6 城下町
「ここだよ」
トーマスは、そう言って、馬を止めると、飛び降り、俺が降りるのを手伝おうと、手をのばした。
ベリー摘みの成果を、タバサさんに見せると、「こりゃ、多いね~」と喜んでくれたが、やはり、すぐ使う分以外は、売ろうと言う話になった。
俺とトーマスは、お昼を食べると、早速、馬に乗り、お店へ向かったのだ。
俺は、正直、自分の馬以外は、まだ怖いから、乗っていくのは、俺の馬にしてもらった。
トーマスは、俺の後ろにすわり、言う。
「ずいぶん、乗り心地のいい馬だね」
不思議そうに、言ったが、聞こえないふりをしておく。
道すがら、
「変な髪型の馬だ」
と子どもたちの声も聞こえたような気がするが、気のせいだろう。
城下町に入り、人通りは増える。
色々な人種が歩いていて、つい、じろじろ見てしまいな目を、意識して外すから、逆に言えば、きょろきょろした動作になり、よそ者丸出しだ。
ボーガンさんの店は、大通りの入り口に構えられていた。この先へ、進めばすすむほど、城に近くなっていくらしい。
俺は、どんどん大きく見えてくる城を目印のように見ていた。
着いたのは、三階建ての、茶色いレンガ造りの建物だった。
一階は、大きな出入り口があり、その他の壁は、木枠に入ったガラス窓が、等間隔に上下に並んでいる。ゆがみがあり古そうな窓だったが、きれいに拭かれていて、かえって重厚感を感じさせていた。
トーマスは、馬車一台がちょうど通れるくらいの、通路から建物の裏へ入り、慣れたように、馬用であろう、飼葉や桶が置いてある場所に止めると、勢いよく降りたのだ。
トーマスのように俺は、もちろん降りることはできず、素直に差し出され手をとり、降りる。
「おう、トーマス、女の子連れて、おつかいか?」
荷物を肩に担いだ、体格のいいおじさんが、声をかけてきた。
「女の子じゃないよっ」
トーマスは、焦ったように言う。
俺が、どんよりしたのに気づいたのか、おじさんは
「や、馬から手を借りておりるなんてよぅ、お嬢様みたいじゃないか」
女の子より、悪い表現になっている。
ますます、俯きの角度が深くなっている俺を、また気づかうように
「ガリガリな体だからよー、遠目でみたらそう思っちまったぜ」
全然、フォローになっていない、わざとかな?わざとなんだなっ。
「行こうっ」
トーマスは、早くこの場を去るのが一番いいと思ったようで、そう言うと、馬に乗せてあった、荷物をとると歩き出す。
俺も、その後ろをとぼとぼついていく。
「馬に、水やっておくからなー」
後ろから、のんびりした声で伝えてくれる、おじさんに、トーマスはお礼を言うと、俺に
「コバトさん、悪い人じゃないんだ…」
と、俺の空気を変えるように言った。
「うん…いいんだ、別に…」
別に、いいんだ、別に。成長途中なんだ、俺は。
俺は、唇を強く結んだ。
お店には、タバサさんの娘さんだという、サリナさんが働いていた。
食べ物の、おいしさが分かるギフトを持っているらしく、お店の商品は、まずはサリナさんが目を通すらしい。
「ギフトと言っても、母さんや、父さんの経験にはかなわないのよ。だって、甘くておいしのか、酸っぱくておいしいのか、それぞれあるでしょう?私のは、甘さが分かる程度で、他人の好みも分からないし、だいたいの目安ってだけ」
サマンサさんは、軽くそういうが、混ぜ物が入れられている時などは、すぐに分かるらしく、仕入れでは頼りにされているとトーマスに言われ、少し照れていた。
俺たちが持ってきたベリーは、ちょうど欲しいと言っていた店があるらしく、そちらへ持っていくように言われた。
「レストランなんだけど、ジュースにして使いたい果物を探していたの」
トーマスは、それだけで分かったらしく、
「シャワーズでしょ?そこなら、歩いて行けるから、このまま行こう」
と、俺を連れて、店の正面出入り口から出る。
「よく、俺たちのもの、仕入れてくれるんだ、毎日、ヤギのミルクも収めているよ」
そう言うと、歩き出す。
「あのヤギは、他とは違ってるみたいで、味を気に入ってくれているんだ」
たしかに、あのヤギは他とは違うと思う…。
「よく、あのヤギから乳しぼりが、できるね」
「まぁ、向こうも、乳しぼりしてもらった方が楽になるって分かっているし、ずっと世話してるからね。向こうも協力するかって思ってくれてるのかも」
俺たちは、おしゃべりをしながら、歩いていると、周りがだんだんざわざわしてくるのに気づいた。
俺も、トーマスも周りを見渡すが、なにも見えない。
トーマスは、素早く俺を、道の端に寄せると、俺の体を守るように、建物の影に立たせた。
一体、どうしたんだろう。
「きた!こっちに来ている!」
口々に、皆はそう言うと、近くの建物に避難したり、走り出し騒ぎはますます大きくなる。
俺は、皆が上を見ているのに気づき、つられて顔を上にあげる。
「くえぇぇー」
あ、あいつ。
「くええええー」
必死な形相で近づいてくる。
俺は、分かった。
魔力でつながっているということかもしれない。
なんだか、すごくでかくなっているけれど、間違いない。
あの時の、鳥だ。
屋根の上で捕まえた鳥。
よく、こんな遠くまできたなぁと、いやな予感から目を背けるように思うのだった。




