7 どこへ
ぽかりと空いた、道の真ん中に鳥は降り立った。
「くええ、くええ」とうるさく、思わず、
『静かにしろっ』
と思ったら、静かになった。
どう見ても、俺を見ている鳥。
ぱちぱちと、つぶらな黒目で俺に何かを訴えるようにしているが、それは、後にしてもらおう。
馬車よりも大きい鳥のまわりを、騎士たちが次々と現れ、取り囲む。
大人しくしている鳥に、攻撃はしていないが…。
俺は、試しに近づく。
近づいた俺に、嬉しそうに鳥は、首を動かし、それに気づいた騎士たちは、俺を横目で伺うのが分かった。
どうしたら、いいんだろう。
でも、俺、この鳥を飼っているっていうわけじゃないしなぁ。
「大きな鳥だなぁ」
俺は、空気がよめないまま、そう声にだすと、鳥は、俺の方へ足を一歩近づけた。
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「すいません。なんか…」
俺は、騎士に、おんぶされて運ばれていた。
「うむ」
騎士は、うやうやしく返事をしてくれるけれど、辱められてるのは俺の方かなとも思ったりもする。
鳥が俺になついているのは、明らかだった。
俺と、鳥の間に騎士が立つと不機嫌そうに鳴き、排除しようと動く。
俺が、近づけば喜んでいるように首を振る。
コイツがいれば、危険じゃないんじゃないか?と思われ、一緒にきてもらえないかと騎士に言われたのだ。
「どこへですか?」
鳥から目を離さないまま、俺は聞く。
「とりあえず、魔獣協会へ行こうと思う。そこだったら、広い敷地もあるし、とにかく、ここにいられるのは危険すぎる」
「魔獣協会?」
「うむ、討伐の命令はでていなかったから、そこで、この鳥をどうするかを決めると思う」
鳥は、騎士と話している俺をじっと見つめている。
こんなに、大きくなったのは、もしかして、俺のせいなのかなぁ。
「分かりました。ちょっと、話してきてもいいですか?どこに行くか報告しておかないと心配されちゃうんで」
「もちろんいいが、なるべく早くすましてくれると助かる」
俺は、トーマスの方へ振り向き後ろへ下がると、鳥は、地団駄踏むように足を鳴らした。
「トーマス、魔獣協会ってところに、行くみたいだ」
「大丈夫なの?」
心配そうに、言うトーマスに俺は、おおきくうなずく。
「大丈夫だよ、姉ちゃんにも心配しないでって言っておいて。トーマスも、ベリー届けるの忘れるなよっ」
俺は、早口でそう伝えると、すぐに、さっきの騎士の元へ行くと、また鳥は喜びを表すように体を揺らす。
「協力に感謝する」
鳥から目を、話さないまま騎士は言う。
こんな子どもにまで、きちんとお礼を言ってくれるなんて、いい人だなと思った。
そして、おんぶ…。
最初は、俺もきちんと、歩いていたんだ。鳥も、その後ろをぴょこんぴょこんと、はねるようについてきた。
まわりから見れば、どすん、どすんかもしれないが…。
堂々とギフトを使うと、どうばれるかも分からないから、地道に歩いていたんだけど、到底、騎士たちのペースにはついていけず…。
それじゃぁ、と馬に乗せたら、鳥は、置いていかれると思ったのか地面から離れ、大きな翼をバタバタと動かしついてくる。
城下町でそんな、巨大な鳥が翼を動かしたら危険である、となり、俺は、おんぶで移動することになった。
進むペースが遅いと、鳥も安心するようで、体は大きいがよちよちと歩く姿はかわいらしく思えた。
騎士たちは、ひきつったような顔をしていたが…。
俺を、おんぶしてくれたのは、騎士団の班長をしているというクロムさんという人だ。
「…私の10歳の娘より、軽い…気にするな」
どっちに対しての気にするな、なのか。
俺は協力しているはずなのに、やはり辱めをうけていると思う。
着いたのは、変わった建物だった。
五角形の敷地を囲むように、二階建ての建物が建てられていて、建物よりも、むしろ中庭にあたる広い敷地のほうがメインなんだろう、中庭は放牧地のように広大で、整えられた緑は広がり、真ん中には噴水があった。
そこに、クロムさんと、俺と鳥だけが入っていく。
「協会の関係者が待っていると言われていたんだが…、あれは、協会長のエルズ様だ。わざわざ協会長自ら待っていてくれるとは…」
肩越しに俺は見ると、先の方に三人、立っている人がいて、二人は騎士の制服、もう一人は、白いエプロンをつけた、ふくよかな、おばさんが待っていた。
クロムさんは、俺を、降ろし、そこへ向かっていく。
俺も、後に続くのだ。
そうすると、鳥は今まで大人しかったというのに、くえええーと鳴く。
俺は、振り向くと、疲れたのか足をたたんで座ったので、俺は鳥をそのままにしてクロムさんを追おうとするが、
「くええええー」
と鳴き、俺は振り向く。
「足でも痛めたのかな?」
「多分、あの鳥は、あなたを背に乗せたがっているわ」
横から、聞こえた声に見上げると、エプロンをつけた人が立っている。
わざわざこちらへきてくれたようだ。
俺が不思議そうな顔をすると、その人は小さく微笑み
「私は魔術教会の会長をしているエルズよ。まさか最近、王都を騒がしていたものが、こんなにかわいらしいとはね」
そう言って、握手を求めてきたので、
「ルートと言います」
そう名乗りながらその手を握り挨拶する。
いつの間にかエルズさんの隣には、白いふわふわとした毛並みの獣がいて、きちんと紹介してくれる。
「この子は、フェンリルのミルクよ。私の契約魔獣」
「契約魔獣?」
「そう、お互いに力を貸し合う関係よ。かん違いした物事の道理が分からない人は、魔獣だけが契約主に従うと思っているけれど、契約主だって魔獣の言うことを聞かなければ成り立たない関係よ」
ふぅん。
フェンリルのミルクは、俺をおだやかな目で見ている。
「この子が、こんなに大人しいってことは、この鳥は人に危害を与えることなんて考えていないようね」
そう言うと、エルズさんは、鳥に近づいていく。
警戒するように、鳥はたちあがり、足を踏む。
「…あなたは…この鳥を知っていたの?」
うーん、どう言ったらいいんだろう。
「王都に来る前に、見たことがあるような気が…俺、鳥の知り合いなんていないはずなんです」
「うふふ。そうよね、その時は気づかなかったのかもしれないわね。昔、鳥を助けたことが合ったりしないかしら?」
「助ける?」
「そう、例えば、うちのミルクは、私が遠征先の山の中で死にそうになっていた赤ん坊の時に見つけて助けたの。そうしたら、その後、私の子になってくれたんだけれど、あなた心当たりないかしら?」
助ける…食べようとしたのを辞めるということは勘定に入るだろうか。
「…はい、そんなことがあったような気がします」
俺は、無難に答えた。




