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この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


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16/22

今度は、2人で、

月曜日。


朝の教室は、いつも通りだった。


莉奈が昨日撮った写真を見せてきたり、結衣が新しく見つけたお店の話をしたり、美月が小テストの範囲を確認したり。


昨日の休日が終わっただけで、またいつもの学校生活に戻っている。


でも、私の中には一つだけ引っかかっていることがあった。


昨日、玲奈が言いかけた言葉。


『今度は二人で――』


その続き。


授業中も、たまに思い出してしまう。


(……何だったんだろう)


気になってしまう自分が、少し嫌だった。


別に、急いで聞く必要なんてない。


そう思っているのに、休み時間になると玲奈のほうを見てしまう。


玲奈はいつも通り、静かに本を読んでいた。


目が合う。


玲奈が少しだけ首を傾げる。


私は慌てて視線を逸らした。


『由奈?』


隣から莉奈に呼ばれる。


『な、なに?』


『今、玲奈見てた?』


『……見てない』


『見てたじゃん』


『見てないって』


莉奈がニヤニヤする。


『ふーん』


『何その顔』


『別にー?』


そのまま莉奈は逃げるように自分の席へ戻っていった。


……絶対、何か勘違いされている。


***


放課後。


今日は部活のある美月と結衣が先に帰り、莉奈も委員会があるらしい。


気づけば教室には、私と玲奈と透子だけが残っていた。


透子は机に向かって勉強している。


私は帰る準備をしていた。


すると玲奈が鞄を持って立ち上がった。


『由奈』


『うん?』


『昨日の話なんだけど』


心臓が少し跳ねる。


『……うん』


『今から、少し時間ある?』


『あるよ』


『じゃあ……一緒に帰らない?』


私は頷いた。


『うん』


すると透子が顔を上げた。


『二人で?』


『うん』


玲奈が答える。


透子は少しだけ私たちを見た。


『分かった。じゃあ、また明日』


『うん。また明日』


教室を出る。


廊下には、放課後の静かな空気が流れていた。


校門を出て、駅とは反対方向へ少し歩く。


玲奈が選んだ道は、いつもの帰り道とは違った。


『どこ行くの?』


『少し歩きたいだけ』


『そっか』


それからしばらく、二人とも黙って歩いた。


気まずいわけじゃない。


でも、いつもみんなでいるときとは違う。


二人きりになると、玲奈の存在が少し大きく感じられた。


やがて小さな公園に着く。


玲奈がベンチに座った。


私も隣に座る。


『……昨日さ』


玲奈が口を開く。


『うん』


『二人で行きたいって言ったけど』


『うん』


『別に、変な意味じゃないから』


『……え?』


玲奈が少し困ったように笑った。


『昨日、話せなかったことがあったでしょ』


『観覧車のとき?』


『うん』


私は黙って玲奈を見る。


玲奈は少しだけ下を向いた。


『私、由奈に聞きたいことがあるの』


『……私に?』


『うん』


少し間があった。


『中学のとき、どこの中学校だった?』


胸が止まったような気がした。


『……え』


玲奈は私を見る。


その目は、いつもより真剣だった。


『やっぱり、そうなんだ』


『何が……?』


『私、由奈のこと……前に見たことがある』


頭の中が真っ白になる。


『……どこで?』


玲奈はすぐには答えなかった。


公園の木々が風で揺れる。


しばらくして、玲奈が小さく言った。


『中学』


その一言だけで、胸の奥にしまっていた記憶が一気に揺れた。


教室。


昼休み。


誰も自分を呼ばない時間。


帰り道。


卒業式の日。


私は膝の上で手を握った。


『……何で』


声が震えた。


『何で、今まで言わなかったの?』


玲奈は少し黙ってから、


『確信がなかったから』


と答えた。


『でも、最近になって分かった』


『……何が?』


玲奈は私を見る。


『由奈は、あのときの子なんだって』


心臓が大きく鳴った。


もう、逃げられない。


ずっと隠していた過去が、目の前にいる。


だけど玲奈は、それ以上何も言わなかった。


ただ、


『今日はここまでにする』


と言った。


『……え?』


『急に全部聞いたら、由奈が困ると思うから』


『……』


私は何も言えなかった。


帰り道。


玲奈と並んで歩く。


さっきまでより、少しだけ空気が違っていた。


でも、不思議と嫌ではなかった。


怖い。


知られたくなかった。


それなのに。


玲奈だけには、いつか全部話してもいいのかもしれない。


そんな気持ちが、ほんの少しだけ生まれていた。

第16話、ここまで読んでくださってありがとうございます!


今回は、玲奈と由奈が二人で話す中で、少しだけ過去に触れるお話でした。


今まで由奈が隠してきた中学時代。

そして、玲奈がなぜ由奈のことを知っていたのか。


まだ分からないことはたくさんありますが、これから少しずつ明らかになっていきます。


由奈が過去と向き合うまで、もう少しゆっくり見守っていただけたら嬉しいです。


次回もよろしくお願いします!

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