第14話:生命を削る魔法……
「ま……魔法、少女……に、なったって……そう言ったよな」
オレの膝は震えていた。
この金髪ピンクの派手髪ギャルが、魔法少女に?
「なん……で?」
なんで? そう。なんでだ?
オレの【大魔法使い】スキルは却下されている。
1番手に転送されたから?
この三人だったら、オレの出席番号の方が早いのに?
みたいなことを、グルグルグルグルと考えてしまった。
「すごいっしょ?」
と言いながらギャルピースするこのギャルが選ばれて、オレが選ばれないなんて……
オレは俯いて、奥歯を噛み締めた。
そうしないときっと泣いていただろうから。
悔しい? うらやましい? 疎外感?
いや、
嫉妬だ。
でも嫉妬を嫉妬だと認めると、オレがあまりに矮小な存在に見えてしまうから……
ギャルが眩しい。
ただ自由に生きて、欲しいものを手に入れて、ウチら最強みたいな顔をして生きている。
「ぐっ……うぅぅ……うぐっっ」
あんまりだ。神様。
転生はありがたい。お土産がショボい気がするけど、Kindle Unlimitedが無料で付いてきたと思ったらラッキーだ。
だったら……オレは……
こいつが魔法少女になったことを知らずに生きていたかった……
「へいへい……どうしたん? あ、ウチらで童貞捨てれなくて悲しいの?」
ハルミがオレにウザ絡みをかけてきた。
「違います」
「そう? だいぶヤバそうだけど……あ、そうだ。
ウチ、魔法少女になったって言ったじゃん?
特別に見せてあげるよ
【魔法】を」
やめてくれ……もうこれ以上、オレのメンタルを削らないでくれ……
そんなことを思っているとは、欠片も思っていなさそうな表情で、ハルミはニタニタ笑っている。
魔法を見せびらかしたくて仕方がないのだ。
「いい? 見ててね〜」
そう言うと、彼女は【タバコ】を取り出した。
「えっ……なん……ですか?」
魔法を見せびらかすつもりじゃ……?
「こうやって……まぁ、3本くらい抜くじゃん?」
ハルミは、箱から紙巻きタバコを数本抜くと、早速その1本を咥えて火を点けた。
やめてくれ……魔法少女のイメージを毀損しないでくれ……
「いくよ〜……」
オレの目の前に、黒字に紫と緑色というドギツい配色の箱を突きつけると、ハルミはそれをカサカサと振った。
いや、
当初はカサカサと言っていた。というのが正しい。
音はすぐにしなくなり、ハルミがニマっと笑った。
「はい! タバコが増えて元通りになりました!」
「よっ、すげーぞ、さすが魔法少女!」
ジュリアが手を叩いて笑っている。
「ふっふっふ、これが私のスキル【いつでもタバコが減った分だけ増えてパンパンになる】だよ。すごい魔法でしょ?」
「あ………………ぁ、えっ?!」
オレは目の前の派手髪の魔法少女に、いったい何を見せられたんだ?
「でもね……この魔法には代償があるの……」
「代償……?」
アニメで見たことがある。
こういう代償を払う系のスキルの場合、それを行使するたびに視力を失っていくとか、命を削るとか……
「いっつも……いーーっつも、タバコが取り出しにくいんだよ!」
「ぎゃはは……ウケる」
ジュリアはすでに知っていた様子で、オレがハルミの大それた能力を前にどう反応するかを見て楽しむつもりだったのだ。
「……ってことは、ジュリアさんがスマホ買ってもらったってだけで」
「だけって、なんだよ」
「ハルミさんが、タバコに不自由しなくなった……ってだけですよね」
「うん。不自由しなくなったっていうけど、毎回パンパンだから不便だよ」
「うーん、でも買いに行かなくていいなら、便利ってことでいいじゃないですか」
「それもそっか。ラッキーラッキー」
そう言いながらハルミはラッキーストライクに、また火を点けた。
「……で? タクミくんは、何もらったのかな〜?」
ジュリアがオレに視線を向ける。
「あぁ、Kindle Unlimitedの無料特典みたいなもんです」
「ネトフリじゃないんだ」
「ホントだ、せめてPrime Video ならなぁ」
「そういうところだよねぇ」
「そういうところだぞ」
「本を読め、本を!」




