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こちらとしては婚約破棄をご希望です!?  作者: 鈴本奈緒
第3章 グレアム・ノーフォーク公爵の憂いとそれぞれの想い
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アリツィア夫人の頼み事

 グレアムが始めてフェシリアに会った時、グレアムは22歳、フェシリアは14歳だった。


 その時グレアムはまだ公爵家を継いでおらず、父親のウィリアム・ノーフォークが公爵だった。


「おはよう、みんな。今日はヨークにある別宅に行ってくるわね。」

 家族5人で朝食をとっていると、母のアリツィアが今日もヨークの別邸に行く話をしていた。

 ヨークはここから一番近いゼノーの街からもう少し進んだ先にある。背の高い街路樹が並び小さな小川が流れ、中々のどかで空気のおいしい町だ。

 いつか自分達が隠居した時の為に…と昨年両親が購入したのだが、グレアムはまだ22歳だし城の騎士団としての仕事もある。まだまだ公爵を引き継ぐつもりは無かった。


「母さんはヨークがお気に入りなんだよ」

 ウィリアム・ノーフォーク公が妻に向かって微笑みかけた。

「今日もお熱いことで」

 ルークが冷やかした。ノーフォーク公夫妻はとても仲がよく、3人の子ども達はいつも2人のイチャイチャを見せつけられている。

「ヨークの別宅ではね、あの辺りに住む娘さん達に刺繍を教えたり、お茶会をしているの。これが中々楽しくて」

 アリツィア夫人が続けた。優しく人のお世話が大好きなアリツィア夫人にはピッタリな趣味だ。


「あの辺というと、ウィルトン男爵家や、マルクス子爵家とかかな?」

 ルークが聞くと

「そうね、後トリスタン男爵家とか。」

 とアリツィア夫人が答えた。

「あー エリザベス・トリスタンかぁ」

 お兄様、知ってる方ですの?ティアが聞いた。

「社交界では噂のまとだよ!随分きれいな子らしい。まだ15歳だから来年社交界デビュー、狙ってる奴がたくさんいるよ 兄さんならいけるんじゃない?」

 急にグレアムに矛先が向いてきた。

「今はあんまり興味ないかな。仕事も忙しいし。」

 グレアムが答えると、ルークが

「はー もてる男の余裕の発言だなぁ!悔しい!」

 と言って家族皆で笑って食事は終わった。


 楽しかった食事も終わりグレアムが軍服を着て城に行く準備をしていると、


 コンコン


 と部屋をノックする音がした。

「グレアム、ちょっといい?」

 アリツィア夫人はたずねながらもう体半分部屋に入って来ていた。

「どうしたんです?」

 グレアムが聞くと

「あなた、今日はお仕事半日でしょう。仕事終わったら城下町で何枚か綺麗な布と糸を買ってヨークの別宅に持ってきてくれないかしら。」

(珍しい事を頼むな…)

 グレアムは思った。

「いいですよ。どんな布や糸がいいのかとか、紙に書いて僕にください」

「良かった!有難うグレアム!最高の息子よ!…あっ後ね、娘さん達がいるからちょっとあなたに群がるかも…」

「あぁ…わかりました。大丈夫ですよ。」

「有難う!」

 アリツィア夫人は喜んで出て行った。


 グレアムは幼少の時から自分が異性にとって魅力的な容姿をしている事に気づいていた。どこに行っても女性達はキャーキャーついてきたし、社交界で囲まれたり、未亡人が誘惑してくる事もよくあった。

 しかし、グレアムにとってそれは大した事では無かった。特に異性にそこまで興味も無かったし、何人か付きあってはみたが、みんな、見た目の事や、自分を好きか?とばかり聞いてきて全然楽しくなかった。騎士団で鍛錬をしていた方がよっぽと有意義だ。

 最近では笑顔で女性をかわす処世術を覚えて随分重宝している。

 着替えが終わり、グレアムは城へ向かった。


 ◆◆◆◆◆


 グレアムはエドニア大国の第一騎士団に所属している。

 エドニア大国には難しい案件を担当する国内外対策部隊の第一騎士団と国内の比較的簡単な案件を担当する第二騎士団がある。その2つを統括するのがマット騎士団長だ。


 グレアムが第一騎士団の色である、白色に青のラインの入った軍服で歩いていると蒼色の軍服をきたマット団長に声をかけられた。

「よう!色男の第一騎士団士長!」

 グレアムは振り返った。

「マット騎士団長!」

「今日は午前だけだろ。特訓は終わったか?」

「はい。無事終わりました。これから母に頼まれ事をされたので城下町によるつもりです。」

「そうかそうか、お袋さんに。城下町では女達に気をつけろよ色男!お疲れさん!」

 ガハハハと笑って去っていった。マット騎士団長はいわゆるたたき上げの人物だ。大柄で日に焼けて真っ黒、だが人によって態度を変える事もない親分肌で豪快な人だ。

(相変わらず元気だな。もう60歳近いとは思えない)

 グレアムは微笑を浮かべながら城下町へ下りていった。


 ◆◆◆◆◆


 グレアムはアリツィア婦人に言われ通りに城下町にある

 刺繍洋品店に来ていた。紙にかかれた通りに布や糸を

 選んでいく、店のあちこちから声が聞こえる

「あれ、グレアム様よ!公爵家のキャー」

「かっこいいっ」

「薔薇の貴公子様~!」

(………!?薔薇の貴公子ってなんだ?薔薇どっから出てきた?俺は薔薇なんて持った事もないぞ。)

 黄色い歓声には慣れっこのグレアムも薔薇の貴公子には

度肝を抜かれた。


 足早に買い物を済ませたが店を出たところで4〜5人の娘達に囲まれてしまった。

「薔薇の貴公子さま〜お話をしましょう」

「薔薇の貴公子さま〜好きです」

「薔薇の貴公子様〜」

 グレアムは身につけた最近覚えた女性をかわす処世術を駆使し、たった今手に入れた薔薇の貴公子の仮面をつけて馬にのり、ヨークの別宅へ向かった。


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