12 王都
「うわぁー」
行き交う人が、馬車が、だんだん増えて、とうとう列のようになった時、今まで土の地面だったのが石に代わり、木に囲まれた両側だった景色は、レンガの建物が並んでいる。
まわりを見るのに忙しかった俺が、ふと、顔を上げると、ひと際、高い場所にある巨大な城が見えて、口をあんぐり開けるのだった。
ボーガンさんは、そんな俺を微笑ましくみると
「あれが、ガールディン城です。お城自体を山の上につくったので、王都に入ったらどこからでも見えるんですよ」
俺たちは、夜につくのも覚悟していたけれど、トラブルもなく進み、なんとか夕方には王都にはいれそうだ。
灰色の石を重ねた城は、夕日に照らされ、強いコントラストを持ちながら、浮かび上がるように存在していた。
「王都に入るには、、あそこの門から出入りするんです」
ボーガンさんは、馬車の列の先にある、門を指す。
「ここは、まだ王都じゃないんだねー」
「ええ、そうです。王都に入るより、ここは土地も安いので、最初は、お目こぼしされてて、ぽつぽつ建つだけだったんですが、しばらくたつうちに一つの町みたいになってしまいました。でも、盗みに入られたり、獣がでたとしても王都の騎士は助けにこないと、なっているんですがね」
俺は、どんどん近づく門を見上げながら、王都にはいろいろなルールがありそうだなと思う。
「さぁ、私たちは、こちらの列にいきますよ」
ボーガンさんは、そう言うと馬の進路を先に前をすすんでいた仲間の馬車たちと同じように変えた。
俺は人の多さに、圧倒されている。
あちこちから、怒声や罵声や、物売りの声が聞こえてくる。
この列は、それでもまだマシだった、あちら側は、土ぼこりをあげるほどの騒ぎが起こりはじめていた。
「ボーガンさんに案内してもらえて、ほんとに良かった。運が良かったなぁ」
俺は、独り言のように声を出した。
姉ちゃんは、大丈夫だろうかと、前を走っている馬車を見る。
今はもう、俺たちの馬車は、なんの変哲もない荷台に戻っている。
お客様仕様の分厚い絨毯や椅子は収納され、俺たちの荷物として乗っているのはシルヴァン様とドリスの物と木箱一つだけになっている。
不審に思われないよう為と、シルヴァン様から、そうするように言われたからだけれど、布張りのスツールがなくなっているのを見たら、少し背中が落ち込んでいるように見えたので、仕方なく、そう仕方なく小箱に、布張りのふわふわな座り心地を付けておいた。
それに、座った時のシルヴァン様の様子ったら!
こっそり見ていたけれど、驚いたように何度も座り直し、きょろきょろと俺の姿を探し、俺を見つけると、やれやれと言いたげに首をふったのだった。
俺たちは、スムーズに門に近づく、門の手前には日よけのタープをかけた、縦長のテーブルがいくつも並行に置いてあり、そこに制服を着た門番が、一人一人通行証を確認しているようだった。
「入る時は、全員あそこで申請するのです」
俺たちは、近づくと、順々に馬車を降り、俺が出しておいた荷物を持ちシルヴァン様と、ドリスは封書を、ボーガンさんたちは、木の札を出していた。
俺と、姉ちゃんはギルドで作ったタグでいいと言われていたので、俺は首からタグを外そうと、四苦八苦する。
「ここに手を入れて」
門番は、俺が慣れていないとすぐ気づいたようで、説明してくれる。がっしりとした体格で、30代くらいの男に見えた。周りの門番と比べると、気さくに感じられる。
「タグも、一緒に握って入れるんだ」
俺は、言われた通り、タグを握って手を入れる。
その箱は、俺の両手を広げたくらいの広さと高さがある黒塗りの箱だった。
自分の魔力で調べたい気がしたが、とりあえずやめておく。
手を入れると、ひんやりとした石板の感触があり、その上に手をを置いた。
そうすると、箱の上に、記号と文字が浮かび上がる。
俺が、興味深々に見ているからか
「この 〇 の記号が、タグと本人が一致しているかどうか、こっちの、文字が悪いことをして手配されていないかどうかを、表している。お前は、タグと一致しているし、可とでているから、問題ないってことだ。よし、手はもうだしていいぞ」
俺が、そっと手を箱から取り出すと。
「王都は広いからな、迷子になるんじゃないぞ」
俺は、大きな体格の門番を見上げながら、ゆっくり、うなずく。
「ほら、タグをつけてやろう」
そう言うと、俺が返事をするまもなく、その門番は俺の手からタグを取ると、すぐに首にかけてくれる。
「よし、気をつけろよ」
確認するかのように、俺の首元を見て言う。
「はい。ありがとうございます」
微笑んだ門番に、俺は、ぺこりと頭を下げ、人混みに揉まれながら、なんとか馬車に戻るのだった。




