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シスコン弟の世界は姉だけを中心にまわる ー空間魔法をそえてー  作者: 鳥ねこ
第一章  去ることを人は旅のはじまりという

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7 いのししを売りに行く




ジャリジャリと荷台は進む。

まだうすい光につつまれた肌寒い朝ぼやけのなか、俺と姉ちゃんは市場にむかっている。

昨日、姉ちゃんがフライパンで焼いてくれた少し厚いパンをかじる。

姉ちゃんも、荷台に座る俺の隣にいる。


俺は、出かける前に、試したいことがあると言って、まず空の荷台を動かしてみた。

動いた。

姉ちゃんは、無人のものが動いているのを、気持ち悪そう見ていたけれど、座って出発すればそんなことはどうでもよくなっているみたい。


「人に見られたら、大変なことになるんじゃないの?」

心配そうに言う。

「大丈夫。間の景色を映さないで、背景の景色を映すようにこの周りの空間を囲っておいたから」

そこら辺はぬかりないのだ。

でも音は、まだどうイメージしたらいいかわからなくて、近くまでくればジャリジャリとした音が聞こえはするので、やっぱり、人に見られないのがいいレベルなのだけど。


しばらくしたら、人通りが多くなるので、二人降りて、姉ちゃんは荷車を引く。

荷車に、イノシシの皮と、イノシシ肉が入った甕をのせて、俺は隣を歩く。

「軽いわ」

姉ちゃんは、俺に問いかけるように言う。

「車輪を空間で包んで、車輪自体をうごかしてみた」

収納したままいけば楽なんだろうけれど、それはあまりにも目立つから姉ちゃんの負担を少なくする方法を考えた。


あ、そもそも浮かしながら進めたなら、車輪の音も出さなくて済むのか。

すぐに思いつかない自分に少し腹がたつ。

俺は、足の裏に空間をくっつけて、浮くように歩いている、と姉ちゃんに言うと、それは成長によくないからきちんと歩きなさいと注意され必死で歩いている。

もりもりと歩く姉ちゃんと自分を比べて、よたよたと歩いている俺は虚弱な方なんだろうと思う。

「私は、ギフトのおかげもあるから他の人よりも、そもそも力持ちなのよ」

と姉ちゃんが、なぐさめるように言った。

朝日は、ゆっくり登っていく。

街はもうすぐだ。



「まずは、ギルドへ行って皮を売りましょう。」

そう言って、姉ちゃんは、人が集まっている冒険者ギルドの出入り口を通り過ぎて裏手に回る。

毛皮などの買い取りは裏の倉庫でしてもらうのだ。

表の出入り口は、今から出発しようとしている冒険者でにぎわっているが、倉庫の方が混むのは、その人たちが帰ってくる時刻だから朝一の今は、従業員の人たちの働く気配だけが、ゆるくはじまっている。


「おはようございます」

姉ちゃんが、あいさつをしたカウンターには、この場所にはめずらしく、日に焼けていない白い肌の色をした細い男が1人、座っている。

周りは、筋肉ムキムキのおじさんたちばかりだというのに、ここだけは温度すら1、2度低いのではないかと思うくらいにひっそりとした感じがした。


その人は、おや、という顔を一瞬して、挨拶をかえした後、

「買い取りですね」

と言う。

「はい、イノシシなんですが。毛皮を売りにきました」

その人は、ちらりと、荷車につんでいる毛皮をみると、

「イノシシ、1頭?」

「はい」

慣れたように黒板に書きつけると、木札を2枚、姉ちゃんに渡した。

「持っていく場所は分かりますか?」

「ウサギと同じ場所でいいんでしょうか?」

「はい、そこであっています」

俺と姉ちゃんは、お礼を言うと、倉庫の先へ進む。


街へ入る前に全ての魔法はきっておいたから、不審なところはないはずだ。

姉ちゃんが言うには、鑑定という魔法を持っている奴や、魔道具があるらしいから注意しなければならない。

「おはようございます」

「おぉ、はやくから、えらいな」

そこにいた、筋肉ムキムキの親父にほめられて俺は、少しうれしいが、そんなことは顔には出さず、ぺこりと頭を下げておく。

姉ちゃんがイノシシの皮を荷車からおろす。

それを、親父は、広げながら、

「ずいぶんきれいにはがしてあるじゃないか、こっちでやることなんて、なんにもなさそうなぐらい状態がいいぞ」

関心したように言う。

また俺はうれしくなるが、にやにやしそうになる口に力を込めて、ぱたぱたとうごかされる毛皮をみるだけにしておく。

「状態もいいし、買い取りの方は、今の時間ひまだから、30分くらい待っててくれればすぐに金を渡せると思うぜ」

親父は毛皮から目をそらさないまま言う。

通常は、次の日になるか、半日後に会計されるのだ。

姉ちゃんは、ちょっと考えた後

「ギルドの掲示板をみようと思っていたので、ちょうどいいです。それでお願いします」

そう言うと、さっきもらった木札の片方を親父さんに渡す。

お金は、表の冒険者ギルドの受付でもらうので、そこの壁に貼られている仕事の募集を見ながら姉ちゃんは待つのだという。

「それまで荷車を隅に置かせていただいてもよろしいでしょうか?」

「まぁ、今の時間だったらいいかもな、うん、いいぞ」

親父はそう言ってくれて、俺と姉ちゃんは、お礼を言うと、

「姉弟で、そんな上品な話し方するなんて、ここらへんで珍しいぜ」

と、ガハハと笑った。



まだ少しざわめきが残るギルドの1階で、俺は姉ちゃんが掲示板を見るのに邪魔にならないように斜め後ろの位置にいる。


はじめてここへ入った俺は、あまりきょろきょろしているのがばれないようにしながら、2階までの吹き抜けになっている天井を見上げる。太い焦茶色の梁が安心感を与え、天窓からの光で明るく、屈強な男たちがうろうろとしているけれど意外と窮屈さをかんじない。

「もう少し、実入りのいい仕事をさがしてもいいかなと、思って」

姉ちゃんは、つぶやくように言う。

「なんだったら、ルートも一緒に働けるでしょ?」

そう言って姉ちゃんは俺に振り向く。

俺はまた、によによとしそうな唇をきつく結び、力強くうなずいた。

「私は、力もあるし荷運びとか…」

姉ちゃんは、いろいろな依頼書を読んでいく。


「町内の配達1件は1000ゼニーで、山の上の村までの配達は、5000ゼニー、山の上までは大変だし一日仕事だろうから、高めの給金をだしているのね。

王都までの馬車での移動、面接有、30ゼニー(馬車有ならプラス10マンゼニーー)…。でも王都までというと泊りで1週間は見ておいた方がいいし。家を空けるのも…まぁ、そもそも、受からないかもね」


30万ゼニーと言ったら大金だ。

普通の家庭でも2ケ月は余裕で暮らせるし、俺たちだったら半年はくらせるだろう。


確かに、荷運びだったら俺のギフトも役にたつし、なにより姉ちゃんと一緒に働けそうだ。そういうのは、いいなぁ。

心配なのは俺の体力だけだな…。


結局、それから直ぐに名前を呼ばれた姉ちゃんは、仕事をその場では決めず、イノシシの買取金額を受け取る。

なんと15000ゼニーをもらえた。

普通は10000ゼニー、もらえるかどうからしい。

俺たちのは、状態もよく、大きい雄のイノシシだったため(オスの毛皮の方が色のコントラストがはっきりしていて高いらしい)いい値段をつけてくれたそうだ。

その後、倉庫に預けていた荷車をとり、次は、肉を売りに行く。




「おぅ、おはよう」

俺達が、ヤーマンさんの宿屋の裏手へ行くと、ちょうど汚れ物が入った桶をもって建物から出てきたヤーマンさんにあう。

俺が一緒にいるだなんて、珍しいことだと思うのに、それにはふれずにいてくれるのが、ありがたい。

ちょうど朝食が終わって一息ついたところだったみたいだ。

挨拶をかえすと、姉ちゃんは手で、荷車の上にある甕を示して

「イノシシの肉が手に入りまして、ヤーマンさんのところで買い取っていただけたらと思って…」

柵の出入り口をあけてくれているヤーマンさんにお礼を言いながら荷車と一緒に裏庭にはいる。


ここは、馬も一緒にとまれる宿屋だから、厩舎もあり、井戸がある裏庭も荷車が5台程度はとめれるくらいは広い。

ヤーマンさんの宿屋は、ヤーマンさんのお父さんがはじめて、ヤーマンさん夫婦と、ヤーマンさんの親と、時々手伝いの人(それが昨日の姉ちゃんだったりするわけだけど)を頼んだりしながら営んでいる。

厩舎の掃除は、近所の子供たちに、1部屋掃除すると、300ゼニーをあげるらしく、小遣い稼ぎの仕事として人気だ。


俺たちは荷車をそっと止めると。

荷車の甕の蓋を開ける。

甕は全部で3つあって、肉はサーサという殺菌作用のある葉で包み、家にあった、ありったけの水ぶくろに井戸の水をつめ、甕に詰めた。

まぁ、これはそうやってもってきたんだと思わせるためで、本当はおれが甕そのものを水で包み痛まないようにもってきたのだが

「ずいぶん冷やしてこれたんじゃないか?」

甕に手をいれたヤーマンさんが感心したようにいうのに、しまったっとおもいながら、

「先に毛皮の買取所にいったんだけど、そこまでは、その毛皮に包んで日に当たらないようにしてきたし、今日の朝は少し冷えてたからかな?」

俺は、なんでもないことのように言う。

ヤーマンさんは、一つ取り出してサーサの葉をめくって肉の匂いをかぐと

「状態もいいなぁ」

あ、と思う。

ヤーマンさんが、全ての動きを止めて、甕の方へ眼をむけたまま全ての動きをとめたからだ。

そうだ、ヤーマンさんは鑑定のギフトをもっているんだ。

鑑定と言っても、レベルは下のほうで、食べ物の良しあしがわかるくらいだよとは言ってたけれど。

俺は、荷車にかけていた全ての魔法を切っていることをもう一度、頭の中で確認しながらも、どぎまぎする。

「うん、いいな。俺のところで買うよ」

「ありがとうございます」

ヤーマンさんは信頼できるし、仲介の手間賃もいらないから、ここで買ってもらうのが一番いいのだ。

俺は、ほっとし、甕をおろそうと、よいしょと一つ持とうとすると、ヤーマンさんは、ひょいっとそれを取り上げ、そして、二つの甕を一気に持ち上げる。

姉ちゃんも、軽々と1つ甕を持ち、慣れたように、建物のドアへ向かう。

俺は、なにも持っていないというのに、また、よたよたとしながらその後を追うのだった。















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