↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この青春に、名前をつけるなら、なんて付ければいいのー!  作者: 汐音 月風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/22

まだ友達じゃない…

木曜日。


朝の教室に入ると、いつものように莉奈が手を振ってきた。


『由奈、おはよー!』


『おはよう』


席に鞄を置くと、後ろから声がする。


『おはよう、小野寺さん』


振り返ると、透子が眼鏡を少し上げながらこちらを見ていた。


『おはよう、透子』


昨日までなら「高橋さん」と呼んでいた。


でも、昨日帰る前に透子から、


『みんな名前で呼んでるし、私も透子でいいよ』


と言われた。


だから、今日は少しだけ勇気を出して呼んでみた。


『……透子』


『うん』


透子は小さく頷いた。


それだけなのに、昨日より少し距離が近くなった気がした。


『ねえ、私も由奈って呼んでいい?』


『え?』


『ダメ?』


『ううん。いいよ』


『じゃあ、由奈』


『……なんか変な感じ』


『そのうち慣れるよ』


透子が淡々と言う。


その様子がおかしくて、私は笑った。


『何笑ってるの?』


『いや、透子って意外と面白いなって』


『そう?』


『うん』


『じゃあ覚えておく』


そんな話をしていると、莉奈が割り込んできた。


『なになに? もう二人で仲良くなってる!』


『普通に話してただけだよ』


『私も混ぜてー!』


『最初からいるじゃん』


美月が呆れたように言う。


そのやり取りに、透子も少し笑った。


昼休み。


いつものように机をくっつける。


昨日までは五人だった場所に、今日は透子がいる。


六人分のお弁当が並ぶと、少しだけ机が狭かった。


『狭いね』


結衣が笑う。


『でも六人っていいね!』


莉奈は嬉しそうだった。


『そうかな』


透子が周りを見る。


『なんか……人数が多いと、話についていけなくなりそう』


『大丈夫だよ!』


莉奈が胸を張る。


『私が全部話すから!』


『それが一番大変なんじゃない?』


美月が言う。


『ひどい!』


みんなが笑う。


透子も笑った。


昨日より自然だった。


少しずつだけど、透子がこの場所に馴染んでいく。


そんな感じがした。


昼食を食べ終わったあと、莉奈が突然言った。


『そうだ! 今度の日曜日、みんなで遊ばない?』


『また?』


美月が驚く。


『だって楽しかったじゃん』


『私はいいよ』


結衣が答える。


『私も』


玲奈も頷いた。


透子は少し考えてから、


『……私も大丈夫』


と言った。


『由奈は?』


『私も行く』


『決まり!』


莉奈が嬉しそうに笑う。


その瞬間、私はふと玲奈を見た。


玲奈もこちらを見ていた。


目が合う。


でも、玲奈はすぐに視線を逸らした。


昨日までなら気にならなかったかもしれない。


でも今は、少しだけ気になる。


(……まだ、あの話の続き聞いてないんだよね)


観覧車の中で玲奈が言いかけたこと。


『実はさ、私、由奈のこと――』


その先。


いつ話してくれるのだろう。


そんなことを考えていると、透子がこちらを見ていた。


『由奈』


『ん?』


『どうしたの?』


『え?』


『さっきから玲奈のほう見てたから』


『……!』


思わず言葉が止まる。


『な、なんでもないよ』


『そう?』


透子はそれ以上聞かなかった。


ただ、少しだけ不思議そうな顔をしていた。


放課後。


今日はみんなで駅まで歩くことになった。


莉奈と結衣が前を歩き、美月と透子がその後ろ。


私は玲奈と並んで歩いていた。


しばらく、二人とも何も言わなかった。


駅が近づいたところで、玲奈が口を開く。


『……由奈』


『うん?』


『日曜日さ』


『うん』


『また、少しだけ二人で話してもいい?』


昨日と同じ言葉。


私は少しだけ迷ってから、


『……うん』


と答えた。


玲奈は小さく笑った。


『ありがとう』


前を歩いていた莉奈が振り返る。


『二人ともー! 置いてくよー!』


『今行く!』


小走りで追いかける。


その途中、私は後ろを振り返った。


透子がこちらを見ていた。


目が合う。


すると透子は、ほんの少しだけ笑った。


まだ、友達になったばかり。


いや。


もしかしたら、まだ「友達」と呼ぶには早いのかもしれない。


それでも。


一緒に笑ったり、名前を呼んだり、同じ帰り道を歩いたり。


そういう小さなことが積み重なっていけば、いつか自然にそう呼べる日が来るのかもしれない。


六人になった帰り道は、昨日までより少しだけ賑やかだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。