ずかしくて真っ赤な顔でうつむく事しか出来なかった。
「じゃあ、行くよ。何かあったら僕はとなりの客間で寝泊まりしてるからいつでも呼んでいいよ。お休み」
と言って出ていったーーー
ライラは次にフェシリアの顔に化粧水をはたき始めた
(と、隣で寝泊まりしてたなんて!知らなかった!いや、それよりも昨日の事よ。うーん。うーん。どういう事)
フェリシアは悩まし気な顔になった。
ライラは最近買ったパウダー式の粉をフェリシアの顔にたたき、うすいピンクベージュの色を唇にのせる。
(まさか…からかったのかしら。これが与えられる罰なのかもしれない。誘惑して、私をその気にさせた後ノーフォーク公邸を追い出す。それが、婚約パーティーから逃げ出した私への復讐とか…)
フェシリアは今度は真っ青になった。
ライラは慣れた手付きでフェシリアの髪を編み込んで、今日庭園に来ていく服を持ってきた。アイボリーに控えめな薄いラベンダー色の飾りがついた可愛らしいドレスだ
(でもそこまでするかしら…?そんなに悪い事を考えるような人にも思えないし。まさか私の事を好き…?)
フェリシアの顔はまた赤くなった。
(ないわ、ないわ。そんな事。第一ティアの事を好きなはずだし。でも…キス…する? 結構ラテンなタイプなのかしら。今までそんなとこ見た事ないけど…あー!わかんない。わかんないわー!!)
お嬢様の百面相見てるのも面白かったけど用意も終わったし……
「さぁ!着替えて庭園へ行きましょうか!お嬢様!」
ライラがにっこり笑った。
◆◆◆◆◆
よく晴れたノーフォーク公爵邸の庭園にある東屋には、グレアムとフェシリアの姿があった。フェシリアの少し後ろにはライラが控えていた。
ちなみに、館の1階にある1部屋にはうっすら開けたカーテンの隙間から、張り込みの刑事のように東屋を見つめるティアとヘンリーの姿があった…
「今日はいい天気だね」
「はい。本当に」
2人は紅茶を飲んで向きあって話をしていた。今のところは普通に話せている。
「フェシリアは甘いものは好きかな…?」
(甘いもの…?)
フェシリアは右斜め上にあるブナの木を見ながら考えた。
(そういえば、ヨークではアリツィア夫人によくお裾分けのお菓子大量に貰ったなぁ。あれ美味しかったなぁ。)
「はい、甘いものは好きです。」
フェシリアが前を向くとグレアムがいない。
「そうか。」
突然、フェシリアの左からグレアムの声がした。
フェシリアが見ると前に座っていたはずのグレアムがフェシリアの左の椅子に移動している。
「なっ、…? は、はい。甘いものは好きです。」
驚きながらも、何とか立て直してフェシリアは答えた。
その時、フェシリアは遠くで何か聞こえた気がした。周りを見回してみたが特に異変は見つからなかった。
「今度、一緒に城下町に馬車で行かないか?おいしいお菓子の店がたくさんあるんだ。特にクッキーとか。」
グレアムがフェシリアを誘った。
「グレアム様と…?」
フェシリアが言うと、グレアムは体を近づけてフェシリアの耳元で
「グレアム様じゃないよ。グ・レ・ア・ム」
と囁 いた。
(!?……!?……“♯✩…♪∀…?)
「ひょぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
フェシリアは自分の頭の混乱が声に出てしまったのかと思った。…だが叫んだのはライラだった。
ちなみに、ティアとヘンリーはグレアムが席を移動した辺りでもう叫んでいた。




