# 第六話 ## 「三人、隠れ家生活を始める」
# 第六話
## 「三人、隠れ家生活を始める」
「――で」
ひまりが腕を組む。
「これからどうするの?」
沈黙。
レオンとアレンは顔を見合わせた。
そして。
同時に目を逸らした。
「……考えてなかった」
「僕もです」
ひまり、呆れる。
「計画性ゼロか!!」
夜明け前。
三人は城下町外れの古い小屋に隠れていた。
元々は倉庫だったらしい。
ボロい。
寒い。
天井ちょっと穴空いてる。
でも今は、
ここしか安全な場所がなかった。
「魔王城帰れないの?」
ひまりが聞く。
レオンは遠い目をした。
「今帰ったら絶対説教大会」
「勇者は?」
「僕も城に戻ったら会議地獄です」
「大人って大変だね……」
二人ともまだ若いのに、
目だけ社畜だった。
その時。
グゥゥゥゥ……
腹の音。
ひまりだった。
「…………」
「…………」
顔真っ赤。
レオンは笑う。
「腹減ったな」
「笑うな!」
アレンも苦笑した。
「何か食べ物探してきます」
「え、お金あるの?」
アレンは胸元を探る。
沈黙。
「……ない」
勇者、無一文。
レオンも探る。
「クレープ屋のポイントカードならある」
「いらんわ!!」
ひまりが叫ぶ。
その瞬間だった。
コンコン。
三人、凍る。
小屋の扉。
誰かいる。
アレンが剣に手をかける。
レオンも魔力を集中。
静寂。
再び。
コンコン。
「……誰だ」
レオンが低い声で聞く。
すると。
「わ、私です……」
女の子の声。
アレンがゆっくり扉を開ける。
そこにいたのは――
小さな獣人の少女だった。
猫耳。
ボロボロの服。
両手には、
パンの入った袋。
「えっと……」
少女は不安そうに言った。
「魔王様……ですよね?」
レオンが固まる。
「……バレてる」
少女は慌てて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい!! でも私、見ちゃって……!」
ひまりが首を傾げる。
「誰?」
少女はぺこりと頭を下げた。
「ミーナです……!」
十歳くらいだろうか。
小さくて、
怯えていて、
でも必死な目をしていた。
ミーナはパン袋を差し出した。
「あ、あの……これ……」
「え?」
「お腹、空いてるかなって……」
レオンは目を瞬かせた。
「……俺に?」
ミーナはこくこく頷く。
「魔王様、前に助けてくれたから……」
アレンが見る。
レオンは困った顔をしていた。
「いや、別に大したことは……」
「私のお母さん、病気だったんです」
ミーナは笑った。
「でも魔王様がお薬くれて、治ったんです!」
ひまりがゆっくりレオンを見る。
「……あんた何してんの?」
「いやなんか困ってたから……」
「魔王?」
「うるさい」
アレンが少し笑う。
「やっぱり優しい人ですね」
「やめろ。照れる」
その時。
ミーナがアレンを見た。
「……あ」
空気が止まる。
アレン、嫌な予感。
ミーナの目が輝く。
「勇者様ぁぁぁ!?」
「しーっ!!」
勇者、全力で止める。
遅かった。
ミーナは大興奮だった。
「ほんもの!? 本物ですか!? すごい!!」
アレンは困り果てる。
「お、大きい声は……」
「うわぁぁぁ!! 勇者様だぁ!!」
ひまりは爆笑していた。
「人気者じゃん」
「笑い事じゃありません……」
だが。
その騒がしい空気の中。
レオンは、
少しだけ驚いていた。
こんな風に。
魔王と勇者と人間の少女が、
同じ場所で笑っている。
そんな光景。
今まで、
一度もなかったから。




