1 寮の三階
俺たちは、ボーガンさんのお店に着いた。
着いたときには、もう、倉庫がある敷地への門は開かれ、明かりがつき、待っていてくれていたのか、門のそばに、立っている人が数人いた。
ここは、商会の裏口だという。
馬車が10台は、余裕で止められそうな敷地で、誘導され止まる。
先に着いていた馬車から、倉庫へ荷物を運んでいるらしく、活気づいていた。
「さぁ、つきました」
護衛は、明るく言い、俺も荷車から、降りる。
姉ちゃんは、疲れも見せず、そのまま、荷下ろしを手伝っていて、俺は、馬の世話でもと、思ったら、こちらでしますので、と言われ、馬も連れていかれ手持ち無沙汰になる。
馬は、特に俺じゃなくてもいいようだなと、後ろ姿を見て思う。
あいつ、絶対おいしいものを、もらったんだろう。
「お待ちしてましたよ」
ボーガンさんが、そう言って、倉庫から出てきてくれた。
「さあさ、荷物は、うちに任せて、なんせ元々うちが、迷惑かけていたものですからね」
俺たちを、迎えながら、そう言う。
「疲れたましたね。お風呂も、食事も、私の優秀な従業員たちが、もう用意してくれているはずです。少しの時間も無駄にしてはいけない、これも商売人の掟です。少しの差で状況は変わってしまうものですから」
歩きながらも、手振りで指示をだしている。
「この子達が、案内いたしますので、身の回りのことや不自由な事など、なんでも申し付けてあげてくださいね。」
ボーガンさんは、立って待っていた、赤毛の短髪の少年と、お下げ髪をした少女に、俺たちを託す。
「お待ちしておりました」
「お待ちしておりました。まずは、お部屋へ案内いたします」
そう言って、二人は、同じ顔で、にっこりと笑った。
その二人は双子だと言う。
少女は、マリー、少年はトーマスと名乗った。
早速、従業員の寮だという部屋にマリーは、案内してくれる。トーマスは着いてこなかった。
階段を上る、マリーの後ろをついていく。
おれと同い年だという、その姿は、きびきびと動き、少し劣等感を感じる。
「空きがたくさんありますから、いつまででも気にせず、お泊り下さいと、会長が言っております。朝は、洗面の水と、飲み水を、日中や夕方も、飲み水を新鮮なものに入れ替えますが、他に不自由することがあったら、すぐにお申し付けください」
それを聞いた姉ちゃんは、困ったように言う。
「そんなところまで、気をつかわないでほしいわ。私、ギフトのおかげで力もちなんです。せっかく、さずけてもらったギフトを使わないなんて、神様に怒られちゃう。自分が飲む水くらい自分で用意するので大丈夫です」
マリーは、少し戸惑うけど、
「なんだったら、私、馬だってここまで運べるのよ」
と姉ちゃんが言い、少しの間があいた後、
「かしこまりました。けれど、何か、不自由な事がありましたら、すぐにお申し付けくださいまし」
困ったように、そう返事をした。
姉ちゃんと俺は、隣通しの部屋になっていた。
大人四人が横に寝そべれるくらいの広さの部屋には、ベッドと、机と椅子、タンスがあった。
ベッドの上には、寝間着が用意されている。
窓からは、さっき馬車で降りた敷地が見え、朝になったら、王都の街並みも見えそうだ。三階建ての最上階のこの階は俺たちしかいないらしい。
「景色がいいので、ついここに、住みたくなるんですが、階段の上り下りが、きつくなるので、しばらくしたら、みんな、下にいってしまうんですよね」
窓から、景色を見ている俺に、マリーと名のった少女は、開けたままのドアのむこうから言う。
その笑顔は、はつらつとしていて、まぶしい。
「荷物をおいたら、お風呂に案内します。」
ぼーとしていた俺は、反射的に聞く。
「お風呂って、男女別ですか?」
「えぇ、もちろんです」
別か、ならいいか。
「着替えも、よろしかったら、こちらで準備してありますから」
その言葉は、同じようにドアを開けてある姉ちゃんに言ったのだろう。
荷物を置いて、俺の部屋のドアの前にきた姉ちゃんは、部屋に入らないで俺を待っている。
俺は、大人しく、着いていくのだった。
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姉ちゃんは、女湯、俺は男湯に案内される。
入り口は、一緒で、入ってから別れている。
俺は、今までで一番、焦りながら動いていた。
なんせ、外にある井戸で、護衛達が、大騒ぎしているのを見てしまった。
井戸水を汲んでは、自らに掛け、悲鳴のような野太い声を上げているところを通り過ぎたのだ。
俺が、その姿を見て戸惑っているのに気づいたマリーは
「汚れを多少は落としてからじゃないと、お風呂には入らせないと決まりがあるんです。なので、自分たちの体を洗うついでに、服や、防具を下洗いしていて、今日は人数も多いのでうるさくて、すみません」
いや、音は気にならない。
とってつけたような塀が、一面にだけついているが、ちらちら見える護衛達の裸…。下ばきだけは履いているようだが…。
姉ちゃんは、そっちを向かないようにしているが、小さな明かり一つでも、もりあがるような筋肉が光るように反射している。
あんな人たちと一緒に風呂にはいったら、もみくちゃにされる。
俺は、筋肉団子に揉まれる自分の姿を、想像し震えたのだった。
はやく、はやく、あいつらが来る前に上がらなきゃ。
俺は恐怖をかんじていた。
無事に俺は、誰もいない風呂を上がるのに成功し、外にでると、見計らったように、護衛達が入っていく。
俺は、しばし、考えこむ。
姉ちゃんは、まだ、出てこないだろう。
俺は、そばにあったベンチに腰掛けて姉ちゃんをまっていることにした。
行水なみだったが、体はあったまったらしく、通る風が心地よい。
この商会は、ぐるりと塀にかこまれている敷地を、馬車止めのスペースを中心として塀に沿うように、いくつかの建物がたっている。
女子寮は、二階建ての商会とお風呂の間に建ち、男子寮は、馬車止めの敷地を挟んで向かいに建つ。離れたところに、畑や厩舎と放牧地があり、昼間はそこに馬を放しているという。
魔道灯が、ぽつりと灯っているのをぼんやりとながめる。
王都に、きたんだよなぁ。
あれ、そういえば、なんで王都にいくって、姉ちゃんは言ったんだっけ。




