勇者ヴィンセント
ゼノーの街はビィンセント勇者祭に向けて活気に溢れていた。店店がオリジナルの飾りをつけ、噴水の真ん中に置かれた勇者ビィンセントの銅像を業者が磨いていた。
グレアムに抱きかかえられ、馬車から車イスにうつして貰ったフェシリアはもう何も余計な事は言わなかった。
「有難うございます。」
「どう致しまして…?」
乗せる時との態度の違いにグレアムは少し戸惑っている様だった。
「お嬢様、勇者ビィンセントってどんな人何ですか?私、実は良くわかってないんですよ」
ライラが言った。
「まぁ、勇者ビィンセントの話は有名で実話なのよ。
今から数百年前エドニア王国がまだ小さな集落の集りだった時の話なの。その時代にはまだ本物の魔物が出てね、人々は日々魔物と戦い、そして魔物を恐れて暮らしていたの。ある時期とても魔物が増えてしまってエドニアの人々はどうにもならなくなってしまった。そこに現れたのが勇者ビィンセントなのよ。勇者ビィンセントはとても強く、魔物を全滅させてしまったわ。」
「ええっ全滅?」
「ええ、武力が強い事もあるけれど、勇者ビィンセントは不思議な力を持っていたの。魔法の力とは違うけれど、人々はそれを意志の力と呼んでいたそうよ。勇者ビィンセントがそれを望むと髪の色が変わり、すさまじいパワーを発したそうよ。勇者ビィンセントが強く望んだ事は必ず叶えたそうだわ。」
「すごいっすね 勇者ヴィンセント!」
何だか磨かれている勇者ビィンセントの銅像も誇らしげにしているように見える。
「そうね、その末裔が今の王家なのよ」
「えっじゃあ、リック皇太子殿下とかも不思議な力持ってるんですか?」
「いいえ。勇者ビィンセントの子供、孫くらいまでは引き継いでいたらしいけど、段々血が薄くなってしまって今は力は引き継がれていないそうよ。面白い事に色の変わる部分は人によって違ったそうよ。髪だったり、爪だったり…」
「そうなんですかぁ グレアム様も王家と親戚ですよね?何か感じたりします?」
ライラが、突然グレアムに話しかけた。
「まさか、直系のリックでも引き継いでないのに、遠縁の私が引き継ぐ訳ないよ」
グレアムはライラに優しく語りかけた。
◆◆◆◆◆
一通り街を外から見てみた後、フェシリアはアリーに会いに行く事にした。グレアムとティアはお茶屋とアクセサリー店に行きたいらしい。ライラもフェシリアを送った後、二人に合流する事になった。
アリーの働く宿屋まで送り届けると、
「ではお嬢様、1時間後に向かえに来ますね。楽しいひと時を!」と言って、ライラは宿屋を出ていった。
フェシリアが待っていると、宿屋の従業員に呼ばれたアリーが奥から飛び出してきた。
「アリー!」
「フェシリア!」
久しぶりに会う二人は涙を流し、強く抱きあった。




