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無言のコンビネーション

22日1710時



 里絵はハッと意識が戻った。


 意識を失っていたことに気づき、焦りがつのる里絵。一体自分は何分、何秒意識を失っていたのだろうか……。里絵は一瞬だけそのような疑問が脳裏によぎったが、すぐに忘れ、体を起こし、刀を握り直す。


 青仮面は里絵の視界の中にはいなかったが、廊下の折れた先から戦闘音が聞こえてくる。

司と青仮面とが戦闘を継続している音だった。



 里絵はそっと、廊下の角に接近し、ちらっと戦闘が行われているだろう場所を一瞥する。里絵から見て手前に青仮面、向こう側に司がいることを確認した。



 その瞬間、里絵は一気に《加速》して、切っ先を青仮面に背へ向け、突き刺す。


 

 青仮面の排他領域は怨花のツルによって硬く拘束されていた。さらに、青仮面がその手に持つ刀も怨花のツルによって拘束されていて、司と青仮面で「綱引き」ならぬ「刀引き」をしてるように見えた。



「すぐに加勢しなさいよ」 



 司は軽口をたたく。状況はよくないが、里絵にとっては少しだけ安心する言葉だった。 



「申し訳ありません」



「許す」

 

 そう言った司の格好をみると、なんとバスタオル一枚だった。里絵は思わず二度見してしまった。だが、それについてそれ以上考えることはなかった。







 司はこの状況を打開する方法を必死に考えている様子だった。


 だが、その思考を邪魔するように青仮面が刀を引く力をさらに強くする。司も負けじと抵抗する。




 その瞬間、青は刀から手を放した。


 司は不意を突かれた。さらに青の刀が司に向かい飛んできた。


 軌道を逸らそうと司はたちあおいを振るが、青の刀の刃は司の右肩を傷つけ、後方へ飛んでいった。今の不意打ちで青を囲むツルが緩んだ。




 この隙を青は見逃さなかった。



 青は《排他》を瞬間的に解き里絵の不意を突く。


 力を与える相手がいなくなった里絵は隙だらけだった。



 青は体をずらし、里絵の突きをぎりぎりでかわす。


 さらに青は里絵の排他領域に上方から肘を打つ。里絵の体が下によろけた瞬間、青は《排他》を再び発動。排他領域を瞬間的に膨張させ、里絵やツル、周りの壁、床、天井を圧迫する範囲まで押し広げる。防御ではなく攻撃のための《排他》。もちろん能力が強くないとできない技であり、青が使うとさながら爆発のようだった。



 里絵はこの攻撃で床もろとも一階へ落ちていった。


 

 青がいた床が崩れる瞬間、青が司の方へ《加速》し、蹴りを入れる。とっさにツルと刀で身を守る司。直撃はしなかったが、体は後方へ飛ぶ。司はすぐに体勢を整えるが、きつい一撃には変わりなかった。



(強い……)



 司は心の中で弱音を吐く。


 肩からは血が出たらたらと二の腕を伝い、バスタオルを濡らしている。

 青が刀を放した瞬間、他加速を使って刀自体を弾丸として扱った。里絵の突きを誘い受けたときにも《侵食》も使っていた。司はそう直感した。


 

 そしていま青の右手には血の付いた刀が握られていた。



「いつの間に刀を戻しやがった……《来引》もできるのかよ……」



 戦えば戦うほど絶望感が増していく……。しかし、司は思考を止めなかった。考えるのを放棄した瞬間負けが確定することを知ってるからだ。



 そしてある考えを思いつく。



 左手で前髪を搔き上げる。いつもはそこにあるヘアピンがない分、司は気合が入らなかったが、良しとした。



「今はこの方法しか思いつかないが……」
























 一階へ落下した里絵は瓦礫の中から這い出した。



「はぁはぁ……」



 刀を握っていることを確認した里絵。《排他》のおかげで特に外傷もない。



 司と青仮面がいる二階を見上げる。だが、二人の姿は里絵の場所からは視認できなかった。

 だが、視界に入るものがあった。


 それは怨花のツルだった。まるで里絵を囲んでるように存在していた。



 疑問に思う里絵。が、すぐに司の意図することがわかった。


 ツルはある一点を指差している。それは一階の天井部分、つまり二階の床部分だ。


 先ほどの青の《排他》による爆発によって、本来なら1m弱ある厚い床は、えぐられ、下から刀をさして、刀身が飛び出るほどだった。



「了解です」



 里絵がぼそりとつぶやいた。



 そしてその瞬間、《加速》《侵食》《排他》を最大火力で発動し、思い切りツルがさす部分に刀を突き刺す。



 里絵が思った通り、刀はすぐに硬いものに当たった。そしてその感触は紛れもなく青仮面の強力な《排他》のそれだった。











 青の隙をついた攻撃、さらに里絵の全力の攻撃は青仮面の排他領域をついに突破した。


 里絵が突破した青仮面の排他の穴に怨花のツルが一気になだれ込む。そして里絵は刀を抜きおろす。

 ツルは青の左足に数本巻きつく。



「きたたああ!」



 司の叫び声だった。

 

 司はツルでとらえた瞬間、青の足を握りつぶした。つぶれたリンゴのように青の足が変形。



「まじで化け物だな」



 青が痛がる様子はないことに司からそんな言葉が出た。しかし、この状況が悪いと判断したためか、青は刀でツルの切断を試みる。


 里絵は準備をしていた。青仮面が拘束を解くためにツルを攻撃する瞬間を。


 里絵は《排他》と《加速》で思い切り一階の天井下から青仮面へ突進した。里絵から見た天井、司から見た床が崩壊し、瓦礫が中に浮く。それら瓦礫をかき分け、里絵が姿を見せる。



 里絵の刀と青の刀の二本が衝突する。青は自身の足を拘束するツルの切断を失敗した。



 里絵が青の刀からツルを守ったこの一瞬で、司は青の刀をツルで拘束した。



 重力に引かれ落ちていく里絵と青。



「遠慮なしで行かせてもらう」



 司がそう言い、反撃が始まった。


司のえげつない反撃が始まる……。


次回 「人の運び方」

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