第六話 狩る側
五匹か・・・ちょうどいいな。
俺は物陰でじっと息を潜める。
気付かれてはいない。
ゴブリンたちが俺の横を通り過ぎる。
先頭。
二匹目。
三匹目。
最後の1匹まで通り過ぎた、その瞬間。
四本の触手を一斉に伸ばした。
ドスッ!
槍が1匹の胸を貫く。
棍棒が二匹目の頭を叩き潰す。
盾で三匹目を壁へ押し付け、短剣で喉を切り裂いた。
残る二匹が驚いて武器を構える。
だが、もう遅い。
1匹を触手で捕らえて投げ飛ばし、もう1匹へぶつける。
倒れたところへ槍を突き立てた。
奇襲を受けたゴブリンたちは、まともに抵抗することもできずに全滅した。
残されたのは魔石、短剣、薬草。
戦利品を回収する。
死体もすべて箱の中へ。
血の跡は、土と瓦礫をかぶせて隠した。
片付けが終わると、俺は同じ場所で再び待ち伏せを始めた。
一時間ほど経った頃、今度は巣穴へ戻る五匹のゴブリンが現れた。
先ほどと同じように奇襲を仕掛ける。
手こずることなく全滅。
また待つ。
襲う。
片付ける。
また待つ。
どれだけ待っても苦にはならない。
常に集中しているわけではないが、近くに何かが来れば自然に分かる。
「まあ、ミミック本来の習性は待ち伏せだからな。」
こういう戦い方が、一番向いているのだろう。
その後も同じ作戦を続けた。
三十匹ほど倒した頃だった。
「……来ない。」
ぱたりとゴブリンの姿が消えた。
長い時間待っても、1匹も通らない。
「さすがに警戒されたか。」
ゴブリンの知能は高くないと思っていた。
だが、仲間が次々と帰ってこなければ、異変には気付くらしい。
しかも、お目当てのゴブリンメイジはまだ倒せていない。
多少は数を減らした。
ここからは自分で巣穴へ入るしかない。
「仕方ない。こっちから――」
「ギャアァァッ!」
甲高い叫び声が響いた。
「っ!?」
弓を持ったゴブリンが、岩陰に隠れていた俺を指差している。
次の瞬間、何本もの矢が飛んできた。
俺は触手を壁へ伸ばし、身体を一気に持ち上げる。
矢が足元を通過した。
そのまま岩陰から飛び出す。
目の前の光景を見て、動きが止まりかけた。
「なんだと……。」
通路の奥から、次々とゴブリンが現れる。
剣を持つ者。
弓を持つ者。
盾を構える者。
杖を持ったゴブリンメイジ。
さらにその後ろには、一回りどころか二回りも大きな個体がいる。
ホブゴブリン。
「多すぎるだろ!」
俺は反対側の通路へ逃げようとした。
だが、そちらからも大量のゴブリンが押し寄せてくる。
「挟み撃ち……?」
待ち伏せしていたつもりが、逆に待ち伏せされていた。
最初に俺を見つけた弓持ちのゴブリンは、今もこちらを指差して叫び続けている。
他のゴブリンたちは、その指示に合わせて動いているように見えた。
「そうか。」
「あいつ、索敵系のスキルを持ってるのか。」
こちらが何匹倒したのか。
どこに隠れているのか。
連中はとっくに気付いていた。
俺を油断させ、逃げ道を塞いでから一斉に姿を現したのだ。
圧倒的に不利な状況。
普通なら逃げる。
だが、逃げ道はない。
なら、戦うしかない。
「やってやる。」
四本の触手に武器を構える。
「魔法も。」
「索敵スキルも。」
「全部、喰らってやる!」




