日曜日…何着ていこう。
土曜日の夜。
私はベッドの上に服を広げていた。
白いトップス。
薄い色のスカート。
その隣には、昨日買ったばかりのカーディガン。
『……どれにしよう』
明日はみんなで出かける。
ただそれだけなのに、服を選ぶのにこんなに時間がかかっている。
鏡の前で合わせてみる。
悪くない。
でも、少し気合いを入れすぎている気もする。
(別にデートじゃないんだから……)
そう思って、すぐに首を振る。
『何考えてるんだろ、私』
結局、白いトップスとスカートに決めた。
スマホを見ると、グループのメッセージが届いていた。
『明日10時に駅集合ね!』
莉奈からだ。
そのあとに結衣が、
『遅刻しないようにね』
と送っている。
美月は、
『了解』
玲奈は、
『分かった』
透子は、
『10時なら問題ない』
それぞれらしい返信だった。
私は少し考えてから、
『楽しみ』
と送った。
すぐに莉奈から、
『私もー!』
と返ってくる。
それを見て、私はスマホを胸元に置いた。
明日が楽しみ。
そう思えること自体が、少し不思議だった。
***
日曜日。
駅前に着くと、すでに莉奈と結衣が待っていた。
『由奈ー!』
莉奈が手を振る。
『おはよう』
『おはよ! 今日かわいい!』
『えっ』
いきなり言われて、少し戸惑う。
『普通だよ』
『普通じゃないよ!』
結衣も笑いながら、
『似合ってるよ』
と言ってくれた。
『ありがとう……』
そこへ美月がやってくる。
『おはよう』
『おはよー!』
『由奈、その服いいね』
『美月まで……』
今日はなんだか恥ずかしい。
最後に玲奈と透子が来た。
『おはよう』
玲奈がこちらを見る。
ほんの一瞬、目が止まった。
『……似合ってる』
『ありがとう』
玲奈はそれだけ言って、視線を逸らした。
その隣で透子が、
『今日はいつもより少し雰囲気が違うね』
『そうかな?』
『うん』
『変?』
『逆』
透子は少し考えて、
『似合ってる』
と言った。
『……ありがとう』
なんだか今日は、朝から落ち着かない。
『じゃあ行こー!』
莉奈の声で、みんな歩き始めた。
駅を出て、目的のカフェへ向かう。
途中、莉奈が私の隣に来た。
『由奈』
『ん?』
『今日、楽しそう』
『そう?』
『うん』
莉奈は笑った。
『前より笑うようになったよね』
『……そうかも』
『最初の頃、ちょっと緊張してたもんね』
その言葉に、私は少しだけ考えた。
確かにそうだった。
この人たちに嫌われたくない。
変に思われたくない。
一人になりたくない。
そんなことばかり考えていた。
でも今は。
『……今は、あんまり緊張しないかも』
そう言うと、莉奈が嬉しそうに笑った。
『よかった』
カフェに着く。
六人で席に座ると、自然と会話が始まった。
莉奈が注文に迷い、結衣がメニューを覗き込み、美月が先に決めて、透子が静かにそれを見ている。
玲奈は窓の外を眺めていた。
『玲奈、何見てるの?』
私が聞くと、
『……なんでもない』
そう言って、こちらを向いた。
『由奈は?』
『え?』
『何頼むの』
『あ、これ』
メニューを指差す。
『じゃあ私もそれにしようかな』
『同じのでいいの?』
『うん』
そんな小さなやり取りが、なぜか楽しかった。
その後、カフェを出て買い物をしたり、ゲームセンターに寄ったりしているうちに、時間はあっという間に過ぎていった。
夕方。
駅へ戻る途中。
莉奈が、
『今日は楽しかったー!』
と伸びをする。
『また行こうね』
結衣が言う。
『うん』
みんなが答える。
私はその輪の中で笑っていた。
そのとき、玲奈が少し後ろから私の隣に来た。
『由奈』
『うん?』
『……今日、楽しかった?』
『うん。すごく』
『そっか』
玲奈は少しだけ笑った。
それから、
『じゃあ、今度は二人で――』
そこまで言ったところで、前から莉奈の声が飛んできた。
『二人ともー! 早くー!』
玲奈は言葉を止める。
『……うん。行こう』
二人で前を歩くみんなのところへ戻る。
私は歩きながら、玲奈が言いかけた言葉を考えていた。
今度は二人で。
その続きは、何だったんだろう。
でも、不思議と焦らなかった。
いつか聞ける。
そんな気がしていた。
そして今は――。
六人で歩くこの帰り道が、ただ楽しかった。




