# 第四話 ## 「魔王、勇者、女子高生。とりあえず逃げる」
# 第四話
## 「魔王、勇者、女子高生。とりあえず逃げる」
「勇者様!!」
騎士団長が怒鳴る。
「なぜ魔王と会話を!?」
「しかも笑っていましたよね!?」
「世界終わりますよ!?」
「終わらないよ!?」
アレンが必死に否定する。
一方、
魔族側の偵察兵たちも、
いつの間にか集まっていた。
「魔王様!!」
「なぜ人間と焼き鳥を!?」
「しかも塩味!?」
「タレ派ならまだ理解できたのに!!」
「そこなの!?」
レオンが叫ぶ。
現場はもう地獄だった。
ひまりはその光景を見ながら、
ぽつりと言った。
「……あほだ、この世界」
レオンとアレン、
同時に頷く。
「否定できない」
「できませんね……」
その時だった。
ビキッ。
空気が震えた。
騎士たちが剣を抜く。
魔族たちも魔力を構える。
最悪だった。
ほんの少しで、
戦争が始まる。
アレンは青ざめた。
(まずい……!)
レオンも理解していた。
ここで誰かが感情的になれば、
大量の死者が出る。
また。
また、
人が死ぬ。
その瞬間。
ひまりが前に出た。
「はいストーップ!!」
全員止まる。
でかい声だった。
「……なに?」
騎士も魔族も、
思わず聞き返してしまう。
ひまりは怒っていた。
「なんでそんなすぐ戦おうとするの!?」
「いやしかし――」
「しかしじゃない!!」
騎士が押される。
「ていうか、あんたら!」
ひまりはレオンとアレンを指差した。
「魔王と勇者なんでしょ!?」
「まあ……」
「一応……」
「だったらちゃんとしなさいよ!!」
二人、怒られる。
「周りが勝手に暴走してるじゃん!!」
「……すみません」
「ごめんなさい……」
なぜか素直に謝る二人。
周囲はさらに混乱した。
魔王と勇者が、
女子高生に説教されている。
意味がわからない。
ひまりは続けた。
「あと、そこの鎧の人たち!」
騎士たちがビクッとする。
「魔族だから悪い、人間だから正しいって決めつけてるでしょ!?」
誰も反論できない。
「そこの黒い人たちも!」
魔族たちもビクッ。
「人間怖い怖い言ってるけど、ちゃんと話したことあるの!?」
沈黙。
レオンが小さく呟く。
「……ないかも」
「魔王!!」
部下が頭を抱える。
ひまりは大きくため息を吐いた。
「もーーー!!」
そして。
「とりあえず話し合えば!?」
世界が静まった。
その言葉は、
単純だった。
あまりにも単純。
だからこそ、
誰も言えなかった。
アレンは、
ゆっくり目を閉じる。
“話し合う”。
それができたら、
苦労しない。
でも。
もし。
もし、
少しだけでも可能性があるなら。
レオンも同じことを考えていた。
その時。
「――いたぞぉぉぉ!!」
遠くから怒鳴り声。
次の瞬間。
大量の兵士が押し寄せてきた。
人間軍。
魔族軍。
両方。
「あ」
レオンが言う。
「終わった」
アレンも言う。
「終わりましたね」
ひまりだけが状況を理解してなかった。
「え? なに?」
兵士たちは叫ぶ。
「魔王を討てぇぇぇ!!」
「勇者を守れぇぇぇ!!」
「女子高生を確保しろぉぉ!!」
「なんで私も!?」
ひまり絶叫。
レオンは即座に判断した。
「逃げるぞ」
「はい?」
アレンが聞き返す。
「このままだと戦争始まる」
「……ですね」
「お前も来い」
レオンがひまりの手を掴む。
「え、えぇ!?」
その瞬間。
ドォン!!
魔法が飛んだ。
屋台が吹っ飛ぶ。
店主が泣く。
「今日二回目ぇぇぇ!!」
レオンは叫んだ。
「走れ!!」
そして。
魔王。
勇者。
異世界少女。
世界で一番ありえない三人組の逃走劇が始まった。




