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剣も魔法もない異世界でギャルと帝都を歩く  作者: 如何那


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第15話:ドワーフ飯を食うエルフ

「皆さま、チェックインのご準備が整いました」


 入国管理局転生対策班のハナダさんが、オレたちを呼んでいる。


「本日より、当ホテルが皆さまの生活拠点となります。他の転生者さんも多数いらっしゃいますので、転生者さん同士の交流もありますよ。一通りの生活必需品は揃っておりますし、お食事もご用意しております」


 ハナダさんがテキパキとオレたちのチェックインをこなしてゆく。


「そうだ、当ホテルには大浴場がありますよ」


「温泉? いいじゃん!」

 ハルミが小躍りして喜んだ。


「温泉ではないのですが、タンコー村の上質な石炭で沸かした当たりの柔らかいお湯ですよ」


 郊外にあるからコーガイ村。炭鉱の村だからタンコー村。

 ……あ、帝都だからテートシティか。

 つくづくこの世界はダジャレみたいな地名しかないらしい。

 そのうち“リョーシ町”直送のサンマに出会いそうだ。


「あの……大浴場なんですけど〜」

 ジュリアが手を上げて、ハナダに質問した。


「その大浴場、タトゥーとか大丈夫ですか?」


 へぇ〜、あ、そういう感じなんですね。

 ジュリアさんらしいっちゃ、らしい感じですけど。


「もちろん。

 お気になさることはございませんよ。

 黒崎さんはタトゥー入れてるんですか?

 いいですね、私も入れたいんですけど……なんか痛そうで」

 

 ハナダさんが、うらやましそうにジュリアを見つめた。

 何やらギャルとハナダさんがタトゥーについて会話を交わしている。


 いゃ〜……なんか意外というか、なんというか、ねぇ。

 ハナダさんってそういう感じなんですか?


 一周回って背中一面に、和彫りの弁財天とかいけそうな和風美人ではあるんですが。


 それにしても、この世界はオレたちの世界とは常識がちょいちょい違う気がする。

 有り体に言うと、令和では眉をひそめられるようなことは大体OK。


 ちょうどそこの二人には、都合が良すぎるくらいだ。


「それではこちら、官給品の生活セットです」

 シャンプーや手拭い、歯ブラシにカミソリ、ついでに帝都の地図なんかが全部セットになって、洗面器に詰め込まれていた。

 洗面器の底面にマンガ風に描かれた“ホームちゃん”というおかっぱ少女のデフォルメキャラが描かれていた。

 ……あ、法務ちゃんか!


 

 荷物らしい荷物のないオレたちは、軽くひとっ風呂浴びてこようかというような出立ちで、各々の部屋に向かった。

 今時懐かしい、部屋番の入ったクリア素材のキーホルダーが付いている。


「それじゃ、オレ。ここの部屋みたいです」

「ウチはその隣」

「なんだ、並びかよ……」

 

 ジュリアさんが不満そうだが、ま、これからもどうかよろしくです!


 ◇ ◇ ◇


 広くはないが狭くもないくらいの、手入れが行き届いた部屋。

 それがオレがこの世界で生きていく最初の拠点である。


 ベッドに横になると、否が応でも張り詰めていた緊張の糸がゆるゆると垂れ下がっていくのを感じた。

 

 思えば……色々……あった……な


 バイトの後、ギャルと交通事故にあって……神のお使いとやらに送られたのが、この世界。

 重厚長大を極めたような不思議な世界だ。


 そういえば、大浴場があるとかいってたっけ……

 そんなことを考えているうちに、オレは深く眠ってしまったようだ。



「んおっ!」

 オレが次に気がついたのは、もうすでに日が落ちた夕暮れから夜への移行期だった。


「寝てたのか……」

 頭がやや重い。

 オレは空腹を覚えて、ホテル内のレストランへ向かうことにした。


 音と揺れが大きいレトロなエレベーターでレストラン階に向かう。ハナダさんからもらった館内の手引きを見れば迷うことはなかった。

 近づくにつれ、食欲をそそる良い匂いが鼻をくすぐり、期待が高まる。

 レストラン会場は広く、席数もしっかりと取ってある。


「うまそうだな」

 様々なバックボーンを持つ転生者に合わせてか、メニューは豊富に用意されており、蒸気の力で温められた様々な料理は、どれも熱々だった。


 オレは皿を取って、卵料理のライブキッチン列に並ぶ。

 驚くべきスピードで、オムレツが作られていくのは感動すら覚えた。

「技だなぁ……」

 シェフの手さばきを見ようと身を乗り出したオレは、目の前に並んでいる少女と視線が合って、慌てて視線を外してしまった。

 

 美少女……緊張する。


 こんな至近距離で一緒の空気を吸っていいものやら。


 サラサラと流れる金髪と、華奢で長めの首筋はクールな印象を与えるのに、笑みをたたえた丸みのある小顔が可愛らしさを添えている。


 もしかして、エルフとかそういう種族かも?

 などと思うくらいには、静かな森の雰囲気を持った少女であった。


 しかしながら、その美少女は、出来立てのチーズオムレツを受け取ると、春巻き、唐揚げ、カリカリベーコンとボイルソーセージを次々に皿へ乗せた。

 瞬く間に茶色い皿が出来上がる。

 

 エルフでは……なさそうだ。

 

 ちらりと見ると、彼女は同じ卓を囲んでいる銀髪の美少女と、同じような皿を並べて談笑している。


 見た目はエルフの秘密のお茶会なのに。

 テーブルはドワーフの酒盛りの様相を呈している。


 唐揚げ。

 ベーコン。

 ソーセージ。

 各種揚げ物。

 肉。

 肉。

 肉。

 おかずにくっついてきただけのパセリが、申し訳程度に一つ。


 ……いや、まさか。

 夢を壊さないで。

 お願い神様ポンコツ


「やっぱ、食後の一本だよな」

 そう言って美少女は、緑と紫が毒々しいラッキーストライクから1本咥えて、火を点ける。

「わかる」

 長い脚を組んだ銀髪の美少女が、金髪から貰い火でタバコを灯す。



 期待したオレがバカだった。

 ホント、バカ。

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