今度また、一緒に・・・
こんにちは、汐音 月風です!
第5話を読みに来てくださって、ありがとうございます!
今回も、由奈たちの高校生活をゆっくり描いていきます。
少しずつ変わっていく日常を、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです!
それでは、第5話をどうぞ!
「また翌朝。」
目が覚めて最初に思ったのは、昨日のことだった。
莉奈とお昼を食べて、美月と一緒に帰って、結衣とも少し話した。
どれも特別な出来事じゃない。誰かにとっては、よくある高校生活の一日なのかもしれない。
それでも私にとっては、昨日という一日が妙に心に残っていた。
スマホを手に取ると、昨日の夜に届いた莉奈のメッセージが目に入る。
『明日もお昼一緒に食べよ!』
その文字を見て、自然と頬が緩んだ。
『……今日も、か』
昨日の「また明日」が、本当にやってきた。
そんな当たり前のことが、少し嬉しかった。
「よし」
私はベッドから起き上がる。
高校生活は、今日も続いていく。
それだけで、昨日より少しだけ楽しみだった。
教室に着くと、まだ来ている人は少なかった。
自分の席に座って、鞄から教科書を出していると、後ろから声がする。
『おはよう、由奈』
『あ、おはよう。美月』
振り返ると、美月がいつものように立っていた。
『今日、早いね』
『美月もじゃん』
『私はいつもこれくらい』
『そっか』
それだけの会話。
でも、なんとなく心地よかった。
『昨日、莉奈からメッセージ来た?』
『うん。今日も一緒にお昼食べようって』
『私にも来た』
美月がスマホの画面を見せる。
そこには、莉奈からのメッセージが表示されていた。
『今日のお昼も集合ね! 忘れないでね!』
思わず笑ってしまう。
『莉奈らしいね』
『うん』
そう言って、美月も小さく笑った。
しばらくすると、教室の前の扉が勢いよく開いた。
『おはよー!』
莉奈だった。
『二人とも早い!』
『莉奈が遅いだけじゃない?』
美月が言う。
『えー、そんなことないよ!』
『昨日より五分遅い』
『なんで覚えてるの!?』
二人のやり取りを見ながら、私は笑った。
朝からこんなふうに笑えるなんて、少し前の私には想像できなかった。
『由奈、今日のお昼ね!』
莉奈が私のところまでやってくる。
『うん、楽しみにしてる』
『……え?』
莉奈が固まった。
『な、なに?』
『今、由奈が「楽しみにしてる」って言った……!』
『えっ』
『なんか嬉しい!』
そう言って、莉奈は嬉しそうに笑った。
『私も楽しみ!』
『……ふふ』
また笑ってしまう。
本当に、莉奈は明るい。
一緒にいると、こっちまで自然に笑ってしまう。
午前中の授業は、あっという間に過ぎていった。
そして昼休み。
私たちはいつものように机を寄せて、お弁当を広げた。
『そういえばさ』
莉奈が卵焼きを頬張りながら言う。
『今度、みんなでどっか行かない?』
『みんなって?』
私が聞くと、莉奈は少し考えてから指を折った。
『私と、由奈と、美月と……結衣!』
『結衣も?』
『うん!』
『いいんじゃない?』
美月が答える。
私は少し迷ってから頷いた。
『私も行きたい』
『やった!』
莉奈が嬉しそうに両手を上げる。
『じゃあ決まり!』
『まだどこ行くか決まってないけど』
『それはこれから決める!』
『順番逆じゃない?』
美月が呆れたように言った。
三人で笑う。
休日に友達と出かける。
それも、中学生の頃の私にはなかったことだった。
だから、想像するだけで少し胸が弾んだ。
『どこがいいかな』
『カラオケ!』
『莉奈、歌うの好きなの?』
『好き!』
『私は苦手』
『えっ、美月歌わないの?』
『聴くのは好き』
そんな話をしていると、ふと教室の入り口に人影が見えた。
桜井結衣だった。
『あれ、何の話?』
『今度みんなで遊びに行こうって話してたの!』
莉奈がすぐに答える。
『結衣も行こうよ!』
『私も?』
『もちろん!』
結衣は少し驚いたように目を瞬かせ、それから笑った。
『うん。いいよ』
『やった!』
莉奈がまた喜ぶ。
『じゃあ、今度ちゃんと予定決めようね』
『うん』
私はそのやり取りを見ながら、なんとなく嬉しくなった。
こうやって、予定を立てること。
「今度」があること。
それが嬉しい。
今までは、放課後の予定なんてほとんどなかった。
休日だって、家にいることが多かった。
でも今は違う。
来週の話をしている。
明日の話をしている。
そんな小さな変化が、私にはとても大きかった。
放課後。
今日は部活の見学をすることになっていた。
私は運動が苦手だから、最初から運動部は考えていない。
文化部をいくつか見て回るつもりだった。
『由奈、部活どうするの?』
靴を履き替えながら、莉奈が聞いてくる。
『まだ決めてないかな。莉奈は?』
『私も!』
『美月は?』
『私は運動部を見てみる』
『やっぱり美月は運動部だよねー』
莉奈が納得したように頷く。
そのとき、少し離れたところから声がした。
『小野寺さん』
振り返る。
そこにいたのは、白石玲奈だった。
『……玲奈ちゃん』
自然と、背筋が伸びる。
玲奈は少しだけこちらを見て、それから口を開いた。
『この前のこと……』
心臓が小さく跳ねた。
『え?』
『ううん』
玲奈は少し迷うように視線を逸らした。
『……なんでもない』
『そ、そう?』
『うん』
それだけ言うと、玲奈はその場を離れていった。
私はしばらく、その背中を見つめていた。
どこかで会ったことがある。
あの言葉が、頭から離れない。
でも、私は知らない。
玲奈ちゃんと会った記憶なんて――。
『由奈?』
莉奈の声で、我に返った。
『どうしたの?』
『ぼーっとしてたから』
『あ……ごめん』
『大丈夫?』
『うん。大丈夫』
私は笑った。
それ以上、何も言わなかった。
言えるはずがなかった。
中学時代のことは、できれば誰にも知られたくない。
せっかく始まった高校生活を、過去のことで壊したくない。
だから私は、玲奈の言葉を心の奥にしまった。
まだ、考えなくてもいい。
そう思うことにした。
その日の帰り道。
莉奈と美月と別れ、一人になった私はスマホを取り出した。
今日撮った写真はない。
それでも、メッセージの画面には新しい通知が増えていた。
『今日は楽しかった!』
莉奈からだった。
その下に、結衣からも届いている。
『また予定決めようね』
私は画面を見ながら、ゆっくり文字を打った。
『うん。また一緒に遊ぼう』
送信する。
少しして、莉奈からすぐに返信が来た。
『絶対だよ!』
私は小さく笑った。
また明日。
また今度。
また一緒に。
そんな言葉が、少しずつ増えていく。
私はまだ、それがどれくらい大切なものなのか知らなかった。
ただ――。
この時間が、ずっと続けばいい。
今は、それだけを思っていた。
第5話、ここまで読んでくださってありがとうございます!
今回は、由奈の日常が少しずつ変わっていくお話でした。
何気ない会話や、一緒に帰る時間。そんな小さな出来事の一つ一つが、由奈にとっては大切なものになっていくのかもしれません。
まだまだ始まったばかりの高校生活。これからどんな日々が待っているのか、ぜひ見守っていただけたら嬉しいです。
次のお話も、よろしくお願いします!




