# 第八話 ## 「魔王会議と勇者会議は、だいたい地獄」
# 第八話
## 「魔王会議と勇者会議は、だいたい地獄」
小屋の中。
空気が死んでいた。
魔王軍幹部ゼルグ。
勇者直属騎士リシア。
両陣営の胃痛担当が、
同じ空間にいる。
そして中央には。
正座させられた、
魔王レオンと勇者アレン。
「……」
「……」
ひまりだけがパンを食べていた。
「この空気で食べられるのすごいな」
レオンが小声で言う。
「昨日からまともに食べてないし」
ひまりはもぐもぐしながら返した。
その時。
ゼルグが口を開く。
「魔王様」
「はい」
「なぜ勇者と一緒に朝食を?」
「流れで……」
「流れで勇者と朝食?」
「はい……」
ゼルグ、頭を抱える。
一方。
リシアもアレンへ詰め寄る。
「勇者様」
「はい……」
「なぜ魔王と同じ空間でくつろいでいるのですか?」
「なんというか……」
「しかも料理を振る舞ったと」
アレンが目を逸らす。
「……はい」
「家庭的すぎます!!」
アレン、怒られる。
ひまりは笑いを堪えていた。
その時。
ミーナが小さく言った。
「……でも、仲良しなのは良いことじゃないの?」
全員止まる。
ミーナは不安そうに続ける。
「だって……戦うより、笑ってるほうがいい……」
静かになる。
ゼルグも、
リシアも。
何も言えなかった。
その時だった。
ドォォォン!!
遠くで爆発音。
全員が顔を上げる。
外。
黒煙が空へ昇っていた。
ゼルグが顔をしかめる。
「……国境付近か」
リシアも険しい顔になる。
「また衝突が……」
空気が変わった。
現実。
これは遊びじゃない。
人間と魔族は、
今も争っている。
レオンは立ち上がる。
その表情は、
いつもの優しい青年じゃなかった。
魔王の顔。
「被害は」
ゼルグが即答する。
「まだ不明です」
アレンも剣を取る。
勇者の顔になる。
「止めに行きます」
ひまりは、
その二人を見ていた。
さっきまで笑ってたのに。
今はもう、
背負うものを抱えた顔になっている。
「……待って」
ひまりが言った。
二人が止まる。
「また戦うの?」
レオンは少しだけ困った顔をした。
「止めに行くんだ」
「でも、傷つくんでしょ」
答えられない。
アレンが静かに言う。
「それでも、行かなきゃいけない」
ひまりは唇を噛んだ。
納得できない。
でも。
二人とも、
本当に嫌そうな顔をしていた。
戦いたいわけじゃない。
それでも、
行かなきゃいけない。
その時。
ミーナがレオンの服を掴んだ。
「……死なない?」
小さな声。
レオンは一瞬だけ目を見開き、
そして優しく笑った。
「死なないよ」
「ほんと?」
「約束する」
アレンもしゃがみ込む。
「僕も必ず戻ります」
ミーナは少しだけ安心した顔をした。
ひまりは思う。
この二人は、
強い。
でも。
たぶん、
誰よりも無理をしてる。
その時だった。
グゥゥゥゥ……
沈黙。
音の犯人。
レオンだった。
「…………」
「…………」
魔王、
顔真っ赤。
ひまりが吹き出す。
「緊張感!!」
アレンも笑ってしまう。
ゼルグは頭を抱え、
リシアは天を仰いだ。
レオンは開き直る。
「朝ごはん少なかったんだよ!!」
その瞬間。
さっきまで重かった空気が、
少しだけ軽くなった。
そして誰も気づいていなかった。
こんな風に、
人間と魔族が、
同じ場所で笑っていること自体。
本当は、
奇跡みたいなことだった。




