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この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


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9/22

この関係ほんとに友達なの…

日曜日。


待ち合わせ場所に着くと、すでに莉奈が大きく手を振っていた。


『由奈ー! こっちこっち!』


『おはよう、莉奈』


『おはよ! 今日はいっぱい遊ぼうね!』


『うん』


今日は、いつもの制服とは違う。


私服で友達と遊園地に来るなんて、中学の頃の私からしたら考えられないことだった。


少しして、美月と結衣もやってきた。


『お待たせ』


『おはよう』


『玲奈ちゃんは?』


『もう来てるよ』


結衣が指差した先を見る。


玲奈が少し離れたところで、静かにこちらを見ていた。


『おはよう』


『おはよう、玲奈』


五人が揃う。


莉奈がパンフレットを広げながら、楽しそうに言った。


『よーし! 今日は全部乗るよ!』


『全部は無理じゃない?』


美月が冷静に返す。


『じゃあ、乗れるだけ!』


『それならいい』


そんなやり取りを聞きながら、私は笑った。


今日はきっと、楽しい一日になる。


そんな気がした。


***


午前中は、いくつものアトラクションを回った。


莉奈が怖がる美月を無理やりジェットコースターに誘ったり、結衣が写真を撮ってくれたり。


玲奈は思っていたよりも遊園地を楽しんでいて、普段より少しだけ表情が柔らかかった。


『玲奈、これ一緒にやろ!』


『うん』


莉奈に誘われてゲームに挑戦する玲奈を見ながら、私は思わず笑ってしまう。


『玲奈って、意外と負けず嫌いなんだね』


『……そうかな』


『今、絶対本気だったよ』


『……ちょっとだけ』


そんな会話をしているうちに、お昼になった。


みんなで食事をして、午後もいくつかアトラクションを回る。


そして夕方。


最後に残ったのは、大きな観覧車だった。


『乗ろうよ!』


莉奈が言う。


『五人だから、一人余るね』


結衣が言うと、莉奈が少し考えてから笑った。


『じゃあ二人ずつで乗ろう!』


『私は一人でもいいけど』


玲奈が言う。


『だめー! せっかくだから二人で乗ろ!』


結局、くじ引きで組み合わせを決めることになった。


そして。


『……由奈と玲奈ちゃんだね』


『えっ』


思わず玲奈を見る。


玲奈も少し驚いた顔をしていた。


『じゃあ、行ってらっしゃーい!』


莉奈に背中を押されるようにして、私たちは観覧車へ向かった。


***


ゴンドラの扉が閉まる。


外の音が少し遠くなった。


二人きり。


さっきまで五人で騒いでいたから、余計に静かに感じる。


『……なんか、緊張するね』


私が言うと、玲奈が少し笑った。


『うん』


観覧車がゆっくりと動き始める。


窓の外を見ると、遊園地が少しずつ小さくなっていく。


『綺麗……』


『うん』


しばらく、二人で景色を眺めていた。


でも、沈黙は嫌じゃなかった。


玲奈といると、こういう静かな時間も不思議と落ち着く。


『由奈』


『なに?』


『今日は楽しい?』


『うん。すごく』


『よかった』


玲奈は窓の外を見ながら、小さく笑った。


『私も楽しい』


『玲奈も?』


『うん』


少しだけ間が空く。


玲奈がこちらを見る。


『……由奈と一緒に来られてよかった』


『……え?』


『ううん。なんでもない』


『そっか』


私はまた窓の外を見る。


どうしてだろう。


今の言葉が、妙に胸に残った。


少しして、玲奈が何か言おうとした。


『実はさ、私、由奈のこと――』


『……え?』


その瞬間だった。


ゴンドラが風を受けて、ふわっと揺れた。


『ひゃっ……!』


『わっ……!』


玲奈がバランスを崩す。


次の瞬間、玲奈がこちらに倒れ込んできた。


私はそのまま座席に押されるようにして、背中をつけた。


目の前に玲奈がいる。


近い。


さっきまで普通に話していた距離とは、まるで違う。


『…………』


『…………』


玲奈も動かない。


私も、どうしていいのか分からない。


ただ、心臓の音だけがやけに大きく聞こえる。


私は思わず視線を逸らした。


『……ご、ごめん』


玲奈が慌てて身体を起こす。


『う、ううん……大丈夫』


ようやく距離が戻る。


それなのに、私はしばらく玲奈のほうを見ることができなかった。


(……なんで、こんなに意識しちゃうんだろ)


友達なのに。


ただの友達だから。


そう思おうとするほど、胸の鼓動が気になってしまう。


『……さっきの話』


玲奈が小さく言った。


『え?』


『途中だったね』


『……うん』


玲奈は少しだけ黙った。


そして、


『……また今度、話す』


そう言った。


『そっか』


私はそれだけ返した。


観覧車はゆっくりと降りていく。


さっきまで綺麗だと思っていた景色も、今はあまり頭に入ってこない。


ただ隣にいる玲奈の存在だけが、妙に近く感じられた。


***


観覧車を降りると、莉奈たちが待っていた。


『おかえりー! どうだった?』


『楽しかったよ』


私はできるだけ普通に答えた。


玲奈も、


『うん』


と頷く。


『よかったー!』


莉奈は満足そうに笑った。


そのまま五人で帰ることになった。


帰り道、私はみんなと話しながらも、何度もさっきのことを思い出していた。


玲奈が言いかけた言葉。


観覧車が揺れた瞬間。


あまりにも近かった距離。


そして――。


自分が目を逸らしてしまったこと。


(……変なの)


私は小さく息を吐いた。


友達。


そう。


私たちは、友達だ。


だから、こんなことを気にする必要なんてない。


……そう思っているのに。


胸の奥に残ったドキドキだけは、なかなか消えてくれなかった。

第9話、ここまで読んでくださってありがとうございます!


今回は、みんなで遊園地へ行くお話でした。

いつもとは少し違う場所で過ごすことで、由奈たちの距離も少しずつ変わってきたのかなと思います。


これから五人との関係がどう変わっていくのか、ゆっくり楽しんでいただけたら嬉しいです


次回もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
由奈ちゃんの高校生活が、新しい友達が増えるたびに少しずつ色づいていっていますね。 玲奈ちゃんが由奈ちゃんの何を知っているのか、友達とはまた違う感情を持っているのか、ふたりの関係性が気になります。 これ…
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