ひだまりの檻と永遠の誓い
あの恐ろしい毒の夜から、数か月が過ぎた。
事件の後、アレク様は駆けつけた騎士団によって捕らえられ、数々の罪状とともに追放処分となった。彼がフレスベルグ家やアゼル様に対して抱いていた執着も、虚しい陰謀の露と消えたのだった。
そして今――。
「アルテナ、何を考えているんだい?」
背後からそっと抱きすくめられ、耳元に温かい吐息が吹きかけられる。
振り返ると、そこにはかつての「冷酷なフレスベルグ家の神童」の面影を残しつつも、どこか深く、熱い執着を抱いたアゼル様が立っていた。
私が通っていた王立学園は、あの事件の直後に退学することになった。
『君が僕の目の届かない場所へ行くと思うだけで、狂いそうになるんだ』
そう言って、アゼル様は私を学園から引き取り、フレスベルグ家の広大な屋敷へと招き入れた。
はじめは、世間の噂や私の立場を気遣ってのことかと思っていた。けれど、そうではなかったのだ。
私には専用の美しい部屋が与えられ、何不自由ない生活が約束されていたが、屋敷の外へ出ることは固く禁じられている。私が歩けるのは、高い壁に囲まれたこの広大な庭園と、アゼル様の目の届く室内だけ。
それは、アゼル様が私を二度と失わないために作った、美しくも逃げ場のない「ひだまりの檻」だった。
「……学園の友人のことを、少し思い出しておりました」
私がそう呟いた、その瞬間――。
アゼル様の美しい琥珀色の瞳からすっと光が消え、まるで底なしの泥のように暗く、濁った影が差した。
「学園……? 僕以外の人間と過ごした時間のことかい?」
「あ……アゼル様……?」
私の腰を抱く手があからさまに強くなり、骨が軋むほどの力で引き寄せられる。
私以外の誰か、私のアゼル様以外の記憶――ほんの少しでも彼以外のものに意識を向けただけで、アゼル様の瞳は恐ろしいほど冷たく、濁った独占欲で満たされてしまうのだ。
「ダメだよ、アルテナ。君の目に映るのも、君の心を満たすのも、僕だけでいい。君を傷つける外の世界も、僕以外の人間も……二度と考える必要はないんだ」
濁った瞳のまま至近距離で見つめられ、息が止まる。
アゼル様は私の頬を傷跡の残る手で包み込むと、逃がさないようにじっくりと、まぶたや唇に愛おしむような重い口づけを落としていく。
あの夜、私を奪われかけたトラウマは、アゼル様の愛をどこか歪で重く、狂おしいものへと変えてしまった。けれど……私を失う恐怖に怯え、こうして瞳を濁らせてまで私を縛りつけるアゼル様の姿すら、私には愛おしくてたまらなかった。
「……ごめんなさい、アゼル様。私はもう、何も考えません。あなたのそばにしか……私の居場所はありませんから」
私が胸に寄り添い、彼だけを見つめ返すと、アゼル様の瞳にふっと光が戻り、いつもの澄んだ琥珀色へと変わっていく。安堵したように深く息を吐き、私の髪に顔をうずめた。
「ああ……そうだね、アルテナ。君は僕だけのものだ……」
庭園に咲き誇るリラの花束を私に手渡すと、アゼル様は私の前にひざまずき、傷の残る手で私の手を固く握り締めた。
「アルテナ。僕と……結婚してくれないか。この屋敷で、僕の腕の中で……生涯僕だけの愛しい妻として生きてほしい」
外面の配慮も、世間の目も、もうここにはない。
ただ私を愛し、私を閉じ込め、一生守り抜こうとする一人の男性の狂おしいまでの情愛。
私は微笑み、アゼル様の手を両手で包み込んだ。
「はい……! 喜んで、アゼル様の妻になります」
重ね合わされた手と手。
二度と解かれることのない絆と甘い鎖に守られながら、私たちはどこまでも深く、永遠の愛を誓い合った――。
(おわり)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
主要な登場人物が、全て『ア』から始まるという紛らわしいことをしてしまい、申し訳ありません。
気づいた時にはすでに遅く……直すこともできませんでした。
気持ち的に行き詰まったら、またAIで何か書いてみようと思います。
お読みくださった皆様、ありがとうございました!




