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この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


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10/22

この距離、なんて呼べばいいんだろう

月曜日。


昨日の遊園地の疲れが残っているのか、朝から少しだけ体が重かった。


それでも学校へ向かう足取りは、以前より軽い。


校門を抜けて教室へ向かう途中、スマホを見ると、昨日のグループメッセージには写真が何枚も送られていた。


『昨日の写真、めっちゃある!』

『誰か一番いいやつ選んでー!』

『私はこれ好き』


画面をスクロールしていると、観覧車の写真で指が止まった。


五人で写っている写真。


その中で、私は少し端に立っている。


昨日までなら、「ちゃんと笑えてるかな」とか、「変じゃないかな」とか、そんなことばかり気にしていたと思う。


でも、今は違った。


写真を見て、普通に笑ってしまった。


『……楽しかったな』


小さく呟いてから、教室へ入る。


『おはよー、由奈!』


一番に声をかけてきたのは莉奈だった。


『おはよう、莉奈』


『昨日楽しかったね! また行こうよ!』


『うん。今度は別のところも行きたい』


『じゃあ次は水族館!』


『気が早いな』


後ろから美月が言う。


『いいじゃん! 水族館!』


『私は賛成。静かなところのほうが好きだし』


結衣も会話に加わった。


三人の声を聞きながら、私は鞄を机の横に掛ける。


昨日のことを思い出してしまった。


観覧車の中。


玲奈が言いかけた言葉。


『実はさ、私、由奈のこと――』


そこから先は聞けなかった。


というより、聞くことができなかった。


あれから何度考えても、続きが分からない。


(……なんだったんだろう)


『由奈?』


『え?』


気づくと、結衣がこちらを見ていた。


『ぼーっとしてたけど、大丈夫?』


『う、うん。大丈夫』


『昨日疲れた?』


『ちょっとだけ』


そう答えると、莉奈が楽しそうに笑った。


『じゃあ今日はゆっくりしよ!』


『学校でどうやってゆっくりするの?』


美月が呆れたように言う。


そんなやり取りをしていると、教室の前を玲奈が通った。


一瞬だけ目が合う。


玲奈は少しだけ立ち止まって、それからこちらへ歩いてきた。


『……おはよう』


『お、おはよう、玲奈』


昨日のことを意識してしまって、少しだけ声が上ずった。


玲奈はそれに気づいたのか、気づいていないのか分からない。


ただ、私の隣に立って、小さく言った。


『昨日、楽しかったね』


『……うん』


『また、行こう』


『うん。行こう』


それだけだった。


それだけなのに、昨日より玲奈との距離が近くなったような気がした。


『あ、そうだ!』


莉奈が突然手を叩いた。


『今日の放課後、みんなで帰らない?』


『私は部活があるから途中までなら』


美月が答える。


『私も大丈夫』


結衣が続く。


玲奈は少し考えてから、


『……私も』


と頷いた。


『由奈は?』


『私も大丈夫』


答えてから、少しだけ笑う。


以前の私なら、こういう誘いにどう返せばいいのか分からなかった。


嬉しいのに、嬉しいと言うのが怖かった。


断られたらどうしよう。


迷惑だったらどうしよう。


そんなことばかり考えていた。


でも今は、違う。


『じゃあ、決まりね!』


莉奈が笑った。


放課後。


五人で校門を出る。


昨日の遊園地の話をしたり、次に行きたい場所を話したり。


特別なことは何もない。


ただ、一緒に歩いているだけ。


それなのに、ふと気づく。


私はもう、「誰かと帰る」ということを特別な出来事だと思わなくなっていた。


それが少し不思議だった。


駅へ向かう途中、信号で足を止める。


莉奈と美月、結衣が前で話している。


私は少し後ろ。


隣には玲奈。


赤信号を見ながら、玲奈がぽつりと言った。


『……昨日のこと、まだ気になってる?』


心臓が跳ねた。


『……え』


『観覧車』


『……うん』


玲奈は前を向いたまま続ける。


『ごめんね。途中で話せなくなって』


『ううん』


『でも、ちゃんと話すから』


『……いつ?』


思わず聞いてしまった。


玲奈は少しだけこちらを見る。


『もう少しだけ、待って』


『分かった』


信号が青になる。


みんなが歩き出す。


私も歩き出した。


だけど、さっきまでより少しだけ、玲奈との距離が気になった。


友達だから。


きっと、そうなんだと思う。


でも――。


昨日からずっと、胸の奥に残っているこの感覚を、私はまだ上手く説明できなかった。


(友達って……こんなに、相手のことが気になるものなのかな)


答えは、まだ分からない。


ただ一つ分かっているのは。


私たちの関係は、昨日までと少しだけ違ってしまったということだった。

第10話、ここまで読んでくださってありがとうございます!


今回は、昨日の遊園地をきっかけに、由奈と玲奈の距離が少しだけ変わるお話でした。


「友達だから」で片づけられるような、でも少しだけ気になってしまう距離感。


由奈自身も、まだその気持ちに名前をつけられていません。


そして玲奈が観覧車で言いかけた言葉も、もう少しだけお待ちください。


これから五人との関係がどう変わっていくのか、ゆっくり見守っていただけたら嬉しいです


次回もよろしくお願いします!

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