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この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


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20/22

いつも明るい君のこと。

月曜日の昼休み。


『由奈ー! 今日、一緒に購買行こ!』


お弁当を取り出そうとしていた私は、莉奈の声に顔を上げた。


『購買? お弁当は?』


『今日はお弁当作るのサボっちゃった!』


『サボったって……』


『だって、朝起きたらあと十分しかなかったんだもん!』


『それ、間に合ったの?』


『間に合ったよ! 髪の毛だけはちゃんとした!』


莉奈は得意げに笑った。


美月が隣から小さくため息をつく。


『その十分で髪を整える前に、朝ご飯を食べなさい』


『美月ママだ……』


『誰がママよ』


二人のやり取りに、私は吹き出した。


結局、私もお弁当を持って購買についていくことにした。莉奈は焼きそばパンといちごミルクを買い、満足そうに袋を抱えている。


『由奈は何買うの?』


『私は飲み物だけ』


『えー、せっかくだから何か買おうよ! 半分こしよ!』


『もう焼きそばパン買ったじゃん』


『だから半分こ!』


『理屈が分からないんだけど』


『いいからいいから!』


押し切られる形で、私は小さなチョコパンを一つ買った。


教室に戻る途中、莉奈が急に歩く速度を落とした。


『……ねえ、由奈』


『ん?』


『私って、うるさい?』


思いがけない質問に、足が止まりかけた。


『え? なんで?』


『いや、なんとなく!』


いつもの明るい笑顔。でも、さっきまでとは少し違って見えた。


『……うるさいって思ったことはあるよ』


『えっ! ひどい!』


『だって、声大きいし』


『うわーん、美月に言いつけてやる!』


『でも』


私は笑いながら続けた。


『莉奈が静かだったら、逆に心配するかも』


莉奈が目を丸くする。


『……ほんと?』


『うん。莉奈がいると、みんな話しやすいし』


『……そっか』


莉奈は少しだけ視線を落としたあと、すぐにいつもの顔に戻った。


『じゃあ、これからもいっぱい話しかけるね!』


『ほどほどにね』


『えー!』


教室に戻ると、結衣が私たちを見て笑った。


『二人とも、仲いいね』


『でしょー!』


莉奈が胸を張る。


私はその横で、買ったチョコパンの袋を開けた。


いつも明るくて、誰とでもすぐに仲良くなれる莉奈。


私がこの輪の中に入れたのも、莉奈が何度も声をかけてくれたからだ。


だから、莉奈は寂しくなることなんてないんだと思っていた。


でも、さっきの質問が少しだけ引っかかっていた。


うるさいかどうか。


そんなことを、わざわざ聞く理由があるんだろうか。


放課後、帰り支度をしていると、莉奈が私の机にやってきた。


『由奈、今日一緒に帰れる?』


『うん。大丈夫だよ』


『やった!』


昇降口を出て、二人で駅まで歩く。


途中、莉奈がコンビニの新作スイーツを見つけて騒いだり、道端の猫に話しかけたりする。私はそのたびに笑って、莉奈はさらに楽しそうに話した。


駅に着くころには、さっきの質問のことも忘れかけていた。


別れ際、莉奈がふいに言った。


『由奈と二人で帰るの、なんかいいね』


『いつもみんなで帰ってるもんね』


『うん。みんなといるのも好きだけどさ』


莉奈は少し考えてから、笑った。


『二人だと、いつもよりいっぱい話せる気がする!』


『……そうなの?』


『そうなの!』


大げさなくらい元気な返事だった。


けれど、その笑顔を見ながら、私は思った。


みんなといるときの莉奈も、二人きりの莉奈も、どちらも本当の莉奈なんだろう。


私はまだ、その全部を知らない。


『じゃあ、また明日ね!』


『うん。また明日』


手を振って別れたあと、私は少しだけ振り返った。


莉奈はもう、改札の向こうに消えていた。


明るい人にも、考えることはある。


当たり前なのに、私はそれをちゃんと分かっていなかったのかもしれない。


そう思いながら、私は家へ向かった。


明日は、誰の知らない顔を知ることになるんだろう。

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