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この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


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18/22

知らない顔を、知っていく、

週の終わりが近づくと、教室の空気も少しだけ軽くなる。


昼休み、莉奈が机に身を乗り出してきた。


『ねえねえ、今度みんなで何する?』


『また遊ぶの?』


美月が呆れたように言う。


『だって楽しいじゃん!』


『まあ、私はいいけど』


結衣も笑いながら頷いた。


透子はお弁当を食べながら、


『私は勉強する時間も欲しいんだけど』


『じゃあ勉強してから遊ぼ!』


『そういう問題じゃない……』


そのやり取りを聞いて、私は思わず笑った。


少し前まで、こんな光景を自分が眺めているなんて想像もしていなかった。


六人でいることにも、だいぶ慣れてきた。


でも――。


『由奈』


玲奈の声に振り向く。


『なに?』


『今日、一緒に帰らない?』


『……うん』


自然に返事をした。


それだけなのに、莉奈がニヤッとする。


『おー? 二人で帰るの?』


『たまたまだよ』


『はいはい』


『ほんとだから』


笑いながら言い返す。


以前なら、こういうやり取りすら怖かったかもしれない。


何か言い方を間違えたら、また誰かが離れていく。


そんなことばかり考えていた。


でも今は、少しくらいからかわれても平気だった。


放課後。


昇降口で靴を履き替えていると、玲奈が隣に立った。


『今日はどこか寄る?』


『うーん……』


私は少し考えてから、


『コンビニ行きたい』


『いいね』


二人で歩き出す。


特別な話をするわけでもない。


今日の授業がどうだったとか、莉奈がまた騒いでいたとか、透子のノートが綺麗すぎるとか。


そんな話ばかりだった。


コンビニで飲み物を買って、店を出る。


そのとき、玲奈がふと足を止めた。


『……由奈』


『ん?』


『私ね』


玲奈は少し迷うように視線を落とした。


『中学の頃、今みたいに友達と帰ることって、あんまりなかったんだ』


意外だった。


『玲奈も?』


『うん』


『……なんか、意外』


『よく言われる』


玲奈が笑う。


その笑顔を見て、私は少し驚いた。


教室で見る玲奈とは、ほんの少し違う。


『玲奈って、いろんな顔あるんだね』


『そう?』


『うん。学校だともっと静かな感じするし』


『由奈の前だと、少し楽なのかも』


その言葉に、私は返事ができなかった。


胸の奥が、ほんの少しだけ熱くなる。


玲奈は気にした様子もなく歩き出す。


『帰ろう』


『……うん』


その背中を追いかける。


知らないことばかりだ。


玲奈の中学時代も。


美月のことも、莉奈のことも、結衣のことも、透子のことも。


私はまだ、みんなのことを全部知っているわけじゃない。


でも。


知らないからこそ、これから知っていける。


そう思うと、少しだけ楽しみだった。


――そして私はまだ知らなかった。


私がみんなのことを知っていくのと同じように。


みんなも少しずつ、私のことを知っていくことになるなんて。

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