3 俺だってできる
2話を少し書き直しました。
「これは、サワミキと言って、毒消しの効能があるんだ。きれいな水でしかそだたないと言われていて、めずらしいんだよ。こっちも、私は初めてみたんだけれど…」
俺は今、シルヴァン様から、なぜか、薬草の手ほどきを受けていた。
最初の声掛けがまずかったのかもしれない。
俺はうろうろと歩いたとて、見るところも特にないから、深い意味もなく、しゃがんで何かを見ているシルヴァン様に、なにかありましたか?と聞いた俺はわるくないとおもう…。
シルヴァン様が、川辺を歩いていたのは、体をほぐす為じゃなく、薬草がないか探していたからだった。
シルヴァン様は、根っこまで丁寧に採取した薬草を、石の上に並べ乾燥させている。
「ポーションは、薬草などの材料を魔力と混ぜて作るんだ。薬草だけでも効能はあるけれど、ポーションはそれとは比べられないほどの効果がある」
俺に、見せるように持っていた本のページをめくる。
「でも効果が高いほど必要な薬草も材料も貴重になっていて、これは、欠損を治したり、不治の病を治せたことがあるといわれている薬草。だけど、危険な雪山の、しかも吹雪の中でしか咲かないといわれている花だし、これは、砂漠にいる火の竜が卵を産んだ時に、芽をのばすという蔦、そして姿形が分からないんだけど、水の深くから浮かんでくるという薬草」
一つ一つ、絵を指さして教えてくれるけれど
「水の中の薬草って、形が分からないのに、なんで本に書くんだろう」
あるのかどうか、不確かすぎないだろうか。
いじわるにも覚える疑問に、シルヴァン様は、分かっていたかのように答える。
「そうだね。この本を書いた人は、自分が実際、使ったり、見たり、聞いたりしたものを、まとめる為に書いたんだ」
シルヴァン様は、最初のページを開く。
『私の学んできたことは、薬草の世界のひとかけらににすぎないが、次の世への踏み台となることを望み記した。恐怖をも感じる暗闇の中での明かりの一つになれればと思う。分からないことは分からないまま記す。私の一片と、貴殿の一片が重なった時を期待する』 ヴェルデ―ル・クワイア
シルヴァン様は、汚れたそのページを、優しそうになぞるのだった。
「何をしているの?」
気づけば姉ちゃんが、近くに来ていた。
ドリスは川で顔を洗っている。
稽古の休憩中だそうだ。
俺は、姉ちゃんが汗をかいているのを見て、ひらめいた。
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「かゆいところ、ないですかー」
俺は、姉ちゃんの髪を泡で洗いながら聞く。
「ないでーす」
姉ちゃんは、頭を湯舟の縁につけ、気持ちよさそうに答える。
風呂の水を柄杓ですくい髪に流しながら、湯の温度を確かめる。
気温はちょどよい高さなんだけれど、少し、日が落ちてしまっているので、姉ちゃんが寒くないか心配なのだ。
うん、まだ冷めてはいないようだ。
俺は、そのまま髪をすすぐ。
ーピッ、ピピ
耳に鳥の鳴き声が聞こえてくる。
風の通り道となった木々の葉は、一斉に音をたててゆき、隣を流れる川の水もリズムをとるようにながれていく音と、近くに作った焚火のはじけるような音も重なり、眠気を誘う。
俺は、お風呂をつくった。
川べりの、ごろごろとした石を動かし塞き止め、深めに人ひとりが寝転べる位の広さをつくり、そこに、焚火で温めた石をいれる。
俺は、姉ちゃんが汗をかいているのに気づき、思いついたのだ。
ぬれた布巾を渡すより、気持ちよさそうだ。俺だって姉ちゃんの役に立つことができるのだ。
俺は、こそこそと、作った。
力仕事なんて無理だから、もちろんギフトの力を借りた。
あっという間にできるから、カモフラージュのように動いている時間の方が苦痛だったけれど。
まずは、雇い主のシルヴァン様を先にいれ、その後、稽古が終わったドリス。
俺と姉ちゃんは、申し訳ないが先に、ご飯を食べ、俺たちが入っている間、シルヴァン様とドリスが、食べるということにした。
最初にシルヴァン様にお披露目した時、いつもの余裕をくずさない表情がくずれ、口をあんぐり開けていのを見て、この人も人間だったんだなぁと思った。
ドリスは、毛が抜けるからと、遠慮していたけれど、川で作った風呂にそんな気を使うことはないし、水だってすぐに入れかえられる。ドリスが先に入ってくれた方が、俺たちは先にご飯をすませることができて、時間を無駄にしないんだと説得しはいってもらう。
そもそも、ドリスは勘違いしている。
抜け毛とか関係ないのだ。
姉ちゃんの無防備な肌に触れる物は、何をもってしても許されないのだ。
そして、周りをけっして侵入させず、獣すら覗けない鉄壁のガードを展開し風呂に入った。
きっと姉ちゃんの今日の思い出は、ドリスとの稽古より、俺と一緒のお風呂が一番の思い出となるだろう。
俺は、満足だ。




