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ミミック・ワールド ~宝箱の魔物は能力を喰らい、世界を喰らう~  作者: シンパチ
第一章 ダンジョンの王
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第二十三話 人か、魔物か


「え、え、えーーーっ!?」


この世界にもニンゲンがいたんだ!!


やった!


やったぞ!!


俺は一人じゃなかった!!


……あ、でもどうしよう。


今の俺は見た目がミミックだし……。


まずは、こちらに敵意がないことを伝えないと。


一人のニンゲンが近づいてくる。


(こちらに敵意はありませんよー。)


(……あ、俺、ニンゲンの言葉分からないわ。)


男は俺のすぐ横まで来ると、宝箱の蓋へ手を掛けた。


ああ、俺のことを本物の宝箱だと思ってるんだな。


違うんだよ。


本当は魔物なんだ。


どうすれば、自分が敵じゃないと分かってもらえるんだろう。


……でも、待てよ。


なんで俺はじっとしてるんだ?


動けば宝箱じゃないって、すぐ分かるじゃないか。


これじゃ、まるでミミックが餌を待ってるみたいじゃないか。


男が宝箱を開け、中を覗き込む。


凄まじい形相のニンゲンに「俺は安全だ」と伝えようとして――


気が付くと、俺はその身体を喰っていた。


---


スキル


《人言語》


《盾戦闘》


《挑発》


を取得しました。


---


「あれ……?」


「なんで……?」


「全員、逃げろーーーっ!!」


他のニンゲンが叫ぶ。


やってしまった……。


みんなを怖がらせてしまったみたいだ。


待ってくれ!


そんなに逃げないで!


俺は敵じゃない!


仲良くなりたいんだ!


なんとか誤解を解かなくては。


慌ててニンゲンたちを追い掛ける。


先頭を走る戦士らしき男へ追いつく。


「なんなんだ!てめぇ!」


長剣が振り下ろされる。


触手で受け止める。


そして――


パクリ。


「あーあ。」


「抵抗するから……。」


---


スキル


《剣戦闘》


《闘気》


《体術》


を取得しました。



「死ね!化け物!!」


すぐ横からもう一人のニンゲンの声が聞こえた


魔術師の男の両手から、2つの巨大が火球が放たれる。


「直撃したか・・・、ざまあ見やがれ!」


《魔法耐性:大》


「む、無傷だと・・・・」


パクリ。


---


スキル


《火魔法:上級》


を取得しました。



もう一人のニンゲンへ近づく。


完全に戦意を失っているようだ。


あー良かった。これなら落ち着いて話し合いが――


その瞬間。


【喰らいたい。】


【殺したい。】


【凌辱したい。】


【八つ裂きにしたい。】


【泣き叫ぶ声が聞きたい。】


【ニンゲンを殺したい。】


気が付くと、目の前のニンゲンも喰らっていた。


---


スキル


《結界魔法》


《神聖魔法》


を取得しました。


---


「あはははは……。」


「ニンゲンを喰らうのって、こんなに気持ちいいのかぁーー!!」


あと一人。


ニンゲンがいたな。


近づく。


……動かない。


いや、動けないのか。


背中に大きな傷がある。


触手でそっと身体を持ち上げる。


「……っ。」


痛むのか、小さく苦悶の声を漏らした。


その声が、あまりにも美しくて――


もっと聞きたくなった。


触手へ少しだけ力を込める。


すると応えるように、美しい悲鳴を聞かせてくれた。


このニンゲンは、特に美味しそうだ。


喰おうとした、その時。


思い留まる。


身体から、新たな触手を一本伸ばした。


赤黒く、粘液でどろどろと濡れた触手。


このニンゲンは……


雌なのだろうか?


『オッ……ン、ナァ……』


聞いてみたかった。


だが、まだ上手く言葉にならない。


その時、触手へ温かい液体が掛かった。


このニンゲンが失禁したようだ。


ああ……。


この美しいニンゲンを、もっと壊したい。


どろどろの触手を雌の身体へ這わせる。


また、美しい声を聞かせてくれた。


「ごめん……ごめんね、ルシア……。」


「お母さん……あなたを助けてあげられなかった……。」


あ……あれ?


えっ……?


「う、嘘……。」


「嘘だろ……。」


「俺、いったい何をやってるんだよ……!!」


我に返る。


だが、目の前の雌を喰らいたい。


凌辱したい。


その欲望が、心の奥底から溢れ続ける。


食事や睡眠と同じように。


生きるための、本能そのもののように。


ニンゲンを壊せ。


そう訴え続けてくる。


「ふざけんなよ!!」


「俺は俺だ!!」


「誰にも縛られねぇ!!」


「こんなふざけた欲求に、飲み込まれてたまるかぁぁぁ!!」


《底力》


《闘争心》


《状態異常耐性:中》


「う゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


自由になる触手で、自らの触手を引きちぎる。


一本。


また一本。


全ての触手を引きちぎり、そのまま地面へ倒れ込んだ。


心の奥底にある欲望が消えたわけじゃない。


それでも、何とか正気だけは取り戻せた。


「4人……。」


「俺が……殺してしまった……。」


「ぐっ……。」


「ごふっ……。」


目の前の女が血を吐く。


絶望してる場合か!!


せめて、この人だけでも助けないと!!


《ヒール》


《ヒール》


《ヒール》


《ヒール》


《ヒール》


駄目だ。


こんな弱い回復魔法じゃ、全然足りない。


――そうだ。


ヒュドラを倒した時に手に入れたアイテム。


【体力回復薬:特】


「お願いだ……。」


「これを飲んでくれ……。」


「死なないでくれ……。」


女は少しだけ薬を口にした。


ヒュドラから手に入れた最高級の回復薬だけあって、その効果は絶大だった。


呼吸が、少し落ち着いてきた。


だが、まだ予断は許さない。


絶対に死なせない。


この人だけは、何としてでも助ける!!


頭の中がぐるぐると回る。


この人を死なせてはいけない理由は――


この人のためじゃない。


俺自身のためだ。


俺の心が人のままでいられるか。


それとも魔物へ堕ちるのか。


今がその瀬戸際なんだ。


この人が死んだら――


俺は、もう戻れないだろう。


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