# 第七話 ## 「はじめての朝ごはん」
# 第七話
## 「はじめての朝ごはん」
朝。
小屋の隙間から、
柔らかな光が差し込んでいた。
鳥の声。
静かな風。
そして。
「……せまい」
ひまりが目を覚ました。
隣を見る。
レオンが床で寝ていた。
しかも、
毛布を半分ひまりに掛けている。
「……」
ひまりは少し目を丸くした。
さらに反対側。
アレンは壁にもたれたまま眠っていた。
剣を抱えたまま。
その顔は、
驚くほど穏やかだった。
昨日まで、
世界を敵に回しかけていた三人。
なのに今は、
小さな小屋で寝ている。
なんだか変だった。
その時。
ぐぅぅぅ……
また腹の音。
「……お腹すいた」
ひまりが呟く。
すると。
「おはようございます」
アレンが起きた。
寝起きなのに爽やかだった。
ちょっと腹立つ。
「おはよ」
「朝食、作りますね」
「え?」
アレンは立ち上がり、
持っていた袋を見せた。
昨日、
ミーナが持ってきたパン。
それと、
どこかで調達してきた野菜。
「料理できるの?」
ひまりが聞く。
アレンは少し照れた。
「まあ、一応」
数十分後。
小屋の中には、
優しい匂いが広がっていた。
簡単なスープ。
焼いたパン。
野菜炒め。
質素だけど、
温かい朝食。
ひまりは目を輝かせた。
「うわ、美味しそう!」
「大したものじゃないですよ」
その時。
レオンが起きた。
寝ぼけながら匂いにつられる。
「……いい匂い」
「おはようございます」
「……朝?」
「もう朝です」
レオンはぼんやり座る。
髪はボサボサ。
目は半分閉じてる。
魔王感ゼロだった。
ひまりは思わず笑った。
「寝起き弱っ」
「……朝嫌い」
「子供か」
レオンは机の上を見る。
「……え、なにこれ」
「朝食です」
アレンが言う。
レオンは驚いた。
「作ったの?」
「はい」
一口食べる。
沈黙。
そして。
「……うま」
アレンは少し嬉しそうに笑った。
「よかった」
その空気が、
なんだか温かかった。
戦争とか。
正義とか悪とか。
そういうものを、
少しだけ忘れられる時間。
ひまりはパンを齧りながら言う。
「こういうのでいいじゃん」
「ん?」
「なんで戦争してんのかわかんなくなる」
レオンとアレンは黙る。
ひまりは続けた。
「だって、普通にご飯食べてるだけなのに」
その言葉が、
妙に胸に刺さった。
レオンは窓の外を見る。
遠くに見える魔王城。
自分が背負うもの。
守らなきゃいけないもの。
アレンも俯いていた。
勇者としての責任。
期待。
使命。
逃げられない現実。
静かな空気。
だがその時。
バァン!!
小屋の扉が吹き飛んだ。
「きゃあああ!?」
ひまり絶叫。
煙の中から、
黒い鎧の男が現れる。
レオンが固まった。
「……ゼルグ」
魔王軍幹部、
ゼルグ。
側近であり、
苦労人。
そして現在、
めちゃくちゃ怒っていた。
「魔王様」
低い声。
怖い。
「城を抜け出し、勇者と焼き鳥を食べ、現在行方不明」
一歩近づく。
「説明を」
レオン、目を逸らす。
「……ごめん」
「あと大量の書類が溜まっています」
「帰りたくない」
「帰ってください」
その後ろから、
さらに別の声。
「勇者様ぁぁぁ!!」
今度は人間側。
女性騎士リシアだった。
「ご無事でよかった……!」
涙目で駆け寄ってくる。
だが。
彼女は止まった。
小屋の中を見る。
魔王。
勇者。
女子高生。
一緒に朝ごはん。
沈黙。
「……何してるんですか?」
アレンが遠い目をした。
「僕も知りたいです」




