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ミミック・ワールド ~宝箱の魔物は能力を喰らい、世界を喰らう~  作者: シンパチ
第一章 ダンジョンの王
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第二十一話 最後に残ったもの

収納したアイテムを全て吐き出しても、ゴーレムは怯まず手を離すことは無かった。


これでも……駄目なのかよ。


ゴーレムは楽しそうに触手を引っ張り、箱を叩き、両手で押し潰そうとしてくる。


頑丈なおもちゃで遊んで、ご満悦らしい。


考えろ!


何でもいい!


まだ試していない攻撃はないのか!?


痛みで思考がまとまらない。


意識まで朦朧としてきた。


負けるのか……。


ヒュドラに再挑戦して、やっと勝てたというのに。


物理も魔法も無効にするようなチート相手に、何もできず終わるのか……!


ふざけるな。


だが、悪食すら効かないあいつに、何なら通用する……?


考えろ。


俺にできることは何だ。


能力吸収……今から増やせない。


スキル……効きそうなものが思いつかない。


アイテム……全部吐き出した。


空っぽだ。


もう中身は空っぽ。


空っぽの……


空間?


………………一つだけ思いついた。


ぶっつけ本番。


敗れかぶれの悪あがき!


それでも、やらないより百倍マシだ!


《底力》


《痛覚耐性》


《闘争心》


《回復強化》


《ヒール》


《攻撃強化》


箱の身体はバキバキに砕けている。


もう本能が死を訴えるほどの状態だ。


だが。


底力のおかげで、まだ動ける!


触手を引っ張るゴーレムへ、こちらからも全力で引き返す!


ブチッ! ブチッ! ブチッ!!


何本もの触手が千切れる。


それでも構わない。


ちょうどいい位置まで持ち上げてくれてるじゃ無いか!


正面にはゴーレムの胸。


解析で判明した、弱点のコアがある辺りだ。


俺なんて全く脅威だと思って無いんだろうな。


「はぁぁぁぁーーーー!!」


箱から限界まで触手を伸ばし、ゴーレムの身体へ巻き付ける。


最後の力比べだ!!


《底力》


《闘争心》


《攻撃強化》


少しずつ。


少しずつ。


ゴーレムの胸へ近づいていく。


ここだ……。


身体は死にかけ。


底力だけで、辛うじて動いている。


大きく口を開く。


歯は、あの硬い身体に砕かれてボロボロだ。


俺に残っている能力……。


空になった収納。


『最後に残ったもの――』


収納の中身ではない。


それは、異常な容量を持つ、この異空間そのものだ。


通常の空間と、体内の異空間の繋がりを強く意識する。


まるで身体の中に、小さな宇宙があるようだった。


この空間を操る!


腹の中から、ゆっくりと広げていく。


危険。


危険。


危険。


本能が、全力で警鐘を鳴らしている。


失敗すれば、この周囲の空間ごと捻じ曲がり、自滅しかねない――。


だが――。


俺の一部だ。


使いこなせないはずがない!


腹の中の異空間を、ゆっくりと口の中まで広げていく。


ギリギリだ。


維持するだけで精一杯。


ゴーレムの胸の前で、大きく口を開く。


そして――


一気に喰らいつく!!


《悪食改!》


スパッッッ!!


まるでゼリーをスプーンですくうように、ゴーレムの胸が滑らかにくり抜かれた。


胸の中央にあったゴーレムコアごと、綺麗に消え去る。


次の瞬間。


まるで糸の切れた操り人形のように、ゴーレムはその場へ崩れ落ちた。


……勝った。


体内の異空間を口まで広げ、空間ごと喰らいつく。


空間そのものを喰らう悪食。


これが成功しなかったら、絶対に勝てなかった。


「ははっ……。」


「何とか、生きてる。」


「俺の勝ちだ……ゴーレム。」




[レベルが上がりました]

[レベルが上が・・・・・・・・

・レベルアップ:Lv.60 ➔ Lv.62

・獲得スキル:『物理耐性:大』『魔法耐性:大』『状態異常耐性:大』『自動回復:大』

・成長スキル:『身体能力向上:小』→ 『身体能力向上:大』

『底力:大』→ 『底力:特大』『悪食』→ 『悪食改』

・獲得アイテム:『精霊石ゴーレムコア』『精霊石 ×100』『精霊王の指輪』『精霊王の杖』


悪食改のスキル詳細を確認する


悪食改

・攻撃力100倍

・確定クリティカル

・防御力無視

・特殊能力無視


特殊能力無視...。


ほぼゼロ距離でしか使用できないが難点だが、それでも破格すぎる性能だな......。


はは、無様にでも足掻けばなんとかなるもんだ。


------


精霊王の杖


・魔法威力4倍

・魔力消費2倍

・精霊親和性向上


------


精霊王の指輪


・魔法耐性:中

・状態異常耐性:中

・精霊親和性向上


苦労して倒しただけあって、獲得アイテムも破格の性能だな。


------------------


《ヒール》


《回復強化》


回復をしながら周囲を見渡す。


下へ続く扉は見当たらない。


ふと視線を動かすと、壁の隙間から部屋のような空間が見えた。


近づいて確認すると、それは間違いなく部屋だった。


「なんだ……ここは。」


長い年月、誰にも使われていなかったのだろう。


中には巨大な鍋のようなもの。


干からびた植物。


割れたガラス容器。


壁一面には本棚が並び、無数の本が収められている。


相当古そうだが状態は悪く無い、十分読めそうだ。


……だが、俺は文字が読めない。


この部屋はベットやテーブルまである。


つまり、こんなダンジョンの最奥に、誰が住んでいたのか・・・


さらに奥の部屋へ進む。


そこには複数のゴーレムが整然と並んでいた。


ここでゴーレムを作っていたのだろうか。


錬金術師の工房といったところか?


興味はある。


だが、今の俺には見てもよく分からない。


一度戻ろうとした。


……いや。


やっぱり、このままにするのは勿体ない。


「よし、持っていこう。」


俺は大きく口を開き、部屋にある物を片っ端から収納していく。


しかし……。


最近ゴーレムを狩り続けたせいで、アイテムが増えすぎた。


使いたい物が、すぐ取り出せない。


整理したいが……。


この量をどうしたもんか。


「そうだ!」


《並列思考》


頭の中に、もう一人の自分を作るイメージをする。


よし。


一人はアイテム整理と部屋の片付けに専念させよう。


これなら、整理しながらでも自由に動けそうだ。


探索を再開する。


部屋の隅々まで調べたが、やはり他に扉は見つからなかった。


ここが、このダンジョンの最下層だ。


「うーん。」


「せっかくダンジョンを制覇したのに、殺風景だなぁ。」


よし。


俺は先ほどの部屋で見つけた、ゴーレムでも座れそうな巨大な椅子を取り出し、部屋の中央へ置いた。


そして、その椅子へ腰掛ける。


ミミックとして生まれてから、ここまでの戦いを思い返す。


感慨深いものがあった。


このダンジョンで生まれ――


このダンジョンの全てを喰らい――


俺は、ここまで来た。


「俺が、このダンジョンの新たな王だ!!」


王となった余韻に浸っていると――


ギギギ……。


ボス部屋の入口がゆっくりと開いた。


「え……?」


そこに立っていたのは――


この世界で初めて目にする、


ニンゲンだった。


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