2 商会長は話を聞く
「何か、変わったことは、あったかな?」
そう、カインに聞くが、出発してから四日と経っていない、「何も」という言葉を予想していた。
「それが、少し、変わったことがありまして」
カインの、いつもの、よどみない話し方とは違って、口ごもる
ボーガンは、椅子に腰かけ、机の上に置いてある書類を見ていた目線を上げる。
段取りくらいは、夕食前に終わらせたいと思ったボーガンは、姉弟に案内の者を紹介すると、すぐに執務室にはいった。
先触れを出していたことだし、その時、報告書も持たせた。
先代から仕えてくれている、この頭のきれる男に、同じことを二度言う必要はないと思い、襲撃の件に触れることはなく、通常の話を進める。
どうせ、言ったとしても今回の事は、二人とも答えがでないだろう。
「まず、ターナン家が、急に王都に来たようです。しかも、領主、直々に。そしてラナン総帥に会わせろと、魔術学校に押しかけ、その後、王にも面会を求めたと」
約束の予定もなく王都に来ることは、貴族にとってめずらしい。ただ人と会うだけで勢力図が変わったと思われる事だってあるのだ。余計な詮索をされることを、領主みずから行うとは…。
「馬で来たのかな?」
「そうです、馬で来たので分かったのです」
あの領主は、転移魔法陣を使って王都へ来ることを、ステータスのようにして言いふらしていたというのに、馬で長旅をしてくるだなんて、何があったんだろう。
「領主は、まだ王都に?」
「はい、まだ、帰らずにいます」
ボーガンは、少し考え頭に入れておく。
どんな情報が後々大事になるのか分からないから。
「次に、恒例の、会議の為と思われる、エルフ族の使節団が、昨日、入国しました」
三年に一度に行われる、エルフ族と人間との親善を前提とした会議だ。
「もう、三年たつのかぁ、はやいな」
三年前は何をしていたかなと、ボーガンは考える。
まだ、学校に通っていた自分を思い出し、物思いにとらわれそうになるのを止める。
「それから、王都の近くに怪鳥が飛んでいると」
「怪鳥?ドラゴンじゃなくて?」
「はい、昨日から騒ぎになり、遠見のギフトを持っている者が、塔の上から確認したそうですが、ドラゴンの特徴である鱗ではなく羽毛だったそうで、しかし、とても巨大であると報告したそうです」
「巨大な鳥…」
「そして、色合いがパラメディンに、似ていると」
「パラメディン?」
「なので、国も攻撃できないまま、様子見でいます」
国鳥とも呼ばれている鳥に、似ているとは、これは吉なのか凶なのか。
ボーガンは、また考える。
それ以上は、なかったらしく、カインは口を閉じる。
「そうだ、フォーレース家について調べてくれないか、噂話でもなんでもいいから」
「フォーレース家ですか?」
「うん、一般的な情報でいいからさ」
ボーガンは軽く言う。
ふと、フォーレース家がある方向は、ターナン家と同じだなと頭にうかび、気になった。
それから、カインへのお願いを口にする。
「お客様と、夕食を食べる予定なんだけど、カインも一緒に席についてくれないか?」
「はい…それは、もちろんですが」
カインは自分が口うるさいのを自覚していた。
恐ろしい目にあったのだ、今日くらいは、余計なことを言わないでおくためにも、そっとしておこうと思っていたが
ボーガンは口ごもるように言う
「きっと、特別なお客様なんだ」
カインは、黙ってうなずいた。




