表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

# 第六話 ## 「三人、隠れ家生活を始める」

# 第六話


## 「三人、隠れ家生活を始める」


「――で」


ひまりが腕を組む。


「これからどうするの?」


沈黙。


レオンとアレンは顔を見合わせた。


そして。


同時に目を逸らした。


「……考えてなかった」


「僕もです」


ひまり、呆れる。


「計画性ゼロか!!」


夜明け前。


三人は城下町外れの古い小屋に隠れていた。


元々は倉庫だったらしい。


ボロい。

寒い。

天井ちょっと穴空いてる。


でも今は、

ここしか安全な場所がなかった。


「魔王城帰れないの?」


ひまりが聞く。


レオンは遠い目をした。


「今帰ったら絶対説教大会」


「勇者は?」


「僕も城に戻ったら会議地獄です」


「大人って大変だね……」


二人ともまだ若いのに、

目だけ社畜だった。


その時。


グゥゥゥゥ……


腹の音。


ひまりだった。


「…………」


「…………」


顔真っ赤。


レオンは笑う。


「腹減ったな」


「笑うな!」


アレンも苦笑した。


「何か食べ物探してきます」


「え、お金あるの?」


アレンは胸元を探る。


沈黙。


「……ない」


勇者、無一文。


レオンも探る。


「クレープ屋のポイントカードならある」


「いらんわ!!」


ひまりが叫ぶ。


その瞬間だった。


コンコン。


三人、凍る。


小屋の扉。


誰かいる。


アレンが剣に手をかける。


レオンも魔力を集中。


静寂。


再び。


コンコン。


「……誰だ」


レオンが低い声で聞く。


すると。


「わ、私です……」


女の子の声。


アレンがゆっくり扉を開ける。


そこにいたのは――


小さな獣人の少女だった。


猫耳。


ボロボロの服。


両手には、

パンの入った袋。


「えっと……」


少女は不安そうに言った。


「魔王様……ですよね?」


レオンが固まる。


「……バレてる」


少女は慌てて頭を下げた。


「ご、ごめんなさい!! でも私、見ちゃって……!」


ひまりが首を傾げる。


「誰?」


少女はぺこりと頭を下げた。


「ミーナです……!」


十歳くらいだろうか。


小さくて、

怯えていて、

でも必死な目をしていた。


ミーナはパン袋を差し出した。


「あ、あの……これ……」


「え?」


「お腹、空いてるかなって……」


レオンは目を瞬かせた。


「……俺に?」


ミーナはこくこく頷く。


「魔王様、前に助けてくれたから……」


アレンが見る。


レオンは困った顔をしていた。


「いや、別に大したことは……」


「私のお母さん、病気だったんです」


ミーナは笑った。


「でも魔王様がお薬くれて、治ったんです!」


ひまりがゆっくりレオンを見る。


「……あんた何してんの?」


「いやなんか困ってたから……」


「魔王?」


「うるさい」


アレンが少し笑う。


「やっぱり優しい人ですね」


「やめろ。照れる」


その時。


ミーナがアレンを見た。


「……あ」


空気が止まる。


アレン、嫌な予感。


ミーナの目が輝く。


「勇者様ぁぁぁ!?」


「しーっ!!」


勇者、全力で止める。


遅かった。


ミーナは大興奮だった。


「ほんもの!? 本物ですか!? すごい!!」


アレンは困り果てる。


「お、大きい声は……」


「うわぁぁぁ!! 勇者様だぁ!!」


ひまりは爆笑していた。


「人気者じゃん」


「笑い事じゃありません……」


だが。


その騒がしい空気の中。


レオンは、

少しだけ驚いていた。


こんな風に。


魔王と勇者と人間の少女が、

同じ場所で笑っている。


そんな光景。


今まで、

一度もなかったから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ