ノーフォーク邸の兄妹
今、フェシリアは今までにないくらいギラッギラに飾り立てられて車椅子に乗せられ、応接室への道を向かっている。
「私なんかが顔を出していいのかしら…」
心臓がドキドキする。後ろを歩きながら案内するヘンリーが
「勿論でございます。お二人共是非フェシリア様にご挨拶したいとの事。ノーフォーク公…グレアム様もお望みですし。お気を楽にどうぞ。」
と答えた。
「そうですよぉ お嬢様、気楽に行きましょ!はぁ〜ドキドキするぅ」
(ライラは完全にルークの事で頭の中がいっぱいだ!)
「お嬢様リラックス!リラックス!あはははは」
「フェシリア様リラックス!リラックス!わはははは」
二人が声を合わせて大笑いしながら、車イスを押している
(何なの…この状況は)
フェシリアは若干顔を引きつらせていた。
◆◆◆◆◆
随分立派な扉の前に着くと、ヘンリーが前に出て
「フェシリア様、お着きになりました。失礼致します。」
と先程とはうってかわって執事らしくなり、扉を開いてくれた。ライラに車イスを押されて中に入った。
広い応接室にはフェシリアのいる客間とはまた違い重高感のある家具で揃えられていた。部屋の真ん中にある、大きなソファーにルークとティアが座っており、グレアムは窓際に立ってこちらを見ている。
「おひさしぶりだね!フェシリア、何やら楽しそうだったね、部屋の中まで笑い声が聞こえてきたよ」
ルークが屈託のない笑顔でフェシリアに話かけてきた。
「ルーク、おひさしぶりです。ちょっとライラとヘンリーと話をしてまして、うるさ過ぎましたね。ごめんなさい。」
「いやいや、いい事さ。こちらまで楽しくなったよ。たくさん笑えば怪我の治りも早くなるさ!」
ルークは4歳上だがとても話しやすい。こちらに気を使わせないし、決して相手を嫌なら気持ちにさせない。
「フェシリア、もうお怪我は大丈夫?」
横から何ともか弱いかわいらしい声が聞こえてきた。
ティアの方を向くと、ティアは心配そうに可愛らしい顔の眉間をよせていた。
「ティア、有難う。大丈夫よ!心配かけてごめんね、ちょっと大げさなだけなのよ」
「本当に?」
「ええ」
「良かった。私ね、ビィンセント勇者祭までこちらにいる予定なの。私、友達も少ないし、フェシリアが一緒にいてくれる?」
(私の事を見上げてこんなに不安そうに…)
「ええ、あなたさえ良ければ是非お願いしたいわ。」
フェシリアは少し戸惑ったがにっこり笑った。
「良かったぁ」
とティアは笑顔をほころばせた。
(本当に天使みたい。それに比べて、今日の私はゴテゴテして天使を食べる魔女みたいだわ。ライラ、ごめん。)
しばらく3人で談笑していた。その間グレアムは全く話さなかった。
(そうだ二人にも謝罪しなければ)
「ルーク、ティア、この度はノーフォーク家に恥をかかせてしまって本当にごめんなさい。」
すると、ルークは
「気にする事はないよ、人は何でもいうものさ。僕は人の言葉は気にしない。自分の信じること、それが全てさ。僕はフェシリアという人を信じてる。それが全てだよ。」
フェシリアは胸が熱くなった。
「フェシリア、あなたとは会ってまだ日が浅いけれど、友達になりたいと強く思っているの。だから、そんな悲しい謝罪はいらないわ。」
二人共何と人格者なのだろう。フェシリアは驚いた。
(前世でどれだけ得を積めばこんな完璧人間になれるのかしら…)
3人が見合って熱い思いを共有している時、突然それはうちやぶかれた。
「もう、いいか。随分長い事話しているけど。」
グレアムの冷めた声が、響いた。
「ルークはいつもの西側の客室でいいな。ティアは…」
「お兄様、私フェシリアの横の客室に…」
「……いや、あの部屋は今使っている。東奥の客室を使って欲しい。」
「お兄様の隣の部屋の?わかりましたわ。残念だけど部屋が埋まっているなら仕方ないですもの。」
そこで、ひとまず解散になった。
「じゃあ、フェシリアまた後で!」
ルークが笑顔で出ていった。
「行きますか、お嬢様!」
ライラが車イスを押して部屋を出る時、グレアムがティアを呼び寄せて何か話しているのをフェシリアは目の端で見ていた。




