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トオる攻撃


 司は《呪術》怨花を発動、ツルを多数出現させ、絡めあって大きな縄のようなものを作り上げ、一気に草わらを刈り取るように薙ぎはらう。


「ずいぶん大雑把な攻撃方法ですね」


「大胆と言いなさい」



 その大胆で大雑把な攻撃が、50mほど草を刈り取ったところで、敵の姿が現れた。



「あ、釣れた。先に当たるね」


「ちょっ……」



 司は里絵の返事も待たずに空中に飛び出した。


 ツルを解き、その場にアンカーのように地面に固定し、自身を引っ張り上げる要領で

敵兵に接近する司。目標である敵兵に接近し、勢いを殺さず、たちあおいで切り掛かるが、相手はそれを受けず、攻撃をかわす。



「受けろよ!」



 敵兵はそのまま交戦しようとはせず、司に背を向け逃げようとする。



「ふさいで」



 司が里絵に指示を送る。


 敵兵の20mほど前にバイクに乗った里絵が停まる。そして里絵はバイクを下りながら容赦ない銃撃を繰り出す。


 敵兵は銃撃を《排他》で防ぎ、里絵に接近する。


 すかさず抜刀した里絵。2人のの刀が衝突する。


 イーティルの敵兵は見る限り、刀術士と判断できた。敵の刀は濃い黄色に染まっている。《加速》して逃げないのは、《加速》の能力の指輪を所持してないということだろうか。《排他》を使えるのは、《排他》の指輪は所有していると考えられた。


 敵兵はつばぜり合いを解き、素早い斬撃を里絵に食らわす。里絵は少しずつ後退しつつも、器用に斬撃を防ぐ。


 司は歩みながら2人に近づく。

 その瞬間、敵兵の斬撃が里絵の右太ももに届き、切り傷を与えた。



「!?」


「!?」



 司の目には里絵が敵兵の斬撃を刀で受け損なったとは映らなかった。《排他》を解いていたわけでもない。敵の刀が、里絵の刀と《排他》を通過したとしか解釈できなかった。


 里絵が苦い顔を作る。斬撃のダメージよりも、不可解な攻撃の二度目を警戒して積極的な立ち回りができなくなる。



「わけがわからん」



 司が言いながら、ツルを複数本出現させ伸ばす。そして、里絵と敵兵をそのツルで遮断するように絡ませ、敵兵の周りの空間を埋めていく。

しかし、敵兵はツルを切断し、拘束を簡単に抜け出し、司の方へ迫ってくる。



「ちっ」



 司は舌打ちをした。先の里絵への攻撃といい、こんなに簡単にツルの拘束を解くことといい、何か知らない力が作用していることを司は疑っていた。



「敵の刀術に注意、得体が知れない」


「了解」



 敵兵の攻撃が司にが迫る。

 敵兵の表情は鬼気迫るものがあり、汗も暗闇の中ではっきり見える。


 司は敵の斬撃をかわすと、ツルで刀を縛り上げる。



「余裕がないね。そんなことだから、排他領域から刀を出しちゃうんだよ」



 軽口を叩くが、油断はしない。またいつイレギュラーが起こるかわからない。



「く……」



 敵兵は司の軽口に乗ろうとはしない。

 そのまま、ツルで刀ごと敵兵を振り回そうと力を込める。しかし、またしてもすぐに敵の刀がツルの拘束から抜け出した。



「またか!」



 敵は間髪入れずに斬撃を打ち込む。

 司はたちあおいで斬撃を受けるが、ここはかわすのが正解だった。司の余裕のなさがこういう形で現れる。

 そのとき、里絵がこちらへ向けて銃撃してきた。弾丸は全て敵兵の排他領域にヒットし、敵兵は司とのつばぜり合いを解除し、横へ逃れた。


 三人が一辺約20mくらいの正三角形の配置になり、戦闘が硬直した。



「拘束がダメなら殴る、蹴る、斬るしかないね」



 司の容赦のない発言。もちろん里絵に向けたものだが、敵兵にも聞こえるように言っている。


 里絵の《加速》で戦闘は再開された。素早く敵兵の後方に回りこみ斬撃を一線。敵兵はとっさにかがみ、攻撃をかわす。敵はすぐに体を起こし反撃を繰り出すが、里絵は敵の刀を思い切り強く上方へ打ち込む。刀が折れんばかりの攻撃、耳をつんざく大きな金属音がこだまする。


 敵の刀は頭より高い位置まで上がり、体の重心も同様に上がりきっていた。



「よくやった」



 司が里絵に言うと、同時にツルで敵兵の刀を掴み、ひゅいっとそれを没収する。



「跳んで」



 司は間髪入れずに里絵へ指示を出す。そしてツルを4本出現させ、それぞれを絡ませ太いツルを作り上げる。その太いツルを地面すれすれに、先ほどと同様、草を刈り取るように薙ぎ払う。


 敵兵の不安定な姿勢は、この攻撃に対処できるはずもなく、綺麗に足をかけられ尻餅をつく。

 里絵はその攻撃を軽くジャンプすることで回避。



「とどめだ」



 ツルを多量に出現させ、司はそれを敵兵の上から雨のように降り注ぐ。



「うああああ」



 敵兵は悲鳴をあげながら、両手両足を使ってその場から逃れようとするが、進行方向の先に里絵がいた。


 里絵は無言で敵兵を蹴り込む。《排他》と両腕を使う防御で直撃はしなかったが、敵兵の体は後方へ吹き飛んだ。そしてそこにはツルが依然存在し、敵兵の背中を強く鞭打ちつける。

 敵兵はえび反りになって、再び里絵の方向へ流れた。



「峰打ちでいい」



 司はそう里絵に言う。


 そして里絵の刀は敵兵の腹へ重い一撃を食らわせた。


次回「短くて長い」

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