第2話:神様承認済み図書カード
「では、赤石ハルミ様、なんなりとお申し付けください」
ハルミの足元に魔法陣が現れる。
「えー……何か欲しいものか……」
「あっ!」
「タバコちょうだい」
「はい、タバコですね」
シュン! とまばゆい光がハルミを包んだかと思うと、一瞬で姿が消えた。
「おー!」
ジュリアとオレは目を丸くする。
「では、黒崎ジュリア様……なんなりと」
何ということもないような顔で、少女はジュリアに視線を送った。
「うーん……じゃぁさ、別の世界より元の世界に戻してくんない? ジュリア、英語とかしゃべれんし」
そういうと、少女は少し間を置いてから言った。
「できないことは無いのですが……」
「うん、いいじゃん」
「できないことは無いのですが……皆さんの体がグチャグチャなので、とても痛いと思います」
少女は想像するだに恐ろしいことを言う。
「じゃぁヤメで」
ジュリアが顔の前で手を振った。
「その代わりということで、私たちが管轄する別の世界なら、今のままのお姿でお送りできます。その際、皆様がお亡くなりになったのは、こちらの不手際であったことから、お詫びということで、なんでもお好きなものを差し上げております」
なるほど。
これ、アニメで見たことあるやつだ。
異世界転生ってやつじゃないか。
てっきりファンタジー世界の話だとばかり思っていたが、実際オレにまでその余波が来るとは、神様というのは案外うっかり者なのかもしれない。
「あらためまして、黒崎ジュリア様……なんなりと」
ジュリアの足元にも魔法陣が輝く。
「んじゃ、スマホ割れちゃったから、新しいスマホがいいかな……」
「はい……スマホですね」
「あ、ちょっと待った。同じやつじゃなくて、最新のPROのやつでも良い?」
「良いですよ」
「ラッキー」
シュン! とジュリアも消えた。
跡形もない。
あるのは甘ったるい香水と、汗の混じった香りだけだった。
「おぉ〜アニメでは何度も見たけど、実際に見ると、なんか感動するなぁ」
オレが独り言を言っていると、オレの足元にも魔法陣が展開された。
「青砥タクミ様。なんなりと……」
天使か悪魔かわからないが、この神様の遣いが実際目の前に来ると緊張してしまうものだ。
「おおっ……そうだな……じゃぁ
【大魔法使い】のスキルを我が手に!」
「………………ダメですね」
少女は計算機を叩いた後、無慈悲にそう告げた。
「なんで?!」
詰め寄るオレ。
「最新のハイエンドスマホ高いんですよ、知らないんですか?」
「知ってますよ! ……最新のハイエンドスマホ!
んなもんで、オレのスキルがキャンセルされんの?」
「はい、ここのところ、お詫びの件数が多いので、そんな“だいそれた”スキルは難しいです」
少女はジト目をオレに向けて言い放った。
「お詫び案件って、そんなに頻繁に起こるもんかなぁ?!」
「はい……今月だけで、四百二十三件発生しています」
「多っ!!」
「先月は五百十三件でしたので」
「改善アピールやめろ!」
まったく……それじゃ、神様は謝罪の合間に業務をこなしてる感じにならないか?
どっちが本業なんだか……
「じゃぁですね……【振り回すと楽しい棒】でいいですか?」
「えっ……いや、ダメだろ!」
「そうですか? めちゃくちゃ楽しい棒ですよ、男の子に大人気だと書いてあります」
書類に目を落とす少女。いったいどんなラインナップなのか。
他の異世界転生者はもっとすごいスキルをもらっているというのに(アニメの話だけど)
「じゃぁ、いったい何ならもらえるんですか?」
思い切って聞いてみることにした。
「そうですね……」
そう言いながら、少女は小冊子のようなものを開いた。
「色々ありますよ。どれでも選んでください。
【振り回すと楽しい棒】
【図書カード】
【高性能耳かき】
【神様厳選ご当地グルメセット】
【選べる日帰り温泉】
【和太鼓体験ペアチケット】
もっとお聞きになりますか?
【選べる冷凍スープセット】も人気ですよ」
「待て待て待て! 後半はカタログギフトじゃないか?!」
どうもこの神様連中は信用がおけない。
「そうですね【図書カード】は結構おすすめですよ」
「じゃぁそれで」
「わかりました。【図書カード】っと」
「えっ……ちょっと、今ので決定?」
「はい、異世界でもお使いいただけますよ?」
「ちょっと待って!」
「それでは青砥タクミ様。いってらっしゃいませ」
その声を最後にオレの目の前が、真っ白な光で覆い隠されてしまった。




