74
「ほう……
詠唱かい?
それは僕を殺そうとする意志表示だと受け止めるが……
そういう事でいいのかな?」
リアは詠唱を止め、身体の動かない俺に近づくと正対し、色を無くした瞳で、固まる俺の傍にやって来ると、
「これは、命のやり取りだ、そこでは、一切の茶番は……
許さない……」
どれほどの実戦を潜り抜けてきたのか俺には伺う術が無いが、そう言い放ったリアの瞳は……明らかに……伝説の大魔法使いというそれが嘘では無いと思えるほどに、殺気を孕んで……そして、どこか、とても……絶望……とでも良いのか……俺に対する絶望の表情を浮かべて、そこに立っている。
そうだろうな……
800年待って、再生した、遠い昔の想い人が……
意志に反して、自分に害を成そうとしているんだ。
それは……
それを絶望と言わなかったら……
嘘になるな……
目を瞑り、絶望の淵に立つリアの潤んだ綺麗な瞳を見ない様にして、俺は詠唱を続ける。彼女の顔をまともに見ていたら、決意が揺らぐから……
決意が削がれるから……
「………………灰燼に帰せ………………」
リアが……
あと一節、唱えるだけで、リアを昇華させることが……
出来たのに……
リアが……
俺に優しく口づけをし、
「詠唱は……
こうやって止めるんだ……
覚えておくがいいさ……
愛しの君……
それに………………
君は僕を君の旅の、人生という旅のパートナーにしてくれたんじゃなかったのかい?
そういうところだよ……
君は、もっと君に信頼を置く”友人”の善意に寄り添うべきだ。そうじゃ無いと、君は気付いたら一人になってしまうよ……
以前の僕の様に……」




