宿屋のアリー
「いい方達でしたねぇ」
ほぅっという顔でライラが言った。
「そうね。」
フェシリアは少し悲しげに答えた。
「そういえば、フェシリア様にお手紙が2通届いていますよ」
ライラは2通の手紙をフェシリアに手渡した。
目を通してみると、姉のエリザベスからと親友のアリーからだった。フェシリアは迷わずアリーの手紙を先に開けた。
【hai!フェシリア大丈夫?
フェシリアから婚約パーティーの後何も連絡が無くて、とても心配しているわ。街の噂でノーフォーク公爵邸にいると聞いて手紙を書いたの。何があったかも大体噂で聞いたわ。どこまで真実かわからないけれど。無事ならば手紙をちょうだい!私はまだゼノーの宿屋で働いてるわ!
待っているわよ フェシリア! アリー 】
涙が込み上げてきた。
(アリー会いたい、あなたにとても会いたいわ。私の話を聞いて欲しい)
アリーはゼノーの街にいるフェシリアの親友だ。
貧乏でも一応男爵家の娘のフェシリアと町娘のアリーだけれど、フェシリアが街でからまれた時、アリーが助けてくれてそれ以来の親友だ。すぐに意気投合し、どんな話でもアリーには話せた。
婚約パーティーを抜け出したあの日、フェシリアはアリーの元へと走っていた。アリーに会いたい。その思いだけを胸に。
「ライラ、手紙と書くものは用意出来るかしら?」
「大丈夫ですよ!ご用意出来ると思います。聞いてみますね」
ライラは任せてとばかりににっこり笑った。
次にエリザベスの手紙を開けた。
【フェシリア、今度お母様とそちらへ行くわ。
ノーフォーク公にもご挨拶しなくてはいけないし。
あなたはもう、まぁ、ノーフォーク公の妻にはなれないでしょうけれど、私がいるから。まぁ、大丈夫よ。じゃあね エリザベス】
体を気遣う言葉の一つもない手紙。
(お姉様、まだノーフォーク公の妻の座を狙っているのね…)
フェシリアは呆れかえってしまった。
◆◆◆◆◆
フェシリアはライラが用意してくれた手紙にアリーへの返事を書いた。
ノーフォーク公爵邸にお世話になっている事、左足以外は大分いいこと、アリーに話したい事がたくさんあること。一気に書き終えてライラに渡した。
「アリーさんにですね!かしこまりました!…あっ見てくださいよっお嬢様。あれ、皇太子殿下では?」
ライラにうながされて窓の外を見ると遠くに二人の男性が馬に乗る姿が見えた。
ひとりはグレアム、もう一人は婚約パーティーの時挨拶をしたリック皇太子殿下だ。二人で仲良く馬を走らせている。
「そうね、皇太子殿下だわ。遠縁だし、歳も近いし仲がいいのね」
「かぁーすごいですねぇ」
あの二人も私とアリーの様な関係なんだろうか、フェシリアはそんな事をぼんやり考えていた。




