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この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


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消え去った過去。

こんにちは、汐音(しおね) 月風(るか)です!


第3話を読みに来てくださって、ありがとうございます!


今回は、由奈の前に少し気になる女の子が登場します。


そして、由奈が高校では隠しておきたいと思っている――

「過去」が、少しだけ動き始めます。


忘れたつもりだったこと。


もう終わったと思っていたこと。


それが、思いがけない形で今の由奈に近づいてきます。


由奈の高校生活は、ここから少しずつ変わっていくことになるかもしれません。


それでは、第3話

『消え去ったはずの過去』


ぜひ最後までお楽しみください!


汐音(しおね) 月風(るか)

次の日の朝。


私は教室に入ると、いつものように自分の席へ向かった。


「おはよう、由奈!」


「おはよう、莉奈」


席に着く前から、莉奈が手を振ってくる。


「昨日ちゃんと眠れた?」


「うん。莉奈は?」


「私はね、夜更かししちゃった!」


「……何時まで?」


「二時!」


「えぇ……」


「だって漫画がいいところだったんだもん!」


朝から元気な莉奈。


その隣で、美月が呆れたように言った。


「授業中、寝ないでよ」


「寝ないよ!」


「昨日もそう言ってたじゃん」


「昨日は昨日!」


二人のやり取りを見ていると、なんだか自然と笑ってしまう。


「ふふっ」


「由奈も笑ってる!」


「だって……二人とも面白いから」


「じゃあ由奈も仲間!」


「どういうこと?」


そんな他愛もない会話。


それだけなのに。


私は嬉しかった。


――こんな朝を、ずっと過ごしたかった。


***


一時間目が終わった。


先生が教室を出ていくと、莉奈が私のところへやってくる。


「ねえ、由奈」


「ん?」


「購買行かない?」


「購買?」


「そう! パン買いたい!」


「今から?」


「うん!」


「でも次の授業まで時間ある?」


「大丈夫大丈夫!」


莉奈に手を引かれて、私は教室を出た。


廊下を歩いていると、前から一人の女の子が歩いてくる。


黒髪。


肩につくくらいの長さ。


白い肌。


静かな表情。


すれ違うだけなのに、なぜか目を奪われた。


「……綺麗」


思わず口から出ていた。


「でしょ?」


莉奈が振り返る。


「え?」


「今の子!」


「知ってるの?」


「うん。白石玲奈ちゃん」


「白石……さん」


「すっごく綺麗だよね」


「うん……」


私はもう一度、後ろを見る。


玲奈は誰とも話さず、一人で歩いていた。


その時。


玲奈がふと振り返った。


目が合った。


「……!」


私は慌てて前を向いた。


(見られた……)


でも。


何故か、玲奈はその場で少しだけ立ち止まっていた。


***


昼休み。


私と莉奈と美月は、三人でお弁当を食べていた。


「ねえねえ、由奈」


「なに?」


「さっき白石さん見てたでしょ?」


「えっ!?」


「やっぱり!」


「いや、だって……綺麗だったから」


「わかるー!」


莉奈が頷く。


「白石さん、めちゃくちゃ人気あるんだよ」


「そうなの?」


「うん。でも、あんまり人と話さないんだよね」


美月が口を開く。


「必要なことしか話さない感じ」


「へえ……」


「由奈、気になる?」


「え?」


莉奈がニヤニヤする。


「違うから!」


「まだ何も言ってないよ?」


「……莉奈」


美月が呆れたように見る。


「からかうのやめなよ」


「はーい」


私は少し安心した。


でも。


なぜか頭の中には、さっきの玲奈の目が残っていた。


***


放課後。


私は一人で教室に残っていた。


忘れ物を取りに来ただけだった。


「……あった」


机の中から教科書を取り出す。


そのまま帰ろうとした時。


「……小野寺さん」


「……え?」


振り返る。


そこにいたのは。


白石玲奈だった。


「白石さん……?」


「うん」


静かな声。


少し緊張する。


「どうしたの?」


玲奈は私をじっと見た。


そして。


「……どこかで会ったこと、ある?」


「…………え?」


心臓が止まりそうになった。


頭の中が真っ白になる。


「……ない、と思う」


「そう」


玲奈はそれだけ言った。


でも。


その目は、まだ私を見ていた。


「ごめん。変なこと聞いた」


「う、ううん……」


玲奈は小さく頭を下げる。


そして教室を出ていった。


私はその場に立ったまま動けなかった。


(……なんで?)


(どうして、そんなこと……)


胸がざわざわする。


忘れたかった。


中学のこと。


あの頃の自分。


一人だった自分。


高校では、誰にも知られたくなかった。


なのに。


初めて会ったはずの女の子に。


『どこかで会ったこと、ある?』


そう聞かれた。


私は胸元をぎゅっと握った。


――お願い。


まだ、思い出さないで。


私が昔、どんな子だったのか。


***


その日の帰り道。


私は一人で歩いていた。


昨日までは、友達ができたことが嬉しくて仕方なかった。


今日だって、楽しかった。


なのに。


今は少しだけ、不安だった。


スマホを見る。


莉奈からメッセージが届いていた。


『明日、一緒にお昼食べよー!』


その一文を見て、私は少し笑った。


「……うん」


小さく呟く。


まだ大丈夫。


私は高校で変わるんだ。


もう、あの頃の私じゃない。


そう自分に言い聞かせながら。


私は夕暮れの道を歩いていった。


――この時の私は、まだ知らなかった。


白石玲奈との出会いが。


私の過去と、これからの高校生活を繋ぐことになるなんて。

第3話、ここまで読んでくださってありがとうございます!


今回は、由奈の高校生活に新しい女の子が登場しました。


そして最後には、由奈が隠していた過去に少しだけ触れることになりました。


『どこかで会ったこと、ある?』


玲奈のこの言葉が、これからどんな意味を持つのか。


由奈が忘れようとしていた中学時代と、玲奈との関係。


少しずつ明らかになっていきます。


次回も、由奈たちの青春を見守ってもらえたら嬉しいです


それでは、また次のお話で!


汐音(しおね) 月風(るか)

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