第75話 クリスマスツリー×不吉な予感
クリスマスまで後数日と迫ったある日。
「もうすぐクリスマスだ!全国の非リアよ!爆弾か生卵は持ったかー!リア充がいたら容赦なく投げつけろ!そしてこの国からカップルを消滅させるのだー!」
「騒ぐな傷に響くぞ」
「リア充が別れるならこの身朽ちようとも構わん」
横でリア充粉砕を意気込む仁を無視し目の前にそびえる大木を視界に入れた。
多摩センターの十字路にあるクリスマスツリー…となる木。
今はなんの飾り付けもされないまま立っているだけである。
「これは生徒会の仕事じゃないだろ…」
「確かにそうだけれど自分達で飾り付けができると考えたらどう?」
「別にツリーを見るわけじゃないし興味ない」
「ま、受けてしまったのだから文句言わないことね。それとも装飾するものを買いに走り回る?」
雅人は走り回ってへばっている黒井兄妹を見た。
冬真っ盛りだというのに汗だくで超薄着になっている。
「いや、俺には力仕事が似合ってる。走り回りたくない」
「そ、じゃあハイこれ。早速作業開始よ」
雅人は立てかけられているハシゴに登ると渡される装飾品を飾った。
星だとかキラキラのボールだとか普通の飾り付け。少しずつだがオリジナルも混じってはいるがそれでも少量。
「こんなの飾ってなにが楽しいのか」
「それでもやるしかないだろ。業者が来ないっていうんだから」
「あ。ならいい方法がある」
雅人はハシゴの上から梓を見つけると呼んだ。
「なに?なにか問題でも?」
「飾り付けがショボい」
「悪かったわねショボい飾り付けしか用意出来なくて」
「そこで相談だ。園児達の絵を飾るのはどうだ」
「子供達の?」
「ああ、絵じゃなくても工作とか園児が作るものなら大抵は飾れるだろ」
「いい案ね」
「茜さんに電話で聞いてみるか」
『雅人かどうした』
「多摩センターの真ん中のクリスマスツリーに子供達の作品を飾りたいんですがいいですか?」
『おお!面白いこと考えるな!いいぞー!明日にでも作らせようか。いつまでに用意すればいい』
「そうですね…3日後までに出来上がっていればいいです」
『分かった。用意が出来たら連絡しよう』
「ありがとうございます」
雅人が電話を切ると梓と目があった。
「なんだよ」
「敬語が使えればカッコイイのにって思っただけよ」
「あ?なにがいいたい?」
「敬語を使って電話してる雅人は凄腕のビジネスマンみたいってこと」
「なんだそれ」
雅人が飾り付けを受け取ると再び作業に戻った。
その後ろを梓は微笑みながら見ていた。
3日後、雅人は生徒会室にダンボールでモノを運んできた。
「なにこれ」
「うわ、凄い絵。いや、絵なのか?現代アートみたいでなに描いてあるか全く分からん」
「近くの保育園の園児から送られてきた作品だ」
「あそこの先生元ヤンって噂だけど…よく頼めたね」
「俺の恩師だからな。しっかり頼めばやってくれる」
「さすが元不良少年。不良のコネなら持ってますね」
「褒めてもなにもでないぞ」
「今の完全に嫌味な気がするんだが」
「取り敢えず、これをツリーに飾る。手伝え、オワコン兄妹」
外に出ると仁率いる生徒達がなにか儀式をしていた。
「この世のリア充に裁きを与えたまえ〜!」
『与えたまえ〜!』
「リア充の前にお前に裁きが下るな」
仁の断末魔が響いた。
「せっかくくっついた骨がまたバイバイするところだった」
「次遊んだら首の骨がバイバイするからな」
「うっす!」
手分けして作業を進めていると葵が新しいダンボールを持って来た。
「赤嶺くん。これ、お姉ちゃんから追加の飾り付けだって」
「ああ、葵が担当してた組のか」
葵が持ってきたダンボールの中には雅人のやつよりさらに現代アートに近づいた作品があった。
「これただクレヨンで丸を何回も描いただけじゃん…」
「それが園児にとっては作品で楽しんでる証拠だ。今はそんなんでも高校に入る頃にはイラストレータになってるかもしれない」
「子供の可能性は誰にも計り知れませんから」
全員で飾り付けをしたが日暮れまでかかってしまった。
「電気はまだついてないけどついたら綺麗になるでしょうね」
「こんなことなら小学校からも貰ってくるんだったな」
「流石に小学校は無理じゃないか?コネもないし」
「茜さんから聞いたんだがうちの担任、元小学校教師らしいぞ」
「さすが不良。情報だけなら真央負けちゃう」
「ははは。負けるのは情報だけじゃないだろ。脳みそも俺未満だぞ」
「喧嘩はあと。雅人、あそこの飾り付けが弱いから補強を頼めるかしら?」
「分かったよ」
ツリーの準備に夢中になって雅人は気がつかなかった。
葵のそばに忍び寄る金髪ギャルの存在に。




