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こちらとしては婚約破棄をご希望です!?  作者: 鈴本奈緒
第3章 グレアム・ノーフォーク公爵の憂いとそれぞれの想い
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グレアムの想い

 ゼノーの街からノーフォーク公邸に帰る馬車の中でグレアムは目を閉じて考えていた。

(今日、もう少しでまた逃げられてしまうところだった)


 昨日仕事を終え城から帰ると妹のティアが駆け寄ってきた。

 庭園にある東屋を見ると車イスに乗ったフェシリアと付き添うライラが見える。

(お茶会か。今日は天気も良かったし、楽しめただろう)


 グレアムはフェシリアを館に監禁状態にした事を反省していた。婚約パーティーで逃げられた時、グレアムは本当にショックだった。何とか捕まえたものの、もう逃してたまるか!という思いがあった。

(婚約を急ぎ過ぎたのかもしれない。だが、フェシリアは怪我で二月(ふたつき)はノーフォーク公邸にいる。その間に距離を縮めよう)

 婚約を破棄しようなどという考えはグレアムには全く無かった。


 ヘンリーからフェシリアが具合が大分いいので、一月(ひとつき)もかからないと言っている。と聞いた時は

 動揺して自分で自分がおさえられなかった。フェシリアの部屋に押しかけ、痛む足を折れない程度に締め上げてしまった。

 おかげでフェシリアは二月(ふたつき)ノーフォーク公邸にいる事になったが、あの時のフェシリアの怯えた目と苦痛に歪む顔を思い出すと今でも胸が痛む。

(何であんなひどい事をしてしまったのだろう。フェシリア相手だと自分が止められない。)

 弟のルークと妹のティアがヴィンセント勇者祭の為にノーフォーク公邸に来ると、自然とフェシリアにも笑顔が増えた。ティアが敷地内なら出してあげても。というので許可した。庭園で楽しそうにしているフェシリアをグレアムは窓から見て安心していた。本当はグレアムもお茶会に参加したかったが、自分が近づくとフェシリアが体を強張らせているのがわかったし、とても気まずそうな顔をしている事にも気付いていた。

(もう少し時間をかけよう)

 そう思っていた。


 ティアはグレアムの元に着くと、

「フェシリアが泣いているの。」

 と言った。理由を聞くとゼノーの街にいるアリーに会いたいと泣いているという。ゼノーといえば婚約パーティーの時フェシリアが走って向かっていた街だ。

 あの日グレアムはフェシリアがいない事に気づくとすぐに馬で追いかけた。さらわれたのか?逃げたのか?どうしてかわからなかったが、心配で早く捕まえたかった。

 グレアムは小さな時から第6感のようなものが自分にあると気づいていた。集中してみると、ゼノーの街が頭に浮かび馬を走らせた。そしてはるか前を走るフェシリアの後ろ姿を見てとらえたのだ。

「ゼノーか…」

(正直あまり行かせたくは無い。だが、これ以上フェシリアに嫌われたくも無い。明日は非番だ。付いて行ける)

 そう考えたグレアムはティアに

「明日ならいいだろう」

 と告げた。


◆◆◆◆◆


 馬車がノーフォーク公爵邸に着いた時にはグレアムの頭の中は疲れきっていた。何をしてもうまくいかない。どんどんフェシリアに嫌われている気がする。

(疲れた…)

 グレアムはもう疲労困憊だった。馬車の扉を開けると、フェシリア達を置き去りにして館に入っていった。


「お帰りなさいませ」

 と向かえたヘンリーにフェシリアを車イスに乗せる事を頼んだ。ヘンリーは

「かしこまりました」

 と言ったが少し驚いた顔をしていた。

 そのまま、グレアムは部屋に行きベットに前から倒れ込んだ。

 今日は本当はフェシリアを楽しませるつもりだった。ゼノーの宿屋でフェシリアがアリーに会っている内に、最近若い娘に人気!というアクセサリー店でフェシリアにプレゼントを選ぶつもりだった。

 その後紅茶でも皆で飲み、甘いものでも食べようと計画していた。

(それがこんな事になってしまった。もう疲れた。)

 考える事が出来なくなったグレアムはそのまま眠ってしまった。


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