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『因果の臨界点と、恐怖の抜き打ちチェック』

【神界・第4観測ルーム(S-157組デスク)】

公的には「優秀な精鋭を集めたチーム」としているS班の中の157組。しかしその空気は、今日も今日とていつも通りゆるかった。

組織のシンプルな制服調の服を着たレイとセツが、ミルルに手紙を回してくる。

『今日の夜、神界カフェ行かない?』

支給された制服に黒レースやフリルを盛り、頑張って作った縦ロールの髪を揺らしながら、ミルルは口元を扇子で隠した。

「ふん、手渡しなさいな。この私に無駄な連鎖(紙の回し読み)を強いるなど、身の程を知りなさい」

(心の声:行く行く! チョコパフェ食べたい!)

ミルルはツンとそっけない態度で、回ってきた手紙を含めた書類の束を、机の上でトントンと雑に叩いて揃えた。

その時、ルームの自動ドアがガラッと開く。

「はーい、みんな。ちゃんと観測してるー?」

入ってきたのは、S-157組の教育係であり上司でもある、担当神のミッシだった。出番こそ極力少ないものの、その目は「先生」のように鋭く、厳しい。ミッシが抜き打ちで生存確認チェックにやってきたのだ。

【画面の裏側(覗き込んだら引くレベルの地獄絵図)】

その瞬間、ミルルの画面の裏側では、バグによって『巨大な大陸が凄まじい地鳴りと共に引き裂かれ、世界の終焉が始まる一歩手前』という、ミッシに見つかれば一発で「改良グループ」に世界を没収される大ピンチを迎えていた。

【日常の行動 ⇄ 世界の終焉(平然とした対処)】

しかし、ミルルが書類を机に「トントン」と叩きつけたその瞬間──。

兄譲りの超優秀な頭脳が瞬時に走らせた偽装術式と、彼女の「強運」がシンクロする。

担当世界では『大激震と共にプレートが超高速で強制移動し、離れかけた大陸がガチャンと物理的に綺麗に連結・修復される』という、神がかり的な超常現象が平然と起きていた。大惨事になるはずだった大陸の裂け目は、まるでパズルがハマるように元通りキープされる。

ミルルはすかさず中二病風に右目と画面を覆い隠すポーズを取り、ミッシの死角で完璧な偽装データを構築して言い放った。

「問題ありません、ミッシ担当神。我が領域の因果律は、完璧に調律されています」

(心の声:あー、心臓止まるかと思った。セーフセーフ、まじでセーフ!)

ミッシはミルルの手元を鋭く一瞥したが、完璧に偽装された「異常なし」のデータを見て、満足そうに頷いた。

「うん、さすがS-157組ね。ちゃんと平和に観測できてるみたい。じゃ、私は次の部屋に行くから、引き続きよろしくねー」

嵐のような隠蔽ワークをクリアし、ミッシはすぐに去っていった。

【一日の終わり】

冷や汗を扇子でこっそり拭いながら、定時の片付けをするミルル。

レイとセツが、何事もなかったかのようにデスクをトントンと叩く。

「じゃ、ミッシさんも行ったし、カフェ決定ね!」

「ミルルちゃん、書類トントンするのなんか格好よかったよー」

二人の呑気な言葉に、ミルルは夕焼けの窓の外を眺め、すっと素のトーンに戻ってぽつりと呟いた。

「……今日も観測しちゃったなぁ」

(心の声:本当、心底取り上げられなくてよかった……)

「ねー! じゃあ行こっか!」

左右からグイグイと腕を組まれ、「な、なな何を言っているの!?」と赤くなるミルル。

優秀なS-157組の、限界一歩手前のハラハラな1日は、こうしてまたゆるやかに幕を閉じるのだった。



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