第四話 エルフの母娘、命の期限
【エレナ視点】
「ルシアー、ただいまー♪」
透き通るような白銀の髪に、森の深淵を思わせるエメラルドの瞳。
エルフ特有の長く鋭い耳が、不安にわずかに揺れている。
人間の街ではめったにお目にかかれないほどの美貌を持つ女性――彼女がルシアの母親、エレナだった。
「あっ、ママ! お帰りなさい!」
「あー、そのまま寝てていいのよ。今日も帰りが遅くなっちゃって、ごめんね……」
「ううん。ママが帰ってきてくれて嬉しい!」
ベッドに横たわる少女、ルシア。
母親から受け継いだ美しい白銀の髪は少しパサついており、病魔の深刻さを物語っていた。
頬は小さくこけているが、ふと覗く耳は純血のエルフより少し短く、先がちょこんと尖っている。
その小さなハーフエルフの少女は、エレナを見ると、細い身を削るようにして愛くるしい笑顔を咲かせた。
「ご飯、何食べようか? ルシアの大好きなオムライスはどう?」
「うーん……今日は卵のお粥が食べたいな」
「そんなのでいいの? もしかして、身体がしんどいの?」
「ちゃんと今日の魔石は使ったの?」
「使ったよ。心配しないで、ママ。卵のお粥が食べたいだけだから」
ルシアは満面の笑みで答える。
だが、その額には汗が滲み、声にも少し苦しそうな様子が混じっていた。
私はベッドに横になるルシアを、そっと抱きしめる。
「どうしたの? お母さん」
「抱きしめたくなっただけよ」
「そうだ。明日は冷たい氷菓子を買って帰るね」
「本当!? ルシア、氷菓子大好き!」
「ルシア……愛してるわ」
「私も愛してるよ。エレナお母さん」
日に日に弱っていくルシア。
――必ず私が助ける。
この子のためなら、私は何だってできる。




